正義テロ組織 ユースティアの下着
「あれは今からどのくらい前だったろうか。世界がまだ国で隔てられ、人々が社会の監獄に囚われていた時代の話だ。この世界の在り方に疑問を持ちもっと自由を求めて行動した男がいた。その男は人々が自由を求め過ぎることで身を滅ぼす、そんな社会情勢を不満を抱いていたのだ。個人が命を軽んじることなく、生命の神秘と誕生にまつわる儀式にいそしむ事をとても望んでいた。その為に彼は世界の首脳たちを次々に失脚させ、国境を取っ払い、多種多様性に富んだ争いのない世界を作り上げることに命を燃やしたのだ。そう彼の名前は……っばっふうぅーーん!!」
「長い!悪役にそんな過去談いらない!」
「なに話の途中で殴ってんだよ!こいつの処分俺に任せるんじゃないのか!?」
デブリッツをどうするかでジョニパッチが出した結論。極悪帝国ジャアックについて話せと言ったのだがその話の最中、多分まだ金曜ロードショーのおじさんが射影機をくるくるしている辺りでじゃすてぃす武田がデブリッツをぶん殴った。まだ何も解明されないまま終わったじゃねえか。
「いいか?情は人の判断を鈍らせる。お前もポテトを食べようとしたら目の前で『それ僕のお母さん!』と嘆くピクルスを見たら後ろめたいだろ?」
「後半言ってる意味わかんねぇよ!仮にポテトとキュウリが動いてたとしても、親子なわけあるか!」
殴った拳を哀愁漂う目で眺めながらこちらに視線を送るじゃすてぃす武田。お前の行動は一々意味が分からん。だって芋と瓜だぞ、親子要素ゼロだろ。植物って括りなら同類ではあるな。
~じゃすてぃすコマーシャル ドナルドルド・マグドナルドルド編~
「ぼ、僕無理だよ!こんな油の中に入るなんて!熱いし死んじゃう!」
「行くのですポテッ君、あなたはそのためにわざわざ北海道から来たのでしょう?」
「ううぅ、アツアツの油の中にぴょーん!」
激しい油の飛沫と共にじゃがっ子は飛び込んだ油の熱でカリカリにあがっていったのである。
「すみませーん!ポテト108つください!」
「かしこまりー!ポテト入りますうぃた!108つ!」
なんという事でしょう、まさかの大量注文!これではせっかくの決意固めたジャガイモがすぐになくなってしまう。急いで揚げなければ。
「ポテトを上げるための油が足りん、誰か油かもーん!デブリッツはおらんか」
「はっここに、油ですね?」
「うむ、そうじゃ。任せたぞ」
油貯蔵のデブリッツは自分の背中にある栓を抜いて油をフライヤーに注いでいくではないか。
「お、俺はもうダメですがこの油でみんなの笑顔を揚げてやってください……」
全身の油を使い切ったデブリッツはカサカサになり力尽きた。
「ありがとう。けど人間の油なんて使えたもんじゃないから植物油にするな」
何のために彼はその命を燃やしたのだろうか。
I LOVE JUSTICE
(……俺これ突っ込まないからな。ぜってぇ突っ込まない。”茶番無視”これ新設ジョニルール。目の前でカッサカサの元デブいるけど無視だな)
変な茶番でデブリッツが涸れ果てお肌がカサカサになり干からびててしまい、もう話を聞く事は出来なくなってしまった。
ジョニパッチは一体今まで何をしていたのだろうと自問自答したくなる。
「これでこの街は平和だなジョニパッチよ、正義の活躍ご苦労だった!」
「あんたこれで本当に解決したと思ってるのか?俺はそう思わない」
ご満悦の表情でピースサインを送るじゃすてぃす武田だが、ジャアック戦闘員を退けただけで本質は何も変わっていない。この街がまだジャアックの脅威にさらされている事、この事件で街が危険な状況になること。考えだしたらきりがない。
「そうだな、目の前の問題は解決した。だが今後この街が平和であるかはお前次第だ」
「は?何言ってんだそんなの当たり前だろ?この街を守るのが俺の役目だ。これからもそうだ、どんなに強い敵が現れても俺はこの街を守るつもりだ」
そうだ、これから危険視されたこの街をどう守っていくのがジョニパッチ警官の役目でありそれは終わりのない戦いになることが予想される。それでも正義を貫かなければならない。
正義とは修羅の道だからだ。
「それも根本の解決にはならないだろう?諸悪の根源、帝国ジャアックの頭を潰さない限りこの状況は連鎖して再び悲劇を生む。違うか?」
「わかってる、けどそれをするには俺では実力不足だ。今だってあいつに全く歯が立たなかった」
ジョニパッチは分かっていた。自分が井の中の蛙であることに、世界を変えるには到底及ばない非力な存在であることを。
「じゃあこの状況を変えられる、そんなチャンスがあったらどうする」
「そりゃ喜んでそれに力を貸すさ。みんなが笑顔で暮らせる世界になるなら俺はなんでもする」
じゃすてぃす武田が今までにない真面目な話をしている事に驚きだが、なんとなく彼の言いたいことは分かる気がする。みんなが悲しむ世界なら悲しまない世界にすればいいそういう事ではないのか。
「……じゃすてぃす武田お前何が言いたい?あんたに世界を変える力があるのか?」
「世界とは曖昧なものだ、正義と言っても個々で形容するものは違う。けど俺はこの世界は間違ってると思う。だから俺と組まないか?」
「組むってどういう事だ、世界を変えるために徒党を組めって事か」
その提案に怪訝そうな表情を見せたジョニパッチ。当然だ世界に喧嘩を売るという事がどういう愚行であるか、先人たちは身をもって証明したいるからだ。
その昔、世界を支配する極悪帝国ジャアックを撃ち倒すべく結成された義軍。ジャアック戦闘員の何倍もある軍勢は一矢報いることもできず崩壊したという。
だから誰も反逆起こし世界を変えようと思うことはなくなった。その勢力に挑むより流れに身を任せ、悪に染まった方が安全なのだから。そうやって世界は悪の正義に染まった。
「力で世界を変えるより、合理的にあるべき倫理を取り戻すことができるんだ。それは何だと思う?」
「SNSで叩きまくる。不倫報道をして地位を貶める。暗殺このどれかだな」
指を三つ伸ばし可能性を提示する。力で制圧できないのなら社会的地位で失脚させるしかない。
「あながち間違ってはない、だが効果今一つだ。最もそれでは倫理に反するだろう」
「確かに、ならどうするのがいいんだ?」
その言葉を待っていたかのように口を歪ませるじゃすてぃす武田。そして指を一つ立て高らかに言葉を掲げた。
「もちろん、ジャアックをぶっ潰す!ただし社会的や身体的にではない。根本から覆す」
「どうやってだ、力でも世間の風評でもないならどの方法で国一つ落とすんだ!」
「そいつはまだ秘密だ、お前が俺の仲間になるなら話は別だがな」
誘導的に仲間にする運びが出来上がった。正義を貫くその心を見越してじゃすてぃす武田が合理的に仲間になると言わせる戦略だ。きっとジョニパッチは了承する、その覚悟を先に示したのだから。
「いいぜ仲間になってやるよ。その代り絶対にジャアックを潰すからな?ぐっふ!」
「モチのロンだ、長い道のりになるが絶対に成功させる。ってことでよろしくな」
ジョニパッチが差し出した手を躱して腹にパンチを食らわせたじゃすてぃす武田。ここで行動が読めない事をしてきた。
「なにすんだこら!」
「一種のスキンシップだな悪く思うな。お前はこれで正義テロ組織ユースティアの下着の一員だ」
理解が追い付かなかった。殴った事は一歩譲って白紙にしている。それよりなんだ、正義テロ組織ユースティアの下着って、なんで女神さまの下着なんだ!そこはユースティアでいいだろ。
「……すまん、なんで下着なんだ?」
「俺たちは純粋な正義ではない!汚れた正義で世界を変えるんだ、だから正義の女神は名乗らない。その魅力的な下着で世界を変えるんだよ。いいか?下着というものはな尊いんだ!真実を隠す一枚の布切れ!それが何を意味するか分かるか!?」
随分と力説しているが、ちっとも魅力が伝わってこない。そりゃそうだ下着だもん布っ切れが世界を変えるテロリストだとよ?笑わせるぜ。
「知るか!その名前さっさと改名しろ!有名になったら恥ずかしいだろ?」
「えーダメだよ、もう正義テロ組織協会にこの名前で提出しちゃった☆てわけで許して」
片目ウィンクして舌を出すな、あざとさゼロだからな。こんな名前のテロリスト恥ずかしいわ。
「もっとましな名前がよかった……ソックスとか進撃の太ももとか……」
「もう決まった事だ!クヨクヨするな、それじゃあ革命のテロ第一段階!まずは極悪帝国ジャアックに潜入だ!」
こうして正義テロ組織ユースティアの下着は革命の為に極悪帝国ジャアックに潜入するため、ジョニパッチの故郷である街を後にしたのである。
読んでいただきありがとうございます。
下セカ信者です、読んでいる方はパロってるのがわかると思います。震激の尻の若頭五人衆がツモでした。