表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第3章 エスターシュタット戦争
84/105

第84話 取引

 テントに入ると、パールや前回の作戦会議に居た人達が座っていたが、テント内は重苦しい空気が充満している。


「カズト様はこちらにお座り下さい。」


 スラは俺を見た途端、椅子を引く。


「あ、ありがとう、スラ」


 俺はそう言ってそのスラが引いた椅子に着席する。

 俺が席に座るとマルクスとヴァイスが俺の両脇に来て、その場で立っている。

 ………よく見たら、マルクスの身長がいつの間にかヴァイスを追い抜かしそうになっている。

 ホントに急速に成長してるんだなと俺は思った瞬間、スラが作戦会議の議題について話し始める。


「諸君!今回、バーベンベルクは動きを見せております。先程捕まえた捕虜は時計塔のある丘でカズト様を拉致しようとしていました!」


 ん?時計塔??

 確か俺が丘を見た時は時計塔なんて無かったはず………。


「なあスラ、時計塔なんてあんな丘にあったのか?」

「はい、あそこには時計塔があって、その丘からグラテツの街並みを一望出来る場所で有名です。だから散歩であちらに向かったのでしょう?」

「お、おう………」


 時計塔は見当たらなかったけど、確かに景色は綺麗だったのは確かだ。

 すると作戦会議に居た大半のダークエルフは大声で笑い始める。


「時計塔のあるあの丘は我が領地のはずだが、敵がただ間違えて入っただけだろ?」

「それホントならマジウケル!川を越えて丘を上がるなんて、奴等もおっちょこちょいだな!」


 するとパールが腕を組みながら、少し考える表情をする。


「とりあえず、アイツらを尋問しなければ話は進まない。今回捕らえた鬼族の女は調べた所によるとフーサンの陸軍大佐だそうだ」


 パールの発言にテント内に居たダークエルフは笑うのを止め、沈黙する。


「り、陸軍大佐って、完全に相手の大将では!?」

「大将が捕まったのならもうほとんど我々の勝ちではないか!よくやったスラ!」

「いえ、私はカズト様の護衛を任されただけですから………とりあえず私は例の陸軍大佐を連れて来ます」


 スラがそう言った途端、ダークエルフの皆が青ざめた表情をし始める。

 一部のダークエルフはその発言に震えている。


「お、おい、まさかあの鬼族を、オーガを連れてくるのか?」

「ヤバイって、まさか俺達襲われるんじゃね?」

「ま、まあ、女の子に襲われるのも悪くないか……」


 まさかコイツらも鬼族をオーガだと勘違いしてるのか?

 そういえばあの時オリヴィアがアオイと初めて会った時も勘違いしてたな………確か臭い?だっけ。

 そんなにアオイ、もしくは鬼族は強烈にクサいのか………。


「なあ、質問なんだが何でオーガの臭いとか分かるの?」


 すると後ろから伝令のヴィクトルが説明する。


「百年前の短い間、ゲルマニア帝国と我が国は、昔はエルフ民族が大きな連邦を形成していた頃、連邦内の軍隊は近代的な軍隊を目指す為に早急に行う必要な事が魔族との戦いで何度もオーガから侵略と虐殺を受けていた事に対する対処であった。それがオーガの臭いを記憶することです」


 でも臭いを記憶したとしてもまだ見たこと無いから分からないが、多分オーガと鬼族は見た目でも違うと分かるし、意味が無いだろ。


「だけど記憶する意味があるのか?オーガって大きな種族なんだし鬼と見分けがつかなくなるのは意味無いのでは?」


 俺がそう言うと、ヴィクトルはコクッと軽く頷く。


「その通り、だから最近の徴兵された兵士はオーガの臭いを知らない、当然ボクも知りません。だが、ゲルマニア帝国や我が国の衛兵や一部の兵士には未だにオーガの臭いを覚える訓練を行っているそうです」

「………なるほどな、丁寧な説明ありがとうヴィクトル!」

「ニホンジンからのお礼は要りません、ボクはまだ他の仕事がありますので、これにて失礼します」


 そう言って敬礼し、ヴィクトルはこのテントから静かに出る。

 なるほど、だからあの時に元近衛兵のオリヴィアはアオイに強く反応したのか………。

 ヴィクトルがテントから出ると同時にテントの外から兵士がやって来て、すぐに敬礼する。


「失礼します!スラ様、捕虜のアオイという鬼を連れて来ました」

「御苦労様、彼女をこの中に案内したまえ」

「はっ!」


 兵士はすぐにまたテントを出ると思いきや、すぐさま現れる。

 するとテントの外にまで伸びた縄を持ってきて、それを引っ張ると、縄に繋がれた金属製の手錠を着けたアオイがテントに現れる。

 するとその場に居た兵士や将官は驚き、どよめいている。


「スラ!あーし、捕虜がここに来るなんて聞いてないわよ!」

「そうだそうだ!こんな所に連れてくるな!あまりにも危険過ぎる!!」


 周りのざわめきにスラは冷静に答える。


「安心してください皆様、この捕虜が逃げたり、暴れたりしたら私、スラが責任を取ります。取り敢えずこの女から何かしらの情報を聞き取りましょう………」


 するとアオイはスラの言葉を聞いて、不気味な笑みを浮かべる。


「聞き取り……ですか………そんなに私から聞き取りたいのなら取引しましょう?」


 アオイの発言にスラが反応する。


「取引とは、一体どんな取引ですか?」

「ふふふ、それなら私の手錠を外して下さい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ