作戦と仲間達
「では早速会議と行こうか。私は正義テロ組織ユースティアの下着首謀者、じゃすてぃす武田だ。以下構成員としてジョニパッチことジョニー紅蓮マキシスともう一人マスターの娘アマネを含めた計三人で今後の活動を行いう事にする。何か異論はあるものは挙手を」
特務機関エルフの人のように机の目の前で手を組み、作戦の全容を語りだしたじゃすてぃす武田。その前に前回に全く出ていなかった人物について説明しておこう。
「はい」
「なんだね?ジョニパッチ君」
「マスターの娘アマネについて情報の開示を求めます」
それは会議が始まり颯爽と乱入してきた、黒髪ロングのちょっと不良感漂う少女の事である。恰好は白きを基調としたセーラー服とスターマンパンツがチラ見えする紺のスカートを着ている。
「よかろう、アマネ自己紹介だ」
じゃすてぃす武田が指を鳴らしそれを合図とするようにアマネが席を立って自己紹介をした。
「ぱんぱかぱーん!カフェフィリリのマスター娘のアマネです!特技はハッキングでジャアックの情報収集専門として活動してます!身長168体重はヒ・ミ・ツ♡スリーサイズは上から84、64、72でーす!それとそれと~この小説のメインヒロインだ!忘れたらぶっ殺す!バグ技使ってなぶり殺しだ!」
「あ、ありがとうございました!」
見た目と合ってない言動でこえぇわ!前半可愛いのに後半は囚人の目してたぞ、俺をボルボックス見るような表情で睨んだぞ。
「他にはないか?」
「はいはいありまーす!この年上のガキは誰ですか?武田の兄貴ィ!?」
アマネという女何故じゃすてぃす武田を兄貴と呼ぶ、そして口調が完全に男だ。マスターの娘めっちゃ怖いんだけど。
「こいつは俺らの新兵器、ユースティアの下着のマイクロニキビ的存在だ。いや紐ニキビくらいかな?」
「へーなかなかの期待の隕石ですね、ま、せいぜい太陽系外縁天体止まりですね。地球型惑星にはなれない存在ってところだろう」
なぜか独特の観点で評価をしてきた二人。どうして水着と天体で比べる。遠くに後者、地学習わないと分からないような単語出さないの。別の意味でのバカなのか。
「悪いが改めて自己紹介していいか?」
「あ、間に合ってるんで大丈夫ですよ。ジョニパッチ年齢21歳、自称ヒーローネーム”ジャスティス・ジョニー紅蓮マキシス”を名乗り北東に位置する街カッピョラで警察官として仕事をしている男性。正義感が強くて青春鳳凰流星拳を取得しもしもの時に備え、日々鍛錬をしている。あとは……」
淡々と個人情報をばらしていくアマネ。特技がハッキングだがらジョニパッチの情報をハッキングして手に入れたとかそういう事だろう。このままでは彼の黒歴史まで掘り返されてしまう。
「おいアマネ、勝手に人の情報バラすな。語られたくない事だってあるんだ、例えば自作の小説を書いてるとか、ネカマに騙されてデートしたとか星の数ほどあるんだから」
「あーそれもありましたね、こんな奴戦力になるんですか?」
「なんでそんなこそ知ってんだよ!つーかネカマの人はあれだから!『ヤラナイカ☆』で被害者だわ」
ジャスてぃす武田ァァなんでお前もそこまで知ってんだよ。これがハッキングの恐ろしさなのか、そうだと言ってくれ。ロシアの殺し屋よりも恐ろしやだわ。
「そんな寒いこと考えてないでさっさとジャアックに特攻決めてきてください!私の特技”黒歴史発見”でまた掘り返しますよ?」
「なぁじゃすてぃす武田、爆弾ないか?要塞吹っ飛ばすやつ。正義万歳してくるわ」
もう鬱だ死のう。これ以上メンタル爆弾が起爆しないうちにさっさと自分が爆発しなければ。
「それで今回の作戦の要はジャアック城にどうやって潜入するかだ。目的はジャアック城に戦闘員及び重役たちを一点に集め、そこで空間停止魔法により空間を永久に停止させる。もちろん解除されたらもう二度とこの作戦は使用できないだからこそ十分に基盤を整えてから作戦移る」
ジョニパッチの自殺特攻は無視され、作戦は淡々と語られた。作戦としては理にかなっているが一番の鍵である空間停止魔法がひっかっかる。これは普通の世界であって魔法は存在しなかったはずなのではないのか。
「魔法の発動は俺がやる、ジャスティス神拳最大奥義を使えばそれが可能だ。ただし使うにはいくつかの制約があって作戦実行時は発動のみになってしまうが許してくれ」
「私は作戦の為に情報収集と、実行時のサポートね。天才の私にかかれば夕飯後だから心して個々の役割に専念になさい!いざとなったらヒロインの私を守れ!」
「「サーイエッサーー!!」」
二人の役割は既に決まっており、あと一つのピースで作戦の形が整う。
そのラストの役割は言わずと分かっている。最も重要で危険度が高い、この作戦の肝醤油的立ち位置だ。
「で、ジョニパッチお前作戦実行日にジャアック城に戦闘員と重要人物集めとけ以上!」
「待て待て待て!説明少なすぎだろ!もっと詳しい作戦内容を、新人に優しい研修を!」
わかってた、でもこれはひどすぎるんじゃないか?作戦立てたんだからそのあたり詳しく練ってあるんですよね?わかってます!じゃすてぃす武田さんはしっかりしてますから。
「おいこらパジャマ太郎、今ので十分だろ?武田さんに手間取らせんなよな、このダボが!」
「なんだとネト民が、肝心な部分ないのにどうやって動けって言うんだよ?チュートリアル飛ばしてラスボス行くんだよ、せめて行動パターン教えろや」
誰がパジャマ太だ、お前らそんなんでよく成功できる作戦だとか言ったな。ゲームソフト持っててもハードなきゃプレイできじゃいのと一緒だぞ。
「ほらちゃんと指示書あるから、それに沿ってやれ」
そう言ってじゃすてぃす武田が紙を渡してきた。一応考えてあったんだな、でも嫌な予感しかない。
「えっと、なになに?」
紙には一言『皇帝を拉致しろ』と書かれていた。そうか、前に話した倫理に反さない作戦とは何のことだったのかな、完全にアウトじゃねぇか。やらねぇぞ。
無言でその紙を破きました。
「これにてコードネーム”革命のガータベルト”の作戦の説明を終わる。異論はないな?」
「了解っす!アマネ全身全霊をもって取り掛かります」
「異議あり!」
「はい却下、では解散」
異議を唱えたのにさらっと流されて終わった。この作戦お粗末様にも程がありませんんかね、成功率うんぬんじゃなくて根本から不可能じゃん。こんな奴らに頼る時点で間違いだったんだ。
「ふざけんなよ、こんな作戦でどうやってみんなの笑顔を取り戻すんだよ?なら、俺が一人で行ってきてやるよ!俺のやり方で変えてやるよ!じゃあな!」
もう我慢の限界だった。世界を変えると言ったから、正義を信じてついてこいと言ったから。それなのにふざけてばかりで肝心な作戦は穴だらけ。これでは変えられるものも変えられない。
「クハハッ、やっぱ未熟もんだな。道化は自ら踊ってなんぼだろ?」
席を立ちその場を去ろうとしたとき、じゃすてぃす武田が不敵に笑い言葉を投げた。
「マジックのネタを明かさないように、俺にも本当の目的を言わないってか?なら、なおさら信用ならないね」
自分でもわかっいた。底の浅さに、信用ならないのは入って間もないジョニパッチ自身であることに他ならないからだ。
「ま、お前がどう思おうと関係ない。ユースティアの下着の一員である以上仕事はこなせ」
鋭い双眸でジョニパッチを睨むとその手に作戦に必要であろう道具と指示書を渡して、その場を去って行った。
「トリックオアトリート、お菓子をくれないと黒歴史掘り返すからな。じゃね、ばははーい」
アマネも慰めか蔑みかよくわからない言葉をかけて店の奥に消えた。
「……なんだかな、まあ俺が悪いんだけどさ。イマイチ釈然としないな」
しばらく考えたが結論は出なかった。あの作戦ではどうやっても不幸になる人が出る。ましてやそれを実行するために拉致をするなんて馬鹿げている。何を考えているんだあいつは。
「あジョニパッチ、お前自爆特攻したいって言ったよな?なら今すぐ行ってこい。今更無理とかいうなよ、渡した服に着替えて指示通りに行動しろいいな?やらなかったら次はどんな黒歴史掘ってやろうか」
「脅迫するな、やりゃあいいんだろ?わかったよ行くよ」
もう粉砕!玉砕!大喝采☆だ。派手に散ってきてやるよ。このまま城破壊したら平和になるんじゃないか。
「言っとくがな、俺たちは綺麗な正義じゃない。革命ってのはな命がけなんだよ、周りから見たら俺たちは悪だ。だからお前も奇麗事ばかり吐いてても仕方ないんだよ。少しは理想に現実を重ねて考えればわかるだろ?だからお前は未熟者なんだ」
最後にらしい事言って出ていきやがった。確かに正論だ。否定もできないし反論もしない、けど俺だって理想を高く掲げたかった。みんなが傷つかない方法で世界を変えたかったんだよ。
「いつもあんな感じなら苦労しないのにな、どうしてふざけるんだか……。はぁ不本意だけだやるか、正義の為だ」
作戦を話す前の『ジャアックとして行動できるか?』の質問の意味を吐き間違えたような気がした。
革命とは、国の在り方を変えるには。そう考えて実際に作戦を考えた時にどこかで間違いを犯してしまう事に気付いた。それは過ちを犯さない、、倫理に反さないという面で少なからず逸脱するからだ。いくら正義の大義名分があったとしても間違いを犯したことの事実は消えない。その時点で悪と表裏一体であることに違いないのだから。
「あの野郎、何が皇帝拉致だ冗談にも程があるぞ。それとこれも別の意味でやりたくない」
じゃすてぃす武田から渡された指示書と衣装を確認したジョニパッチはそのくだらなさに笑う事しかできなかった。
読んでくださりありがとうございます。
唐突ですが失恋しました。心がしんどい死に腐りたい気分です。
まったく恋というものは厄介ですね、幸せになってほしいが爆発しろという思いもある。