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新世紀革命テロリスト じゃすてぃす武田  作者: 一条人間
終章 ありがとう、そしてさようならこの想い
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恋心メモリアル

心機一転レッツゴー!

『君が死ぬまで私はずっとそばにいるよ。どんな形でも私が望んだ道だから……いつまでも君の事が好きだから、君の望んだ世界を……』


 その言葉を最後に彼女は息を引き取った。戻ることのない彼女の時はこの先俺の心にいつまでも刺さる楔であることなのは明白だった。


 彼女は彼にとって大切でかけがえない存在だったのだから。

 それが俺を狂わせた歯車の全ての枢軸だ。



 世界は残酷だった。世界戦争によって荒廃した地で生き残った人はその日を越すことに精一杯だった。泥水をすすり草木をかじり、飢えと渇きを紛らわせ朦朧とする意識を制しながら「いっそのこと死んでしまったら楽だろう」と死ぬ勇気もなくただ無為な日々を送っていた。


「ねぇ、君はもっとみんなが笑顔で暮らせる世界になってほしいと思わない?」


 不意に声をかけられた。ゴミ捨て場から成り立ったこのスラムでいる俺に声をかける人なんているはずがないのに、女性が俺に話しかけていた。

 透き通るようなブルーの瞳に温かみを感じさせる橙色の髪、純白のワンピースを着ている少女。その姿を見た時一瞬目の前にいるのが妄想であると錯覚してしまいそうなほど綺麗だった。


「……なったところで何も変わらない。俺が望むのは一日を確実に生き延びる術だ」


 少女からすぐに目を逸らし、少し考えてからその言葉に俺は辛辣な返答をした。

 世界平和とか未来の為とかそんなもの実際知った事ではない。必要なのは生きるための手段だ、妄言が現実になることなんて絶対にない。それはこの惨状が明確に示している。


「そっか一日を生きられなきゃ意味ないもんね……それで誰を焼いてるの?」

 彼女は不安そうな表情をするも、たき火を囲んで座る俺の隣に腰を置き質問してきた。


「昨日死んだ同居人」

「お母さん、だよね……君想いの素敵な人なんじゃないかな?」


 同居人。その言葉に怪訝そうな表情をして俺を見つめてきた、そうだこの人は同居人であって親ではない。確かに一緒に生活をしていたがそれは主従の関係である。


「それは偏見だと思う、あいつは生みの親でもなければ育ての親でもない」


 俺はそいつの死体を火にかけているところだった。昨日まで生きていた人物の姿は既に煤焦げた遺骨になりかけている。

 不慮の事故や病死と言う訳ではない。実際は麻薬に溺れたために抱えた多額の借金を返すために全ての臓器を売られ命さえも失ったのだ。彼にはもう関係のない話だが。


「そんな事はないんじゃないかな、育てくれたのは違いないと思うよ?」

「俺は孤児みなしごだ、今のやつもただの道具として買ったんだ」


 彼は人として扱われていなかった。売買される家畜と同じ扱いを受けて、今の引き取り手にも毎日過酷な労働をさせられ暴力を振るわれていたのだ。それほどにこの現実は歪な倫理が蔓延していた。


「……ごめん、何も知らなくて」

 小さく俯きながら彼女は謝った。彼の言った同居人であり生みの親でも育ての親でもないという意味を今理解したからだ。


「ならもう帰れ。ここはお前がいる場所じゃない」


 彼が冷徹な視線を刺しながら言葉を放つ。彼女は少し上の富裕層の人間だ、汚れてない綺麗な服と傷のない肌を見ればわかる。そんな人間が底辺の人間の溜まり場であるスラムにいるなど理解できないし、彼自身いてほしくない。


「そんなことないもん!私はただ君の気持が和らいだらなって思って!」

 冷たい言葉を言われ頭に血が上ったのか、彼女は声を荒げて立ち上がった。彼女は俺の何かを知っているわけではないだろうし、今こうして話している理由も心当たりがなかった。


「……はぁ、その気持ちは別の誰かに使ってやれ、俺には必要ない」

 どうしようもなく見当はずれの言葉にあきれてしまった。俺を飼っている人間の死に心を痛めているはずもないのに、それでも心配してくるおめでたい奴だ。しかも全くの赤の他人なのに。


「じゃ、じゃあこれ貰ってよ!せめてお母さんの魂が安らかにって」

「…………花か」


 そう言って彼女が差し出したのは一輪のリンドウだった。今のご時世、花自体手相当な金を支払わないといけない。富裕層であったとしてもそれは貧困者から見ての富裕層であって彼女は一般的にいう日々の暮らしが安定しているという程度の人間だろう。花を買う余裕など到底ないはずだが、花を渡した手が少しあかぎれているのを見て俺は何かを察した。

 

「う、うん……、それじゃあね!」

「あんさ……」


 花を渡し、早々に立ち去ろうとした彼女をなぜか俺は呼び止めた。理由はわからない、でもそのどこまでも純粋な心に少し感化されたのかもしれない。


「え?」

 不意をつかれたように気の抜けた声で返事をした彼女、しかしその声は少し上ずっていたようにも思えた。


「最初に言ってたこと、その世界を創りたいなら具体的に何をする?」

「そうだねー、みんなが一つの目標に向かっていければいいのかな?今はよくわかんないや」


 スラムでは見たこともない満面の笑みをこちらに見せながらそう告げると、そのまま振り返らずにその場を走り去っていった。


「……曖昧だな」

 彼女を見たら俺も少し頬が緩んだ、どこまでも夢を見て真っすぐな奴だなと。

 それにあんなにいい笑顔をする人を見たのは初めてだったから。



 夕暮れの紅がたき火を大きく見せる時間まで俺はぼんやりと空を眺めた。

 眺めながら考えていたのは今日現れたあの少女の事。突然現れた彼女には驚いたが、それ以上に彼女の為に何かしてあげたいと思ってしまった自分の心に驚いた。


 『みんなが笑顔でいられる世界』その言葉を実現したいと、無謀なことを考えてしまった自分はこの世界ではどうしようもなく愚かな人間なのかもしれない。


 でもそう思える俺はまだ、世界に絶望していないと再認識したのだった。


 それが俺と彼女との出会い。どうしようもなく夢を見て真っすぐに生きた彼女の物語の始まりだ。 


物語も終盤、この話どう収集つけるのか!

打ち切りラノベ学会の分析によれば、爆発オチが最有力らしい。それって前回やん

まぁ、私一条人間昨日より精神に多大なる革命を起こしましたので頑張って行こうかなと、数少ない読者様!今回も読んでいただきありがとうございます!

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