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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第3章 エスターシュタット戦争
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第95話 命拾い

 オウドとアオイは武器を構え、スラは俺を守ろうと前に出る。


「あの……外の方、聞こえますでしょうか?」

「何者だ!」

「失礼しました。私はバーベンベルクの使者です。話をしたいので扉を開けても宜しいでしょうか?」


 バーベンベルクの使者と名乗る者がドア越しで話し掛ける。

 アオイはゆっくりと扉を開け、そしてすぐさま使者の腕をガッチリ掴む。


「ではお前だけ出てこい!」

「え?ウワッ!?」


 使者はアオイによって腕を引っ張られ、建物から姿を表す。

 見た目はまるで新兵の様な戦場に慣れていないような、若いエルフである。

 彼は鬼のアオイとオウドを見て畏怖しているのか、身体をブルブルと震わせながら、怖がっている。

 オウドはその使者の姿勢に呆れたのか、彼に怒鳴りつける。


「貴様、話とは何だ!まさか我々に降伏を諭しに来たのではあるまいな?」


 使者はオウドの声にビクッと驚き、声を震わせながら話を始める。


「め、滅相も御座いません!わわ、我々は貴方達に対して降伏しようと考えております。我々は逐鹿連隊が裏切るとなれば我々には勝機がほぼ無いと考えております。どうか、我々の命の保障を約束してください………」


 使者はそう言いながら深々な頭を下げる。

 誇り高いエルフ民族はそこには居なかった。

 アオイは使者の言葉に悩みもせず、即座に彼の回答に返事をする。


「私にとって君達の降伏は正しい判断だ。だがそれはバーベンベルクを、貴国を裏切る行為だぞ?それで良いのか?」

「………は、はい、それは私も、この建物内に居る仲間も承知しております。ですが我々はもう獣人によってぐちゃぐちゃになったバーベンベルクに対して既に愛国心はありません。無駄に戦って命を投げ捨てるのなら我々は国家を裏切り、エステルライヒ側に付きたいと我々一同は考えております」


 その使者が発言すると、アオイはこちらの方に振り返る。


「カズト様がどうしたいか考えて下さい。相手の降伏は内戦であっても国際法に則り保護しますから、我々に命令をお願い致します」

「分かった。とりあえず逐鹿連隊の一部にこの城の内部に入ってもらう。アカネとオウドの二人に監視及び調査を任せよう」

「という訳だ。皇帝陛下は君達の降伏を受諾するそうだ。今すぐにその城からの退却を行え!」

「か、畏まりました、陛下の寛大なお言葉ありがとうございます」


 使者はすぐに城の中に戻り、アオイはポケットから小さな笛を取り出し、その笛を吹く。

 甲高く、まるで叫び声のような笛の音は周辺に鳴り響く。

 するとすぐに轟音と共に大地がグラグラと揺れ始める。

 音のする方を見ると逐鹿連隊の鹿人達がこちらの方に向かって走ってくる。


「何事ですか、アオイ様!?!」


 一人の鹿人がそう叫びながらこちらにやって来る。

 そして他の鹿人も後ろから走って来て、一斉に俺達の前に整列する。


「今から君達逐鹿連隊に指示を行う。とりあえず3つの小隊にしてもらい、アカネ小隊は城の中に居るエルフどもを連行し、我々の陣地に拘留せよ。オウド小隊は城内にある機密文書を探せ。そしてアオイ小隊は私の指示に従って前線に居るエルフどもに奇襲する」

「「「ハッ!了解であります!!」」」


 逐鹿連隊はアオイの指示を受け、全員が敬礼を行う。

 1500人の鹿人による一斉に敬礼はとても迫力がある。

 しかもアオイを信用していることがとても分かる感じがする。

 するとアオイはこちらの方に近づく。


「カズト様、スラ様。我々は今からエルフ達を後ろから奇襲をしますが、貴方達は大丈夫でしょうか?」

「………ああ、俺は大丈夫だよ。ダークエルフの士気を上げるんだったら国のリーダーが前に出るべきだろ?」


 一応、私も皇帝だ。

 皇帝が前線で演説や戦闘に参加………は出来ないかもしれないが、多少のお手伝いが出来れば問題ないだろう。

 俺がそう言った途端、アオイはアオイは唸りながら腕を組む。


「士気向上ですか………まあ、私はそういうの好きですけど………スラさんはどうします?」

「私は主様を守護しなければいけないので、付いて行きます」


 スラは俺の横に近付き、こちらを見る。

 そりゃまあ心配するよな。

 ほぼ戦闘経験どころか訓練すらしたことが無い人間が前線に行くのはおかしいんだもん………。

 でもこの戦争を見届けたいという考えも自分にはある。

 するとアオイはスラの返答に悩んだ表情をせず、普通に答える。


「そうですか、スラさんが来るなら安心です」


 ………確かに俺は不安かもしれないが、そこまで分かりやすく見せつけるか?

 俺も落ち込むよ?泣くよ?

 するとアオイはふと何を思ったのか、俺に対して質問をする。


「ところでヴァイスさんとマルクスさんはまだ来てないんですか?」


 …………………あ。

 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 すっかり忘れてたぁああああああああああ!!!!!


「どどどどうしよう、置いていったままのマルクスとヴァイスは怒ってるかもしれない………」


 アオイは満面の笑みでこちらを見ながら話す。


「大丈夫でしょう、だってヴァイスはカズト様にベッタリだったじゃないですか!」


 いやいやアオイ、お前絶対分かってないな!

 ヴァイスって怒ったらヤバイんだぞ!!


「とりあえず俺はどっかに隠れてるから、スラはヴァイスを呼んできてくれ」

「大丈夫なのですよ、私はもうここに来てるのですから」


 すると後ろから聞き馴染みのある声が聞こえる。

 こ、この声は………ま、まさか………。

 俺はゆっくりと後ろを振り返る。

 すると両腕を組みながら、満面の笑みを見せるヴァイスがそこに居た。


「ヴァ、ヴァイス!いつからそこに?」

「さっき来たのですよ………ところでさっき隠れるって言ってたのですが、まさかカズト様が私の存在を忘れていて怒っていると思っていないですよね?」


 な、なんで分かるんだよ!まさか最初っから聞いてたのか?

 あ、ヤバイ、ヴァイスの顔が笑顔だけど瞳に光が無い。

 ヤバイ、怒ってるやつだこれ。

 マジヤバイな、どうにかして機嫌を取らないと………。


「ち、違う違う、忘れるわけ無いじゃないか!こんな可愛いヴァイスを!」

「わ、私が可愛いのですか………?」

「…………………ん?」


 ん?あれ?

 ヴァイスの様子がおかしい………。

 とりあえず良い流れに乗ってるから、ヴァイスの言葉を肯定しよう。


「ああ勿論さ!だから後で迎えに行く予定だったよ!」


 俺がそう言うと、ヴァイスは頬を赤らめ、俺に背を向けると、まるでヘビの様に身体をクネクネとしている。


「もう、仕方ないですね!許してあげるのです」


 ………うーん、なんだかよく分からないが、とにかくヨシ!

 アオイとスラの目線が凄いけど、めんどくさくなりそうだから俺は気にしない気にしない。

 ………うん、気にしない!

 ところでヴァイスの監視を任せていたマルクスはどこに行ったんだ?

 アイツ、まさかこんな時に職務放棄したんじゃないよな?

 そう俺が考えていた時にマルクスはヴァイスから遅れてゆっくりとやって来た。

 マルクスは怯えた子犬の様な小さい声で俺を呼ぶ。


「ご、ご主人様ァ………」


 マルクスが近くまでやってくると彼はボロボロの姿で青ざめながら、尻尾の先を下に向け、耳もペタんとなっていた。


「ど、どうしたんだマルクス!一体何があったんだ!!敵にやられたのか!?」


 マルクスはこんなにボロボロなのにヴァイスが無傷………いやまさか、ヴァイスとは関係無いよね?

 すると青ざめて身体をブルブルと震わせているマルクスはゆっくりと口を開ける。


「ヴァイスさんはシルヴィより手に負えない人………もう二度とヴァイスさんと二人にはなりたくな………ありません」


 やっぱり、一体ヴァイスはマルクスに何したんだよ……… 。

 マジで怯えた子犬みたいになってるぞ………。

 アオイと再会した時に狙撃銃で発砲しながら俺を助けてくれたマルクスは一体何処へ?

 とりあえず、マルクスから何があったのかを聞くのは止そう………。

 なんか俺も怖い。


「私もカズト様と一緒に戦場に向かうのです!」

「俺もご主人様に付いて行く。こんな魔族と二人っきりはごめんだ………です」


 ヴァイスとマルクスは俺と一緒に行動したいとせがんでくる。

 ヴァイスは弱……くはないし、マルクスに関しては銃の使い方には馴れているから戦力にはなりそうだ。


「よし、じゃあ付いてきてくれ二人とも!」

「「はい!!」」


 二人はハッキリとした返事をしながらこちらを見る。

 それを見たアオイは頷くと、鞘から刀を抜き、刀を空高く振り上げる。


「諸君、我々はこれより賊軍を成敗する!諸君らは勝利の為に一層奮励努力せよ!突撃ィ!!」

「「「「オォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」


 アオイの発言で逐鹿連隊は雄叫びをする。

 彼らの雄叫びは周辺の空気を震わせ、俺の身体もビリビリとその振動を感じた。

 アオイは俺の方に近づき、声を掛ける。


「カズト様は我々と一緒に来ても構いませんが、出来る限り後方で指揮をお願いします。前線に出たら攻撃を受ける可能性がありますから」


 アオイはそう言うが、後方で指揮をしたら時間差で戦局が変わるかもしれない。

 出来れば最前線で指揮をしたい。


「アオイ、俺を心配してくれるのは有り難いが、やはり俺の目で確認して指揮をしたい。それにこれは俺の偏見だが後ろで命令をするのは偉そうな感じがして正直苦手だ。だから俺は前線で指揮しながら戦うよ!!」


 俺がそう言った途端、アオイは苦い顔をするが、諦めたのか溜め息を吐き、俺の肩を軽くポンと叩く。


「仕方ないですね分かりましたよ、ですが最終決定は私が決めるので悪しからず」

「いや、それの方が助かる。俺自身、戦闘経験や指揮に関しては皆無だからアオイのやり方を勉強させて頂きます、アオイ先生!」


 するとアオイは驚いた表情をしながら、同時に少し照れていた。


「先生か………悪くはないな!良いでしょう!私がカズト様の先生になりますよ!!」

「ありがとうございます、アオイ先生!」


 アオイは満面の笑みを浮かべながらこちらを見るが、同時にヴァイスはムスッとした表情でこちらをじっと見ている。

 おいヴァイス、ちょっと待てよ………。

 今のどこに怒る部分があるんだよ。

 アオイは上機嫌でグラテツ市街の地図を広げると、彼女は地図を指差し、これからの作戦を説明する。

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