落ちこぼれの不適合者
「マルス・レイヴィス、貴様は今日をもって退学とする」
学園長室に呼ばれた俺、マルス・レイヴィスは、目の前にいる学園長の言葉を聞いて思わず耳を疑った。退学、つまり学園を辞めさせる事だと。
「ま、待ってください!退学っていきなりそんなことを言われても!」
「黙れ!貴様のような魔法をまともに使えん不適合者が私の学園にこれ以上在籍する事は許さん!これは決定事項だ!」
「で、ですが…!」
その言葉を聞いて俺は学園長に抗議するも、学園長は聞く耳を持たなかった。それにさっき学園長が言った言葉に俺は口をつぐむ。
この世界には魔法が存在し、そして魔法には五つの基本属性がある。「炎・水・風・土・雷」、これらの属性からさらに派生した属性も存在する。さらにこの世界の人間はこの五つの基本属性の内、ひとつ以上高い適性を持つ。
高い適性の属性は他の属性と比べて習得が早かったり、高い威力のある魔法や汎用性のある魔法を使用することができる。勿論、適性の低い属性も使用することは出来なく無いが、高い適性のある属性よりかは遥かに劣る。
そんな魔法を使用する人間を育成するのが、魔法学校だ。一人一人の適性を見極めて、将来の優秀な魔導師を育てる。俺もその魔法学校に入学をしている。
しかし俺は他の生徒とは違い適性属性が一つも存在しなかった。五つある基本属性のどれもまともに扱えない。下手をすれば自分より年下の子供にも劣る程だった。そんな落ちこぼれの俺に学校が付けた烙印、それが「不適合者」だった。
この烙印を付けられた事により俺は学校で酷いいじめに遭う事になった。生徒はおろか、一部の教師を除いた全員が俺の敵だった。侮蔑、軽蔑、嘲笑など、俺はそれらを全て受けてきた。
「残念だったな。まあ、恨むなら私でなく才能の無い貴様自身を恨むんだな」
落ち込む俺を学園長は見下す態度で俺を見ていた。それでも俺は諦めずに学園長に懇願する。この学園から出てってしまえば、恐らく俺はもう二度とどこの学校に入れないだろう。
「お願いします!もう少しだけ、もう少しだけ在籍させて下さい!必ず結果を出しますから!」
「貴様が何言っても無駄だが…そこまで言うなら一つ条件を出してやろう。その条件を達成すれば、貴様をこの学園に在籍する事を許可する」
「ほ、本当ですか!?それで、その条件とは?」
「至極単純だ。我が学園の首席のケルヴィン・ルルネを魔導決闘で勝利する事。それだけだ」
「…ッ!?」
それは魔法をまともに使えない俺にとって無理難題ものだった。ケルヴィン・ルルネ。俺の通うウィンベルト学園中等部首席で地方貴族の子。性格は傲慢で自己中心。自分は特別な存在だと信じて止まない為、常に他人を見下す態度をしている。それに奴は俺をいじめていた主犯格だ。しかし、それでも貴族の子であり、才能は高い。何しろ、基本属性の内、炎と風の二つを使いこなす天才だ。俺とはまさに雲泥の差だ。
「さあどうする?嫌なら受けなくてもいいぞ?その代わり、貴様は問答無用で退学だがな」
「…分かり…ました。受けます。魔導決闘を」
「そうか、分かった。魔導決闘は一週間後だ。せいぜい楽しい思い出づくりか、無駄な努力でもしておくんだな」
面白いと思ってくださったのなら幸いです。