Don’t suffer from it anymore
「どうしたの? 何故泣いているの?」
母は努めて穏やかな口調で問いかけた。
「私が大事にしていたものを壊してしまったから?」
娘は震えながら小さく頷いた。
「違うの。あなたのせいじゃない」
母はかぶりを振って娘の「罪」を否定した。
「それは、初めから壊れていたの。あなたのせいじゃない。…だからもう、苦しまないで」
母は娘の小さな手を、きつくしないように静かに握りしめた。
「悪いのは私。壊れた時計をずっと持ってた私がいけなかったんだわ」
母は両手で顔を覆った。
「あの人は…あなたのお父さんはもう帰ってこないのに…」