5.
次第に倒れていた者達も意識を取り戻せたようで、起き上がる者や焦る者、呑気に会話を始める者など様々だ。まずはこの状況を理解したいと思った瞬間、誰かの声がこの世界に響き渡った。
「あ、あー、テステス……聞こえますかー?」
声からは優しい男の人のようだが、怪しさしか感じられない。いきなり声が聞こえ、皆変に思っているようで、誰かだ口を開く。
「えぇ聞こえますが、誰ですか?」
九つの尻尾と金色の毛並みの耳を生やした女性が、怪訝そうに声に答える。マイクの確認は大事だが、まずは名乗るべきなのだろう。
「コホン……申し遅れました、私管理人"かぼ"でございます。」
………管理人?誰だそんな人、全く身に覚えがない。誰かが気づくだろうと思い黙っていたが、閃く奴が出なく痺れを切らした管理人と名乗る声が答えを自ら言った。
「コロロですよコ、ロ、ロ、なりきり専用掲示板の管理人!」
やっと正体を言えたと自慢げな管理人を横目に、考えを巡らせる。確かに、寝落ちするまで『コロロ』にて設定を投下していたし、管理人からの一日の挨拶を確認したのだ。だからと言って、管理人と直接話が出来るのだろうか?しかも、こんな知らないところで。彼女は経緯が思い出せず、次第にイラつき始めていた。
「いや〜、すみませんね。不具合でなんだか大変なことになってるみたいで……。」