伯爵令嬢とアレクシス①
「そして私の死は某国における時代の分岐点のひとつとなった、と」
二回目の死を迎える少し前から、問題が表面化しなかったというだけで安定している状態にはほど遠く、国の情勢は不安定なものになっていた。そして私の死をきっかけとして問題が一気に表面化し、暴動が激化、ついには諸悪の根源とされた奴隷制度が廃止される。歴史に名を残すのは素晴らしいけれど、こういう残り方は微妙ね。
――――そのとき、ダレルはどうしたのかしら。
記憶のよみがえった私が某国の歴史書に目を通したとき、最初に思ったのはこのことだった。奴隷制度を廃止するため、民衆と共に戦ったのか。それとも妹を守る立場を貫き、民衆を相手に戦ったのか。
『それがあなたの願いなら、この命を賭して叶えましょう。』
次の瞬間、彼の言葉が脳裏へと鮮やかによみがえる。選んだとすれば、おそらく後者でしょうね。先に死んでしまったから残された彼には険しい道を選ばせてしまったわ。でももし生き残っていたのなら妹みたいに長生きしてくれていたらいいなと思う。
そう、彼女は私よりもはるかに長生きをした。形ばかりでも王家は存続しているから、残された系譜には名と共に生没年が記されている。生来の体質が虚弱でも九十歳まで生きれば十分でしょう。皮肉なことに長生きできないとされた妹が長命で、簡単には死なないはずの私が若くして命を落とした。
これじゃあ何のために当然の権利を奪われていたのか、わからないわね。国内だけでなく、私を国を繋ぐ具として国外に嫁がせる選択肢もあった父王にとって、若過ぎる私の死は誤算だっただろう。本来なら妹がその任を代わりに果たすべきなのだが、王家の記述には何も記されてはいない。国内外に虚弱体質が知れ渡ってしまっていたから嫁に出そうとしても引き取り先がなかったのかもしれないわね。
妹は若くして死ぬという呪縛が解けたあと、最終的には離宮に追いやられ、いないものとして扱われたようだ。そんな妹の存在は物語の題材に好まれたようで、美しくも不遇だったゆえに妖精姫とも呼ばれている。
離宮に隔離されたのは可哀想だけれど、従順な人間さえ周囲にいれば満足する妹のことだ。むしろ最後まで皆に愛され幸せだっただろう。
でも、それももう昔の話。歴史書を閉じ、自室の書棚に戻す。他国の歴史書が自室に備えられている理由は三回目の生を受けた家の生業に関係があった。
私はそこそこ歴史のある伯爵家に生まれ、家は国の交易と外交の一角を担っており、独自の販売ルートを持つ商会を経営していた。我が家の場合、女子は他国へ嫁ぐことも想定されるので、他国の言語を学び、成り立ちや歴史を知るという水面下の努力が必須だった。そんな特殊な環境ではあったものの、今回は一回目の時ように身分が低いわけでもなければ、二回目の時のように身分が高過ぎるわけでもない。生き抜くには、なかなか都合のよい立ち位置にいると思われた。思い返せば、一回目はともかく二回目はもっと攻めても良かったのではないかしら。妹に彼を奪われて諦めるのではなく、奪い返せばよかった。少なくともそうしていれば、このやり直し人生を回避できたのかもしれない。
だから今回は目指せ肉食女子。努力して教養と才覚を磨き、彼の愛を勝ち取ろうと考えている。
そう考えた理由は二つあって、一つは若くして死ぬという結末を回避したいから。今までの記憶では、私が彼と決定的な別れを選んだあと、たいして間を置かずに私が死んでいる。つまり彼と別れることが私の死に繋がる可能性があるということだ。死を回避するためには彼との別れを選ばない環境を整えることが大切ということ。
二回目の時は彼を巻き込んだ罪悪感から距離を置いていたけれど、またこうして記憶を引き継ぎながら生まれ変わるなんて、どう考えても異常だ。
つまり私自身も何か予測すらできない事態に巻き込まれている可能性が高い。ならば私にも抗う権利はあるということよね。抗って、若い時にしか味わえない喜びを感じ、せめて寿命まで生きたいと思うのだ。彼と出会うことが既定路線だとすれば、むしろ関わり合いを避けるのではなく、積極的に触れ合って良好な関係を築くように努力すればいい。前回のように、失ってから後悔はしたくないからね。
そしてもう一つの理由。記憶を取り戻した時には、彼とすでに出会っていたから。私は彼にとって有力な婚約者候補だった。十歳の時に私の前へ姿を現しており、今も足繁く通ってきている。
兄とは学友であり、侯爵家の後継者。しかも前世同様に、見目麗しく、頭脳明晰で剣の腕前も素晴らしく誰にでも優しい、と。将来は国と国を繋げるような大きな仕事がしたいのだと夢を語る、将来が楽しみな好青年だ。
そんな彼の生家である侯爵家は国外へ影響力を伸ばす足掛かりを欲していて、伯爵家は国内の販路拡大のための人脈を求めていた。その結果として、両家に婚約話が持ち上がる。家格の釣り合いも悪くはないし、すでに後継者である兄のいる私が嫁入りすればいい。両家の思惑にも適うため、互いの両親も婚約に積極的だった。多分に大人の事情が含まれていたけれど、兄経由で幼い頃から触れ合いがあったおかげで今も兄妹のように仲も良い。
だから間もなく社交界にデビューするという歳には候補の肩書が取れて、彼は私の婚約者になっていた。それからは互いの距離を、ゆっくりと縮めていく。散歩がてら二人で丘の上まで登り、お弁当を広げつつ城下を眺める。曇りのない眼差しで城下を、民の行き交う様子を遠目に眺めるアレクシス様の背中。天も地も、全てを背負うような頼もしい後ろ姿が大好きだった。瞳を閉じ彼の背中に頬を寄せ少しだけ体を預ける。
背から伝わるぬくもりと、規則正しい心音が心地よい。そこにはとても穏やかで、静かな時間が流れていた。
今までで一番障害の少ない状況だわ。少ないというか、ほぼない。
私が成人したら、彼と結婚する。それが定まった道すじだと、そう信じていたのに。
一つ歳上の彼は先に社交界へデビューした。それと同時に彼は本格的に国政へ携わるため常時城に詰めるようになる。デビュー前には、人脈作りのためと各家の子息とも仲良くしていたのだが、成人して更に人脈が広がり、様々な場所に出入りし、いろいろな立場の人々と接するようになった。それがとても良い刺激になったようで、近況を知らせる手紙からも、それが察せられて我が事のように嬉しいと感じたものだ。
それが忙しくなり過ぎたのか、やがて私と会う時間を削るようになる。初めは、我が家へ訪問する回数が少し減ったなという程度だった。一ヶ月の訪問が二ヶ月になり、やがて三ヶ月に一度となり。会いに来ても顔色が悪いからと、途中で帰らせたときもあった。取り繕うように贈り物の回数が増えたのも忙しいからだと自分を納得させていたが、徐々に不安が高まる。
このまま、嫌われてしまったらどうしよう。そうしたら死を回避できない。
だから私の方から会いに行くことにした。もちろん迷惑にならないよう、事前に連絡を入れて調整したうえでだ。城勤めの婚約者がいる貴族の令嬢ならば皆やっていることだしね。
「わざわざ来てもらって、ごめんね」
「私がお会いしたかったのです、アレクシス様。忙しい中、お時間をいただいてありがとうございます」
そして彼の話に耳を傾ける。政治のこと、経済のこと。民の生活から最近流行りのものまで多岐にわたるお話はとても興味深かった。こんなふうに時間を割いていただいて、一時間ばかり、おしゃべりをして帰る。
それだけで、十分満たされた気持ちになるのが不思議だ。自分が彼をどれだけ愛しているのか、思い知らされるわね。そんな充実しながらも少しだけ不安定な日々が一気に不穏なものに変わったのは、それから半年くらい経ったころだった。
「アレクシス様が庶民の経営する食堂に毎日通われているそうですわ。なんでもその店に勤める女性がお目当てなんだとか」
「店主の娘が女神のように美しい容姿をされているそうよ。そんなに美しい女性の前では身分が高いとはいえ、婚約者のお嬢様も霞んでしまいますわ。だから噂にあるような、はしたない嫌がらせをなさった、と」
「噂どおりであれば、婚約者の方は取り立てて美しくも有能でもないのにプライドだけが高く意地が悪いなんて最低だわ。アレクシス様も婚約者がそんなだなんて、おかわいそう。それなら身分は低くとも器量良しの女性に心変わりをされるのも仕方がないとは思わない?」
父から頼まれ、城へ届け物をした帰り道。城に勤める侍女達の会話が耳に飛び込んでくる。私のいる場所からは死角になるところで話をしているらしく、彼女達の容姿は見えないが話の内容はハッキリと私の耳に届いた。
身に覚えのない中傷。そして婚約者の裏切りを示すような行為。最近さらに訪問が減ったのには、そういう理由があったのね。嫉妬して嫌がらせをするなんてあり得ないのに。私だって貴族の娘、家の存続のために妾の存在を拒否するつもりはない。だけどまだ、結婚前だというのに。
思わず唇を噛む。もし婚約を破棄され、距離を置かれたら……私はまた死ぬかもしれない。嫌でも彼女の存在を受け入れるしか生き残る可能性はないのね。それに生きていれば、アレクシス様と再び穏やかな関係を築くことができるかもしれない。将来的にそういう存在になる可能性がある女性なら顔は知っておいたほうがいいわよね。侍女達の会話から店のおおよその場所がわかったので、後日、質素な服に身を包み店を訪れた。
道行く人に食堂の場所を尋ねると、すぐに教えてくれた。繁盛しているだけでなく、娘の美しさが評判になっているらしい。
その店は、商店街の外れにあった。道すがら、久々に味わう商いの活気に目を細める。一度目も今回も、生まれた家は商いに縁がある。もし生き残れたら商売に携わってみたいとアレクシス様に相談してみよう。
「……ここが、その食堂ね」
はやる気持ちを抑え店内に足を運ぶと、そこにはたしかに女神とたとえられるに相応しい美しい女性がいた。飲み物だけを頼み、密かに彼女を観察する。こんな美しい方、社交界でもなかなかお見掛けしないわ。自然体のままでこんなに美しいのだ。化粧をし、着飾った姿はさぞかし麗しいのだろう。カウンターからテーブルへ料理を運んでいた彼女は、入口に視線を向けると、次の瞬間うれしそうに声を弾ませた。
「いらっしゃいませ、アレクシス様! お待ちしてましたわ!」
「ごめん、仕事が立て混んでいて遅くなった」
「大丈夫ですよ、日替わり定食まだ残ってますから!」
「それは助かる」
彼女と会話を交わしながら店内を進むアレクシス様は、私の存在に気づくことなく脇を通りすぎる。こんなに近くにいるのに気づきもしないのは私に対する関心が薄いせい。胸の奥が痛んで、思わず胸に手を添えた。
誘われるままに奥の席に座った彼は、私が見たことのないほどに柔らかな笑みを浮かべ、彼女と楽しそうに会話をし、料理を口に運ぶ。そして時折、軽やかな笑い声を立てる彼の姿に衝撃を受けた。彼の本当の姿は、これなのか。私の前では、どこか取り繕うところがあるのに、そんな様子は見せない。少しずつ視界が曇り、自身が涙を滲ませている事に気がつく。
「あの二人、いつ結婚するのかな?」
「いくら仲が良くても男の方は身なりがいい。身分が高いなら、簡単ではないだろう」
「あの子が言うには、どうも男の方には婚約者がいるらしい」
「ますます難しい状況じゃないか」
「だがな、あの男性も婚約者の女性に束縛されて困っているらしい。想い合う二人を邪魔するなんて無粋だよな。気位が高いだけの貴族のお嬢様なんか付け入る隙もないほどお似合いの二人なのに暇なんだな、その婚約者とやらは!」
見知らぬ男性同士が交わす嘲笑混じりの会話が傷口を更に抉る。嫌がらせなんてしないわよ、そんな暇ないし。そもそも貴族のお嬢様が暇だという認識からして間違いだ。私は妻として家を差配するための勉強とは別に、アレクシス様を支えるための勉強もしている。他国の公用語から、政治、経済、更には文化や特色ある産業まで。国と国を繋ぐため、彼がどんな役職を与えられても支えられるようにと望んで学んだ。
そして私がお茶会に行くときは、家で扱う商品の宣伝も兼ねているから完全に仕事だしね。ぼんやり過ごす日なんて、一ヶ月に一度あるかないか。そんなときすることといえば邸内を散策するか自室でおやつを食べるかぐらいだろう。誓って嫌がらせなどという暇なことはしていない。
とはいえ、貴族の醜聞は不満のはけ口にはうってつけらしい。彼らは噂を面白おかしく脚色し、さらに盛り上がっている。こうして嘘が噂として広まっていくのね。まさか隣に当の婚約者がいるとは思いもしないでしょうし。普通、貴族の令嬢は護衛か侍女を連れて外出するものだから、一人お茶してるなんて思わないだろう。
様々な思いが交錯し、思わず唇を噛む。商家にとって、醜聞は御法度だ。いまさらだが手を回さねばと慌てて席を立ち、カウンターで会計を頼む。店主は奥でアレクシス様と夢中になって話し込む娘の姿を見て眉を顰めた。
「すみませんね、お客さんに足を運ばせて」
「かまわないわ。話が弾んでいるところみたいだし、かわいそうだわ」
「ありがとうございます。一度話し込むとああなってしまって……」
とはいえ、さすがにあの態度は商売に携わる者としてはいただけない。客が席を立ったのに気がつかないなんて、食い逃げされたらどうするのよ。
もちろん私はしないけど。しかも店主は彼女の父親なのに、ずいぶんと彼女に遠慮しているようね。イザベラだったころのお父さんなら客商売舐めてるのかと、人前で怒鳴られるわ。
「相手の男性の方、しょっちゅう来てるらしいわね。恋人かしら?」
「毎日ですね。一時間ほど過ごして帰っていかれますよ。つき合っているとは聞いていませんが……もしかして、お知り合いですか?」
「いいえ、仲がよさそうだから気になっただけ。飲み物おいしかったわ、また来るわね」
店主は少し多めに支払いをしたせいか、ちょっと話の矛先を向けてみただけで饒舌に話してくれた。振り返ることなく店を出て、扉を閉じる。
毎日、一時間ね。私がお願いしなければ捻出できない一時間を、彼女に会うためなら毎日調整するわけか。食事のついでと言われたならそれまで。だが先程の顔を見てしまえば、そうでないことくらい予想がつこうというもの。痛みを覚える胸に、そっと手を置く……やっぱり、あの人のことが好きなのだろうか。
「負けるわけにはいかないよね、こっちは命がかかっているのだから」
お昼を食べに行くくらいなら、一緒にお昼を食べるようにすればいいじゃないの。早速、次の日にアレクシス様の執務室へお昼ご飯を持参した。入口に立つ護衛に訪問を告げると程なくして扉が開く。
「今日は約束してなかったと思うのだけど?」
「はい、ですが久しぶりにお昼を一緒に食べたいと思いまして。」
とまどいを隠せないアレクシス様に、にこりと笑う。ここまできて引き下がるという選択肢はないわね。空いているテーブルに持参した軽食を並べる。仕方なく休憩用のソファに腰を下ろした彼は二口だけサンドイッチを齧ると、残りは口をつけることなく立ち上がった。
「ありがとう、美味しかったよ。それじゃあ仕事に戻るよ」
「残りのサンドイッチはいかがいたしましょう?」
「忙しくて食べられないと思うから持って帰ってくれないかな」
目も合わせずに紅茶を飲むと、再び書類に目を通しながら執務用の机に戻る。
ぞんざいな彼の態度に、思わず頭に血が上った。
「どうやらお口には合わなかったようですわね。やはり食堂の味には敵いませんわ」
食べ物に罪はないので丁寧にサンドイッチを籠に仕舞う。弾かれたように顔を上げた彼は、この日初めて私の顔を見た。
「食堂? なぜ君がそれを?」
「見た方が教えて下さいましたの、お相手はずいぶんときれいな方だそうですわね?」
直接教えてもらったわけではないが、他人から聞いたのだから誤りではないわね。私の言葉を聞いた彼は皮肉げに唇を歪める。そう、そんな冷たい表情もするのね。
過去、一度も見せたことのない負の感情。
ええ、一度もなかったわ。この変化はきっと女神のような彼女がもたらしたものなのだろう。それがよいことか悪いことなのかは判断はつかないけれど、私にはよくない前触れなのだという判断はつく。
「意外だね、君がそんな卑しい感情を抱くなんて」
「そうですか? 私はあなたの前で感情を隠してはいなかったと思いますけれど?」
「ならばいつも私と誰を比べている?」
「比べる、ですか?」
「気づいていないということは無意識なのかな? では聞き方を変えよう。本当は誰を愛しているんだ?」
私が、誰を?
彼の顔をまっすぐに見つめる。初めはクラウス様で、二回目はダレル。そして今世はアレクシス様。彼らは髪の色や瞳の色は違うけれど同じ顔を持つ。そして身分に拘らず、思いを曲げない頑固なところはよく似ている。きっと生まれ持つ魂も同じなのね。その瞬間、はっとして思わず口元を押さえる。そうか、顔と魂は同じでも別人なんだ。今更そんな大切なことに気がつくなんて本当にどうかしてるわね。
それなら私は誰を愛しているのかしら?
彼は私の沈黙を違う意味にとらえたらしい。再び興味を失ったように書類へ視線を落とす。
「答えられない相手ということかな? ならば私だってかまわないだろう、もう放っておいてくれ」
「私が愛しているのはあなただけですわ! それに、お相手である女性は平民で身分が……」
そう言った瞬間、アレクシス様の表情から失言であったことに気がつく。彼は身分で分け隔てることなく他人に優しくできる人だ。裏を返せば身分を根拠に人品を判断する事を嫌う人でもある。まっすぐにこちらを見た彼の瞳を見て嫌な気持ちになった。あの視線には見覚えがあるわね。前世で何度も晒されてきた……相手を蔑むものだから。
「君を軽蔑するよ。不誠実な自分の行動を棚に上げ、何もしていない彼女を差別する」
「違うの、そういう意味ではなくて……!」
激しく首を振り、否定する。一回目の人生であなたの隣に立つことを諦めたのは身分の差だけではなく、あなたにはすでに婚約者がいたから。来世で愛し愛されたいと願ったのは、誰も不幸にしない選択をしたかったからなのに。そんな私がなぜ生まれ変わっても理不尽に全てを奪われようとしているのだろう。
今世のあなたは私という婚約者がありながら彼女にだけ心からの笑みを向ける。そして彼に愛されていると知った彼女は、ためらうことなく伸ばされた手を取った。彼らは私の存在を思いやることなく、簡単に互いを手に入れて……。
彼らから忘れ去られた私には、命すら残らないというのに。