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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第3章 エスターシュタット戦争
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第93話 叱責

「私を“盾”としてお使い下さいませ………」


 そう銃を渡して言うが、何故俺がスラを盾にしないといけないのか………?

 俺には全く理解が出来ない。


「た、“盾”ってどういう意味なんだ?スラ………」

「そのままの意味でございます。私を壁にして戦っても構いませんという意味です。私には命はありません。ですがカズト様には命があります。死ねばもう二度と蘇る事はない、ですので私を盾にーーー」

「それはお前の意思なのか?」


 俺はそう言うと、スラは即座に答える。


「い、いいえ、カズト様がそう望むと思いまして………」

「いい加減にしろよ、俺がそんな事を望んでいると思うのか?」


 俺は猛烈に激怒している。

 スラが死なない、命の無いガイノイドだからってこんな事を言うのは間違っている。

 しかも元からこういう顔かもしれないが、平然とした顔をしている。

 あの時にアオイに首を切られ、その後に反撃した行動が俺を守る為の行動だとしたら………俺はあの行動にはありがたいとは思う。

 だが、俺の命令で盾になり、自らを犠牲に俺を助けようとする精神はどうかしている。


「スラの首が取れても死なない身体なのは理解したが、お前が俺の“盾”になる必要は無いだろ」


 俺がそう罵声を浴びせるとスラはその俺の態度にピクリとも表情を変えない。


「カズト様の発言の理解が出来ません………。私はカール様から貴方を必死に守れと言われております」


 俺はそう言われた瞬間、俺はスラの両肩を強く掴む。


「だからって自分を犠牲にするような護衛無駄死にであり俺はその行動を認める訳にはいかない!必死に主人を守って最悪………最悪、主人を庇って命を失うのが護衛だ。とりあえず俺達はオウドを追いかけるがスラ自身を犠牲にするような防衛をしてみろ、俺はお前をどうにかして帝都に戻してやるからな!!」


 俺はそう言ってオウドを追いかけようとするが、スラはその場で立ち止まったままだった。

 スラは突然呟き始める。


「………そういえば、カール様も小さい頃に傷つかないでと言って泣いてました。でも私には理解できません。何故なら私がこれまで表情も怒りも哀しみも辛さも苦しみも、全ての感情をも捨てた。それなのに他人の“盾”として生きてきたこの私が否定されるのであれば、私にはもう人間として生きている意味が無い………生きる資格は私には無いんですッ!!」


 俺はスラの心の声がやっと聞けたと思った。

 そして同時に馬鹿馬鹿しい事をほざいているスラを叩きたくなる。

 そう思い俺は、軽くだがスラの頭を叩く。

 スラを叩くと、まるで金属のような固さではなく、人間のような柔らかい肌を持っている。

 スラは叩いた瞬間、こちらを見て言う。


「いきなり何をするんですか、カズト様………」

「馬鹿な発言をしているから、故障でもしたのかと思ってな、機械を軽く叩いたら直る時があるしな」

「………やはりカズト様も私を人間ではなく機械人形として見てるのですね」

「ああその通りだ。お前は人間ではない、ガイノイドのスラだ………」


 スラは俺の発言に顔を下に向ける。


「だがお前はガイノイドだろ?お前が俺の“盾”になる必要は無いんだ!!お前は“盾”ではない、だが人間でもない!お前はガイノイドのスラなんだよッ!!もっと自分に自身を持て、自己を持てよスラ!!」


 俺はそう叫ぶが、俺の声で敵が来てもそんなことは関係ない。

 この感情すら失って壊れたスラを直すのは俺しか居ない。


「つまり私を“平等”に扱うのではなく、他の者と“公平”に扱うのですね。私が機械人形だとしても乱暴な扱いはしないのですよね?」

「ああ、約束する」

「差別もしないんですよね?」

「当たり前だろ?俺は全種族を公平に扱うとハッキリと君に誓える」


 するとスラは俺の言葉を聞いて軽く頷くが、表情を一切変えず、突然オウドの方向へと走っていく。

 俺はスラの突然の行動に驚いたが、すぐにスラを追いかける。


「おい、待てよ!どうしたんだよ?いきなり走るなよ!」

「カズト様………」

「ん?どうした?俺がなんか変なことを言ったのか?」

「いえ、違います。私は目を覚ましました。貴方の言う通り、貴方様の“盾”にはもうなりませんが、カール様の指示には従って、精一杯貴方の望むような護衛を私は務めさせていただきます」

「ああ勿論だ、だからもう命を無駄にするような“盾”になるなんて事は言うなよ?」

「はい、承知いたしました」


 スラはそう言いながら頭を下げる。

 俺はスラの行動を見て冷静になり、スラの頭を叩いた事に謝罪する。


「………あとさ、スラ。さっき叩いてすまなかった。やっぱり女性を叩くのは自分の道理に反しているし、自分にも罪悪感がある」

「大丈夫ですよ、カズト様のお陰で目が覚めましたから」


 スラの顔をよく見ると少し微笑んでるように見えた。

 するとスラは突然立ち止まり、こちらの方を見る。


「あの、カズト様?」

「ん?どうしたんだ?」

「カズト様を『マスター』と呼んでも構わないでしょうか?」

「ああ、問題は無いけどカールがお前の、マスター?じゃないのか?」

「いえ、カール様が私の恩人なだけであり、私はカズト様を『マスター』とお呼びしたいと思っております」

「うーん、まあスラがそう言うならば問題は無いけど………なんか照れるなぁ!」

「ありがとうございます、それでは少しお待ち下さいませ。マスター」


 するとスラは突然頭を押さえながら宮殿の方に無言で顔を向ける。

 俺はそのスラの行動に不安になり、心配する。


「どうした?頭痛か?まさか、俺が殴ったから………?」

「あ、いえ、敵の位置を確認しているところです」


 そうスラが言い、俺はスラの顔を見る。

 するとルビーのような赤目が変色し、白目の部分が黒くなり、赤い目は鮮やかなエメラルドのような緑色の目をしている。


「ん?な、何か見えるのか?」

「はい、ですが私のは旧型で精度が悪いので約0.06

 ミレ(約100メートル)しか見えませんので、屋敷辺りの敵兵は見えると思います……………」


 すごいな、スラって様々な機能があるんだな。

 まさか手からロケットパンチとか指からレーザービームとか………いや、出るわけないよな?

 するとスラからピピッと電子音が聴こえる。


「索敵完了致しました、では向かいましょう」

「おう!」


 するとスラはそのまま目の色は変えず、手を頭から離して走り始める。

 俺もスラを後ろから追いかける。

 突然、城の方から金切り声が聞こえ始める。

 この声はオウド声ではない………一体誰だ??

 そう思いながら入り口の前に着くと、ギラギラと僅かな月光で輝く刀を持ったオウドを目にする。

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