ジャスティス・ジョニー紅蓮マキシス
「俺の名はジャスティス・ジョニー紅蓮マキシス!正義のヒーローとして日々、極悪帝国ジャアックと戦う戦士なのだ!今日もパトロールで街が平和か確かめるぜ!」
そう、俺はヒーローだ。この絶望で染まった世界を変える希望の戦士。21になって中二病発症してるのやだーとか言う視線で見ないの!ほんとにジャアックの戦闘員を退治してるんだから、この後ちゃんと読めばわかることだからな。
……という事で俺は毎日の習慣である、ツウィターでエゴサしてからソシャゲのログインとスタミナ消費、web小説の更新をチェックする。これジョニルール。決してネト民とかニートとかじゃないからな!
「さて、やること終わったから着替えてパトロール行きますか!今日もやるぜジャスティス・ジョニー紅蓮マキシス!世界の平和は……」
「ジョパニッチ~朝ごはんよ!降りてきなさい」
「え、母ちゃん待ってよ!まだ自己紹介してなんだから!あと俺の名前はジャスティス・ジョニー紅蓮マキシスだから」
くそっ最大の裏ボス、かーちゃんだ。俺の思考の二手先を読み常にうまい飯を用意してくれる上に、いかがわしい本を探すことに長けた厄介のものだ。
「はいはい、そうやってヒーローごっこするのはもうやめなさい?今は立派に仕事してるんだから」
「だあぁぁぁ!違うんだよ母ちゃん!ほんとに街を守ってるんだって!それが仕事なの?」
ちなみにかーちゃんは俺の正体を知らない。だってヒーローはいつだって正体を隠すものだろ?……街の警官やってます、お巡りさんです。
実際は恥ずかしくてどんな仕事か言ってないだけです。
「じゃあ行ってきます!」
朝の支度を終えて、俺は学生服みたいな制服を着て家を出る。これからみんなの為に働くぞ!今日も平和な一日でありますように。
職場まで徒歩で向かう、おおよそ10分くらいでつくからそこまで遠くないが今日はすこし厄介ごとがあるようだ。
「おいおいおい!何位も言えねえのか?」
「早く卵出せよ!羽毛でもいいぞ?」
「出さねぇと取って食っちまうぞ?北京ダックだ!」
道の真ん中黒い服を着た男たちが誰かをいじめている。遠目でわからない、なんだアレ。鶏みたいな恰好してるな。てか北京ダックはアヒルじゃないか?
「ひいぃぃ、鳥ガラの出汁にするのだけは!アッシお湯が大の苦手で」
鶏の恰好したやつなんか言ってるな。いや、お湯だったら人間感覚でお風呂でしょ。
「そこの君たち、何してんの!その鶏もどきはうちで預かるからいじめないで」
やはり悪事は見過ごせなかっな、心が判断するよりも早く体が動いた。
困っている人は見過ごさない。これジョニルール、これぞ正義のヒーローだな。
「なんだお巡りさんか、いいぜこいつやるよ」
「雄だし卵産まないし、おいしくなさそうだからやるよ」
「このアシュライにたてついたこと後悔させてやろう!愚民よ!」
「ありがと、今度からはいじめちゃだめだよ?」
黒服の男たちは鶏男を置いて颯爽と去って行った。なんか一人真面目な奴いたなきっとこの話の伏線だな。無視するのが一番。
「おい、いつまでそんな恰好でいる?署まで連れてくぞ?」
「助けてくださり、感謝感激ツララフブキでござんす!」
ボロボロの鶏男を助け起こす俺、なんか凛々しい顔立ちだが非常に鶏の恰好がムカつく。早く手当てしてやろう。
なんだツララフブキって、雨あられじゃないのか。そして語尾がぐちゃぐちゃだな絶対キャラ作りしてんな。こいつ信用できない!
「あの、ついでで申し訳ないのだが何か食べるものはありませんかねぇ?」
「生憎だがフライドチキンしかないんだ。お前鶏だろ?共食いはよくないぞ」
助けられたついでに食べ物の要求とか図々しいな。
「出されたものは残さず食べる!お残しは許しません!だから、ありがたくいただく」
差し出したフライドチキン奪ってたぞ、更に図々しいな、もう何も聞かずに帰そう。それが平和だ。
「ふぅ、助かった。ありがとな!またいつか会おう!」
チキンを食べ終えるとそそくさその場から逃げていきやがった。ほら見ろ、なんか怪しいと思ったんだ。別にチキンの一つや二つ被害はないからいいけど。さて仕事しましょう。
「おはようごさいます!先輩聞いてくださいよ今日道端に変な鶏の恰好したやつがいて……はぁ!?」
職場である交番に到着し、先輩に朝の出来事を話そうとしたのだが、そこには先輩ではなくあの鶏男がいた。
「よお!道に迷った」
「なんでいるんだよ!お前!」
~じゃすてぃす昔ばなし 第一話 鶏の恩返し~
昔々あるところに鶏を助けた優しい少年がいたそうだ。
「なんか変なの始まったんですけど!?ナレーションさんでできたし!」
「先ほどは助けていただきありがとうございました、鶏のじゃすてぃす武田です」
「そんな名前だったの!?ふざけてるよね!その格好と名前といいこの状況!」
キレるジョニパッチ。しかしこれは、昔ばなしなのだ!突っ込みは不要。
「助けていただいたお礼に、何かさせてください。決して決して覗かないでくださいね?」
そういうとじゃすてぃす武田は襖の奥へこもってしまった。
「おい、これ鶴の恩返しみたいなんだけど」
「お待たせしました。手羽先のコラーゲン煮込みです、お召し上がりください」
襖から出できたじゃすてぃす武田はおいしそうな料理を運んできました。
ジョニパッチは思わずよだれがジョルルルルルッ!浄瑠璃人形!と音を立ててしまった。
「ナレーション、誰がそんな効果音でよだれ垂らすんだよ!ぶっ飛ばすぞ」
おかしいなそれでもかぶは抜けません。
「もういい、突っ込まない」
「お気に召しませんでしたか?もう少しお待ちください」
ジョニパッチは食わず嫌いでわがままのくそ野郎なので、じゃすてぃす武田の羽が片方ないのにも関わらず料理を食べませんでした。なんて鬼畜!
「お待たせいたしました。北京ダックです私の命は尽きてしまいましたが、どうかこの意志をお継ください」
もう鳥の姿を模した料理になってしまったじゃすてぃす武田。最後の力で声を伝えるその姿は何ともおいしそうな北京ダックではありませんか。
「…………」
ジョニパッチはそれでも食べません。なんて強情なかぶなんでしょう。
すると手を付けなかった料理から光が溢れだし天へ召されたではありませんか。
それは食べてもらえなかったじゃすてぃす武田の怨念なのでしょう。
めでたしめでたし
~じゃすてぃす昔ばなし 完 ~
「ひどい!どうしてそんなことができるの!鬼畜!外道!」
「すまん、何一つ理解できなかった」
昔ばなしが終わってじゃすてぃす武田は怒っていた。わからなくもないがわかりたくない。
さっきまでと恰好は打って変わりジーパンに革ジャンと随分パンクになっている。死んだから新しい衣装に着替えたんだろうな、準備がいいのやら。
「まぁそうだろう、凡人たる貴様が我が崇高な理念を理解すること笑止千万!」
「なんだろうな、無性に殴りたいのは気のせいですよね?カルシウウム不足かな」
にこやかに地雷投げてきて、一々話の腰を折ってきやがる。ムカつくのなんの。
「ジョニパッチよ、腰は折るものではなく振るものだ!」
「クッソテメェェ!俺の心覗いてんじゃねぇ!てかそれ下ネタだからな!!黙れ」
じゃすてぃす武田恐るべし。もう今日有給取って早退しよう、疲れてるんだ。
「そう怒るな、俺はじゃすてぃす武田。この街にやってくるジャアック戦闘員について聞きに来たんだ。お前らがいつも警備してるんだろ?」
急に話の舵を180度切って真面目な話に持ってきた。確かにこの街はジャアックの戦闘員が立ち入らないように警備をしっかり固めている。なんで今こいつがその話をするんだ。
「確かにこの街は俺たちが巡回して奴らを入れないようにしてる。それがどうかしたか?」
「ひとつ情報を進呈しようと思ってね、今この街にジャアックの戦闘員が迫ってる。しかも大量に50は下らないかな」
「なんでそんなこと知ってるんだ、お前あいつらの回し者か?」
こんなふざけたことをする人間がそんな情報を知っている。いや、虚偽の情報の可能性もあるのでは。だが万が一のことを考えて報告を。
『ロックなお知らせだよ!緊急事態緊急事態!ジャアックの戦闘員がが正門を破って侵入してきた!ロッケンケロォォォル!』
鼓膜に直接響くようなサイレンが鳴り響き、緊急の警報が伝わった。
「もちろん街のみんなを助けに行くよな?ジャスティス・ジョニー紅蓮マキシスさん!」
是非もないそれが俺の使命だ。町の為に身を粉にして戦う。ヒーローにしかできない最高の見せ場だ。
「ああ、お前の事は信用ならんが行かざるを得ないようだ。今は街を守ることが先決だ!」
俺はその言葉を吐き捨てて正門へ向かった。
なんであいつ俺のヒーローネーム知ってんの?恥ずかし!
次回予告
門を突破し迫り来るジャアック戦闘員から必死に街を防衛するジョニパッチ。だが親玉の圧倒的力の前にジョニパッチは倒れてしまう。絶体絶命かと思われたその時、彼の前に現れたのはあの正義のテロリストだった。
第3話「不屈のジョニパッチ」
次回もじゃすてぃす!じゃすてぃす!
読んでいただきありがとうございます。今後のアホさにご期待ください