3・身体の変化
森で白虎に拾われてから、一週間が経った。
俺はその間、水浴びに川に連れて行かれる以外は、ずっと白虎の巣穴にいた。
しかもここでしていた事といえば、寝るか、食べるか、ぼうっしているか、これぐらいだ。
赤ん坊って最高!
ちなみに、その間の俺の食事って、何だと思う?
白虎の母乳です。
…………うん。白虎、メスだったんだ。
最初に出会った時に思っていた『王の貫禄』、これ間違っていた。
『女王の貫禄』だった。
完全にオスだと思い込んでいたから、これを知った時、マジで驚いた。
どのくらい驚いたかと言うと、この一週間で三番目に驚いた。
まあ、驚いた事自体が三つしかないけど。
一つはさっき言った白虎の性別の事。
残り二つは、初めて川に連れて行かれた時に自覚した、自分の事についてだ。
その一。
俺に、狼の様な耳と尻尾が生えていた。
俺、獣人だった。
そりゃもう驚いた。ものすごーく、驚いた。
最初は、自分に耳と尻尾が生えていて、獣人になっている事に。一度落ち着いてからは、獣人なんていう存在がいる事に。
そしてその後は、妙に納得していた。
だって、最初に目覚めた時から、頭と腰に違和感はあったんだよねー。
それが何かは良く分かってなかったけど、元の身体とは違う、って事だけは分かってたし、原因さえ知れば納得だ。
で、これ知った時に思ったんだけど、絶対ここ日本、というか地球じゃないよね。
だって、地球に獣人なんていないし。
そしてやっぱり思い浮かぶのは、ファンタジー世界じゃないか、という事。
そんな事有り得ない、とも思うけど、有り得ないと言えばあの魔方陣もそうだ。
あんなのが現実に存在していたのだから、ファンタジー世界があっても不思議じゃない!と俺は思っている。
となると、この状況はあの魔方陣とも関係ありそうだな、と睨んでいるのだが確証は無いし、検証も何も出来っこない。
だから今は、特に考えない様にしている。
で、もう一つの驚いた事だが、俺的にはさっきよりも重要だ。
俺……女になっていた。
まさかのTSでした。
そりゃ驚くに決まっているでしょ!
しかもこれはつまり、一生彼女なしで童貞のまま……。
もう、驚くと同時に、かなり落ち込んだ。
だって恋人作ろうと思ったら、男と付き合わなきゃいけないんだよ?
男から恋愛感情持たれて、男と手繋いで、男とキスして、男と結婚する……想像しただけで気持ち悪い。吐き気がする。
俺は一般的なノーマルだ!同性愛者じゃない!!
という訳で、もう俺は一生年齢=恋人いない歴から脱せない事が決定した。
父さん、母さん、済みません。霧島家の血は残せそうにありません……。
いや、転生しているから、もう俺の身体に霧島家の血は流れていないんだった。
はあ。何にしても落ち込む……。