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七ノ怪 ガシャドクロと提案

■久しぶりの更新です。今回は話区切りの関係で短くまとまっています。


 あれ、なにこの空気。俺、変なこと言った?「仲間を増やそう」って言っただけなんだけど…………あ!もしかして、この世界の妖魔は仲が悪いとか?だと難しくなるかもなぁ――――



 「火月夜(かぐや)様、本気でございますか?」



 この沈黙を1番に切ったのはやはり雪音(ゆきね)。透き通った美しい声が4人掛けのテーブル空間に響き渡る。



 「え?……うん、本気だけど。なんかマズいのか?」


 「い、いえ。決してそういう訳ではないのですが…………」



 うん?何なんだ、その歯切れの悪い答えは。ますます分からなくなってきたぞ。

 首を傾げる俺に、今度は(こう)が口を開いた。



 「火月夜様は……【百鬼夜行(ひゃっきやこう)】を作るおつもり……デスか?」


 「え?……ヒャッキヤコウ?」


 

 聞いたことのある単語だった。確か数多の妖怪の集まりで、その集団が一つの妖怪になるんだとか。

 おとぎ話かと思っていたが、ホントにあるようだ。



 「百鬼夜行とは、一つの妖怪の下に連なる妖怪の集団でございます。一の弱さを全員で補い、全員の強さを一が作る――――最強の妖怪陣形です。火月夜様はそんな百鬼夜行をお作りになるのかと……」



 最強の陣形、最強の妖怪……か。なるほど、最強ね――

 つまり雪音達が心配しているのは、そんな百鬼を作って俺が誰かに喧嘩を売ろうとしているのではないかと、そんなことを考えている訳か。

 はぁ、俺はそんな危ないヤツに見えるのかね……そんな事、少しも考えていないし、どっかの国を攻め滅ぼすなんてこともしない。ただ仲間を作りたいなぁ、と考えただけなのだが……安易すぎるのか?

 仲間やグループという概念に人間と妖怪では多少の相違があるようだ――これは多少ってレベルではないのか?



 「どこかに戦争を仕掛けるとか、そういうのが目的じゃなくてね。ただ俺は人数が居た方が楽しく冒険できる……かもしれないって思っただけで……」



 うーん……なんて説明すればいいんだろう。こういう類の誤解は早く解かないと後々面倒なことになるのは、この世界に来てからの経験で分かっている。だが、うまく言葉に出来ない……



 「つまり、火月夜さんは百鬼夜行を作りたいのではなく、ただ仲間を集めたいという訳ですか?戦力云々(うんぬん)ではなくて」


 「そ、そうそう……てか俺、百鬼夜行があるなんて初めて知ったことだし……」


 「え!?火月夜さん、妖怪ですよね!?ご存知ないんですか!!」


 「あー、それはだな……」


 「それについては、(わたくし)が説明します」



 リサのお陰で誤解が解けた(?)と思いきや、今度は別の方向で不審を抱かれてしまったようだ。――そう言えば、リサには俺が最近まで人間だったこと話してなかったな。


 その後、雪音の説明に幸も混ざりながら成り行きを語った。うまく論点をすり替えることが出来たのだが、また雪音と幸が土下座の勢いで謝ってきた。もう気にしてないってのに……

 はぁ……こっち来てからやたらと多難だな。まあ、飽きないけどさ。



 


 「そんなことが……あったんですね」


 「そ、そうそう。元は人間なんだよ、俺」



 元は人間――自分で言うと変な気持ちだな。俺は妖怪なのだと改めて気付かされる。だが、人間だった頃の記憶もしっかりあるし、姿も変わっていない。生き方は在り方よりも尊いと言うが、俺は在り方を選びたいところだ。


 ――――――…………沈黙再来。俺も雪音も幸もリサも場を盛り上げるタイプではない。辛うじてリサがどうだろうというレベルである。

 しかし、この沈黙を破ったのは意外にも幸だった。



 「お仕事……選びませんか?……デス」



 うん。まあ、そうだよね。新しい話題を振るわけないよね。話を元の路線に戻しただけだが――ナイスだ、幸!って思った。苦手なんだよ、誰も喋らない空間って。



 「えーっと、Eランクやってみるんだっけ?」


 「そう、ですね。折角得た権利です。使うに越したことはありません」



 リサも賛同。雪音も静かに頷いたので、全員の意向が固まった――ってか、最初から決まっていたんだけどな。話を脱線させることは出来るのに、元の路線に戻すことが出来ないようだな、全員。

 そんな気の休まるような休まらないような流れに苦笑しながら、俺達は依頼掲示板に向かった。











 「依頼内容はご確認頂けましたか?」


 「はい。これでお願いします」


 「かしこまりました」


 

 冒険者ギルド員の女性に依頼受注の旨を伝える。

 初のEランク依頼として俺達が選んだのは――――



 「では依頼内容の最終確認を致します。『《海樹の森》にて鎧蟹(パグール)3匹の討伐。期限は5日で、報酬は金貨5枚』こちらでお間違いないですか?」


 「大丈夫です」


 「では、ギルドカードのご提示をお願いします」



 鎧蟹(パグール)。読んで字の如く鎧のように硬い蟹だが、普通の蟹とはサイズが違う。全高は平均2メートル。明らかに常軌を逸しているが、所詮は蟹。Eランクに振り分けられる程度の――――っと、ここまでの話は全部ギルドマスターのカイザーさんに聞いたことだ。手段はなんであろうと下調べは重要なことである。冒険者なら尚更だ。

 俺たち4人は言われるがまま、ギルドカードを提示した。



 「ご提示ありがとうございます。これにて契約完了です。頑張ってください」



 さて、初のEランク依頼開始だ!



 

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