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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第3章 エスターシュタット戦争
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第92話 人格放棄

~ブリタニア百科事典⑧~ 

 【ボヘミア王国】


 中央ユーラに位置する立憲君主制国家。

 ゲルマニア帝国の右側、エステルライヒ帝国の北側に位置する国家。

 主要民族はアンドロイドとガイノイドと呼ばれるヒューマンにそっくりな機械人形を中心としたロボタ族で、国家元首は未だに不明である。

 人口はおよそ1004万人で、首都はプラーガ。

 人形の国と呼ばれている。

 政治体制は立憲君主制であるが、議会の力が強く国王の権限は少ない。

 ゲルマニア帝国と南に存在したノリクム帝国の影響もあってか、文化・経済・政治・技術の中心地であり、ユーラ大陸三大都市と呼ばれた時代もある。

 産業は特に科学技術の発達はとても早く、最早オーパーツ国家とも言われているが、技術や情報の隠蔽を行っているため、未だに謎多き国家である。

 この科学技術はニホンジンなどの異世界人からもたらされたと言われ、国王は異世界人ではないかと言われている。

 ただ情報の隠蔽は行われているが、多くの観光客や留学生を受け入れており、首都の景色は『千塔のプラーガ』と言われている程の絶景がある。  

 この国ではピルスナーと呼ばれるラガーの様なビールが水よりよく飲まれており、そのピルスナーを氷や冷蔵庫などで冷やした「ナマ」もしくは「トリアエズナマ」という飲み方が人気である。

 この国の経済はヴァルトシュタイン財閥によって支配されており、ヴァルトシュタイン財閥はユーラ最大の財閥として知られる。

 世界的な工業国であるが、農業や資源に関しては輸入に頼り、ゲルマニアから多くの食糧や石油を多く輸入されている。

 文学と音楽も著名な人を輩出しており、エステルライヒと並び文化強国としても知られる。

 最初期はゲルマニアの保護国として成立していたが、宗教戦争によってノリクム帝国の一地方に組まれたが、魔族との戦いでノリクム帝国が崩壊し、完全なる独立を果たした。

 だが度重なる戦争による周辺国家からの支配はボヘミア王国の弱体化を受けており、ゲルマニアや東にある列強、ノヴゴロド帝国への脅威に協力体制を取る為にガリアやエステルライヒへの連合や同盟を検討している。

 ボヘミア王国の右側には旧ゴーレムの国のモラヴィア自治州が存在するが、元はこの国々は一つであったが、意見の違いで関係が悪化し、分裂した。

 モラヴィアはその後、南部のパンノニア王国に侵略され、消滅し、モラヴィア自治州として残っている。

 私は機械人形のロボタ族が多く住む国、ボヘミア王国の一級機械貴族の一体として誕生した。

 エルフの国、ゲルマニア帝国の保護下にあり、同時に周辺国から技術、芸術、美術、音楽など、様々な文化的な物がゲルマニアからやって来て、豊かな国家として存在していた。

 私は『人間らしさ』を追求した機械人形、ガイノイドの一体として誕生した。

 私や私以外の多くのロボタ族は『人間らしさ』を追求し、表情、人間らしい仕草や動き、癖などが導入され、五百年前の私が生まれた頃にはもうほぼ見た目では違いが判らないほどのアンドロイドが誕生していた。

 だが同じ頃に違う宗教の神同士による対立、そして戦争が発生した。

 我が国でもその神々の対立の影響を受け、エルフ族側に参加するが、我が国は南部にある後のヒューマンの国であるエトルリア王国に併合される神聖ヴェネティア帝国に五年間占領された。

 だがその短い五年間は我々にとっては地獄の五年間となる。


「貴様らは人ならざる者である!貴様らは家畜であり、気味の悪い機械人形だ!!」


 ヒューマンによる占領後、首都の中央広場で神聖ヴェネティア帝国からやって来たオリュンポス教の大司教がそう宣言した途端、我々は『人間』では無くなった。

 アンドロイドは最前線の盾として武器を持たせず、ゆっくりと歩かせ、壁の役割を果たす。

 街ではヒューマンのストレスの捌け口とし、老若男女関係無く、ロボタ族に壊れるまで殴られ蹴られる。

 特にガイノイドは街の路地裏でも広場のど真ん中でも四六時中、性処理の道具として犯され壊された。

 我々ロボタ族はその二年間で戦争以上の多くの犠牲を出した。

 私もその犠牲者であり、故障が原因で表情を失い気味悪がられた。

 だが私は戦争での戦歴からヒューマンの一般兵と同じ階級に就くが、ほぼ奴隷のような扱いを受けた。

 罵られ、殴られ、蹴られ、犯され、蔑まれ、睨まれ、そして撃たれる。

 ボロボロの身体で表情もなく、ヒューマンに嫌われ、後にとあるニホンジンに拾われた。

 転移してきたというニホンジンはとても優しく、不死身の私には必要なかったが、私が傷つくのを嫌ったのか防具のプレゼントを貰ったり、今まで訪れた事の無い様々な素敵な場所に連れてってくれた。

 私は久しぶりに忘れていた『人間らしい』感情の『恋』を手に入れていた。

 そうだ、私はそのニホンジンに恋をした、していたんだ。

 そう私は思っていた………。


「おいスラ!」

「はい主様!!」

「お前、俺の“盾”になれ」


 戦闘中に敵に囲まれていた時に、彼は突然私にそう叫んだ。

 私はその言葉に理解できず、単なる聞き間違いだとその時は思った。


「“盾”って私が貴方を支援するという話ですよね………?」


 私は思わず彼に聞き質す。

 すると彼は私の発言に嘲笑う。


「ハァ?お前はバカなのか?何でお前を人間扱いにしないといけないんだよ、ロボットのクセに!」

「ロ、ロボット………?」

「あー、お前らはロボットを知らないのか、ただの機械人形という意味だよ。機械人形と旅が出来るのはロマンが有ったが、やっぱり命は惜しいからな。死にたくないし、怪我もしたくないからお前に“盾”になれって話だよ」

「そ、そんな………では私にこんな素敵な防具をプレゼントしてくれたのは………」

「あ?あー、“盾”の役割を果たすために防具を着けさせて多少の傷から防がせようとしたんだよ。後で何度も盾として使えるようにね……」

「わ、私だけに色々な場所に連れて行ってくれたのは………!?」

「そんなの決まってるだろ?ただの護衛だよ、最悪襲われた時にお前を“盾”か囮として使おうと思ってな」

「そ、そんな………」


 私はその場に膝から崩れ落ちた。

 すると彼は崩れ落ちる私を見て驚く。


「おい、何でお前がショック受けてるんだよ?………まさか、お前は俺に恋していたのか!?無いわ~、ロボットに恋するとか無いわ。既に俺には好きなヤツが居るし、機械の癖にお前には何の感情も感じないわ!」


 彼はそう言って腹を抱えながら笑っていた。

 私には笑えない冗談だ。

 本気で恋をしていたんだ!

 それなのにこの男は私の想いを踏みにじった!!

 ………私は機械人形だ。

 何故ならこんなに悲しい想いで胸が苦しいのに涙一つ流す事が出来ないなんて………

 その時に内部から私は何か壊れるような感じがした。


「とりあえずお前を“盾”として使わせてくれよな!」


 そう言って彼は私の後ろから襟を掴み、持ち上げ、盾として利用した。

 私はその後の記憶が無い。

 多分、その男との出来事が衝撃的過ぎて、ショートしたのだろう。

 次に目を覚ましたのは廃墟となった街並みとボロボロになった身体、そして目の前に居るダークエルフの子供だ。

 彼は私に対して「大丈夫?」と優しく、可愛らしい声を掛け、手を差し伸べていた。

 だが私はもうあの男に棄てられ、『人間らしさ』としての尊厳を失っていた。

 私はその時に彼の所有物として生きようと決めた。

 この子と出会ってすぐに彼を敵から守った恩人としての扱いだそうだ。

 この子供の名前はカールという名前だそうだ。

 彼は人を傷つける事が嫌いで、ダークエルフでは珍しい自然を愛する者だった。

 周りは私を苛めるが、彼だけは私を苛めることは無かった。

 だが、私はそんな彼を信用することが出来なかった。

 彼もあのニホンジンの男の様な扱いをする可能性もあると………

 この戦いの後に私の国はヒューマンを追い出し、南のダークエルフの国、ノリクム帝国に解放され、戦争も終了した。

 同時に併合されノリクム帝国の一部となったが、再び『人間らしい』生活を手に入れたそうだ。

 だが私は最初の二百年は無言でこのダークエルフの子供の護衛を任された。


 彼と出会ってから二百年後には周りの人に指示や簡単な業務連絡、会話を行うことができ、会議や魔族との戦いでの司令官などに参加した。

 同じ頃、魔族との戦いでノリクム帝国は弱体化しアンナ女王による治世のノリクム連邦が成立し、ボヘミア王国は再び独立し、カール様は「帰国しないのか?」と答えたが、私は帰国したら一体どんな扱いを国民からされるのか怖くて堪らなかった。


 そしてそこから二百年後、時々私は差別や偏見によってバカにされるが、周りの人に次第に認められるようになった。

 ーーーだが私は神に嫌われているのだろう。

 私の目の前に、あの人では無いがニホンジンに再び遭遇した………。

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