4・不思議成長
…………少し、気分を変えるか。
落ち込む気持ちは変わらないけど、ずっと悲しんでいる訳にもいかない。
そうだなー……これからどうするか、という事でも考えてみるか。
とりあえず、白虎が俺を見捨てない限りは、彼女に付いて行くのは決定事項だ。
まあ、付いて行く、とは言っても、実質は寄生して養って貰うって事だけど。
男としては情けない限りだが、俺には今の所それ以外に生きていく術がない。
自分で動ける様になれば、自立するとか、食料を獲るとか、選択肢も増えていくんだけど……俺はまだ赤ん坊だからな……。
それも、這いずったりすらも出来ないぐらい幼い。
これから動ける様になるには、最低で数週間、最高で数年。
しかもそれは、ハイハイが出来るまでだ。
食料を集められるぐらいきちんと動けるには、それから数年が必要になる。
こう考えると、先が長すぎて気が滅入る……。
ああ、気分変える為にこの話題にしたのに、こっちでも気分落としてどうするだよ、俺……。
せめて、赤ん坊でさえなければ!もうちょっと動ければ!
ああ、動け、この身体!!
…………え?動いた?
え、嘘、ちょ、待て!
何で動いているの、俺の身体!?
いや、手足を動かすぐらいは目覚めた時から出来ていた。
けど寝返りを打ったり、起き上がったり、なんて筋力が必要な事は出来ない筈だ。昨日も確認した。……なのに、今、俺は、寝返りを打てた。
ゆ、夢か?
よし、確認の為に、もう一回だ!
それから、何度も確認した。
けど、出来る。夢じゃなかった。
しかも、それだけじゃない。起き上がる事も、這い這いも、出来た。さすがに二足歩行は無理だったけど。
でも、十分におかしいよな、これ。
普通、ここまで出来るのは数ヶ月かかる筈だろ?何でそれが一週間で出来るんだ?
俺が最初目覚めた時から生後何ヶ月だった、みたいなオチであれば、納得は出来る。
でもだったら、昨日の内から出来てなきゃおかしい。
こういうのは、毎日の積み重ねで出来ていくものだ。
たっぷり食べて、寝て、少しずつ筋肉を付けていって、それから出来るのが普通だ。
一日経ったら突然出来ていた、というのは変過ぎる。
昨日に出来る兆候があったりしたらまだ分かるけど、昨日ではまったく出来そうにもなかった。
ほんと、どういう事だよ……?
…………ま、いっか。
出来るんだったら、それで良いよねー。
ちょっと楽観視しすぎな気がしなくもないけど、考えても分からないんだったら、考えないに限る。
とりあえず、洞窟探検でもするか!