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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第67話 魔科学の鎧

「………何か用なのか?名前はココロナシだったっけ?」


 すると彼女は僅かだが不満気な表情を見せ、頭を横に振って否定する。


「いえ、ワタクシの名前はスラと申します。陛下」

「そうなんだ!名前を間違えてゴメンね」

「いえ、私こそ名乗っておりませんでしたので陛下が謝る必要はありません」


 何だろう?ヴァイスとかシルヴィに慣れたからか、彼女の表情の無さに少し不気味に感じる。

 とりあえず彼女から離れた方が良いのかもしれないな……。


「じ、じゃあ俺は忙しいからこれにて失礼するよ……」

 

 俺はそう言ってその場から去ると、スラは何故か後ろからゆっくりと近づいてくる。


 後ろを付いてくるのもそうだが、不気味というか表情筋すら死んでいて怖すぎる。

 本当に何なんだ、コイツは?

 

「あの……スラさん?何か聞きたい事があるんですか?」

「陛下は私に敬語を使わなくて結構です……それに…………」


 するとスラは近づくと、耳元で小声で話し始める。


「ワタクシは陛下、カズト様のお側付きであり、貴方の護衛をセバスさんから任されました」

「セバスは?」

「セバスさんはただ今お忙しく、セバスさんの不在中の護衛はワタクシに一任されております」


 えぇ、メンドクセェ……でも護衛として仕事してくれてるから無闇に離れろとは言えないなぁ。

 仕方ないからお願いするかぁ……。


「………まあ分かったよ、じゃあ付いてきてよ、スラさん」

「畏まりました、陛下」


 スラはそう言って、俺の後ろを静かに付いてきた。

 するとヴァイスがこちらに向かって走ってきた。


「カズト様ァ!お話し…終わったのですか?」

「うん、無事に終わったよ。あと廊下を走るな、危ないぞ?」

「はい、すみませんなのです、あと私のせいでこんな事になって………」


 ヴァイスはそう言った途端、ションボリと悲しい表情をする。

 俺はそれを見て、ヴァイスの頭を撫でて慰めようとする。


「俺は別に大丈夫だから、もう気にするな?」

「あ、ありがとうなのです………ところで後ろの方は誰なのですか?」


 ヴァイスは警戒しながら俺の後ろに隠れる。


「後ろの方って……ああスラの事か!この人はセバスが不在の時の俺の護衛をしてくれる人だよ」


 するとスラはヴァイスに軽くお辞儀をし、先に挨拶をする。


「ドブリーデン(こんにちは)、ワタクシの名前はスラと申します。カズト様の護衛を任されましたので以後お見知りおきを」

「………ヴァイスなのです、よろしくなのです。」


 スラは終始笑顔が無く、衛兵からココロナシとか呼ばれるのも何となく分かった。

 するとスラはこちらを見る。


「それではカズト様、話は変わりますが戦地へと赴きましょう」


 ん?突然過ぎじゃないか、それはスラ。

 俺とか他の人も用意が出来てないんじゃないか?


「いくらなんでも早すぎじゃないか?スラ。」

「いえ、計算して朝に到着する場合、これ位の時間で出発が正解です。まあ、ワタクシがこんな事を考えなくてもセバスさんが既に用意しているでしょうが……」


 なるほど、今セバスが居ないのはそういう事だったのか………。


「それではまずは軍服姿に着替えましょう、コチラを取り付けますね」


 するとスラは金属製のバッジを俺の右胸に付ける。


「ん?ナニこれ?」

「我が国最先端の魔科学の装備です。………イニティアーレ(動け)!」


 スラがそう叫んだ途端、バッジはいきなり輝き始め、バッジから金属の小さな板がカタカタ音を立てながら出てくる。

 その板が首や手首、足首まで広がり、広がり終えると板と板同士がくっつき始め、そして身体にペタリと吸い付く。

 すると俺は薄い紺色の金属製の軍服姿に変身していた。


「どうですか?」

「す、すげぇー!!何だこれ!!!」

「薄い鎧みたいな物です。遠くから撃たれた拳銃などの銃弾はこれで跳ね返すことができます。脱ぎたい時はバッジを外して、着たい時はまたバッジを着ければ、既にカズト様の体に合わせていますのですぐに着用できますよ」


 へぇー、これは凄い技術だな。

 というかメチャクチャ近未来じゃないか!

 しかも弾を跳ね返す程の力があるって言ってるのに軽いし、しかも関節部分はちゃんと曲げれる。


「前線の兵士はこんな頑丈なものを着用してるのか?」


 俺がそう言うと、何故かスラは目を点にする。

 なんか変な事を言ったのか?


「………スラ?」

「あ、いえ。こちらは私の国以外では流通が少なく、王族などしか持てないはずだと思います。」

「成る程ね、それにしてもこんな貴重な物を俺にくれるなんて本当にありがとう!」


 俺は笑顔でそう言うと、スラは表情一つ変えず、淡々と答えた。


「いえ、大したことはしておりません……それはそうと準備は出来ているはずなので参りましょう、陛下。」


 スラはそそくさと宮殿の出口に向かう。

 ヴァイスは不機嫌な顔をしながら、俺に話しかけてくる。


「なんだがあの人、無愛想な人ですね」

「オイそんな事を口に出して言うな、ヴァイス。気にしてるかもしれないだろ?」


 ………今から戦場に行くのか。

 五日ぶりに向かうんだよな、命の危険があるからな、心臓が激しく動悸し、胸が苦しくなる。

 ………フゥウウウウ、良し!

 俺は呼吸を整え、そして歩き始めた。


「そういえば今から戦場に向かうけど、ヴァイスは勿論、宮殿に残るよね?」


 俺がそう言った途端、ヴァイスは悲しそうな顔をしてこちらを見る。


「また私を置いてーーー」

「じょ、冗談だよ!置いてかねぇよ!分かった!付いてきてくれヴァイス!!」

「はいなのです!」


 あっぶねっ!

 忘れてた、俺と離れる時間が長すぎると何故かヤンデレ化するのを。

 まあ、ヴァイス自体は力も強いし、別に連れて行っても大丈夫だろ。

 ヴァイスとの一件が終わると、次はシルヴィがどこで聞いていたのか行きたいと要求してくる。


「カズト兄、私も戦場に行きたい!」


 ヴァイスは連れていかないとヤンデレ化するし、それに力も強いから問題は無いが、戦場にか弱く………はないけど、幼いシルヴィを連れて行くのは駄目な感じかする。


「シルヴィ、ヴァイスは連れて行くのでも不安なのにお前は無理だ。まだ幼すぎる」

「イヤだイヤだイヤだイヤだああああ!!」

「駄目なものは駄目なんだ!………仕方無い、マルクス!!」


 俺がそう叫ぶと、奥からマルクスが走ってくる。


「どうしました、兄さ……ご主人様?」


 マルクスはそう言うと、俺を含めてみんなが沈黙した。


「今、俺を兄さんって言おうとしたよね?」

「言おうとしてません。」

「いやいや、言おうとしただろ?全く、マルクスは本当にかわーーー」


 俺が「可愛い」と言おうとしたらマルクスは笑みを浮かべながら俺を睨みつける。


「……どうしたんですかご主人様?早く続きを言って下さい。さあ!」

「いえ、大丈夫…………」


 次は殺気まで出てきた為、俺はそこで黙った。


「ま、まあ良いだろ。じゃあマルクス、シルヴィをちゃんと止めておけよ」


 俺がそう言うと、マルクスは舌打ちをすると、すぐに胸を張りながら返す。


「行ってらっしゃいませご主人様、シルヴィは私に任せて下さい!」

「行かないで!カズト兄!!」

「シルヴィ、絶対に帰って来るからここで待っててくれ」

 

  俺はシルヴィにそう言うが、シルヴィはムスッと頬を膨らませながら不満を表していた。


「ヴァイスも疲れてたりしたら無理するなよ」

「大丈夫なのです!カズト様が地の果てまでも付いていくのです!!」


 ヴァイスは可愛く小さなガッツポーズをして、元気さをアピールする。

 そうして俺とヴァイスは『王宮』を出る。

『王宮』を出るとそこには馬に跨がっているセバスがそこに居た。

 馬には旗が両側の腹に国章の『双頭の鷲』が描かれている。


「カズト様、ガソリンが不足しているそうなのでカール様が乗ってきた車を用意出来ませんでした。なので私の馬を除いて1頭しか用意していませんのでそこに居るメイドさんは私の後ろに座って下さい」

 

 セバスはそう言うとヴァイスは不満そうに彼を見ながら言う。


「えー、カズト様の後ろが良い!」

「ごめんヴァイス、今はセバスの指示に従ってくれ」

「………はーい、分かったなのです」


 そうヴァイスが不満そうに言うと、彼女はセバスの後ろに座った。


 クソッ、セバスが羨ましい………。

 まあ、メイドを後ろに乗せるのは皇帝として威厳が無いからと、あと俺は馬に乗り慣れていないからな、ホントに残念だ。


 俺は馬に跨がり、そして軽く、短めに手綱の使い方や馬の操縦方法を教えてもらい、そして馬を歩かせた。


 さあ、一体前線がどうなってるのか見に行くぞ!

 そう俺は思いながら数日ぶりにノリクム連邦、改めエステルライヒ帝国の首都ウィンドボナから離れていった。

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