第66話 ココロナシ
昼食が終わると、俺は自分の部屋にトボトボと向かう。
それにしても金持ちの料理って結構ルールがあるんだな………。
料理の量も少ないし、スープも冷めてるし、フォークやナイフ、スプーンの数が多いから最初にどれ使えば良いか分からんし、一番恥ずかしかったのはフィンガーボールを知らなくて、そのまま中の水を飲んでしまって周りをドン引きさせてしまった………。
カールは苦笑いしながら、「カズトは戦地から帰ったらテーブルマナーも学ぼうか。」とか言われたし。
何故かマルクスもシルヴィも普通に理解してフィンガーボールで手を洗っていたし。
恥ずっ!俺、マジで恥ずかしっ!!
まあ、冷めてるのは毒味とかあるからテーブルまでに来るのに時間がかかるのも仕方ないし、それでもまあ味は普通に良かったけど、別に宮殿の料理は食べたくないかな、うん。
今思えば、異世界に転移した奴等はどうやってこの関門を突破したのか、気になるな………。
ああ、あのカツ丼、もとい『シュニッツェルドゥーン』が食べたいよぉおおおおおおおっ!
まあ今は無理かも知れないが………。
そういえばアンナやラウラはどうしてるんだろうか?
彼女たちの連絡が途絶えたままだからな、まさかあの二人、敵とかに襲われたりしていないよな?
そんな事を考えながら俺は先程食事をした大広間から出ていき、俺はヴァイスが居る部屋に向かう。
俺の部屋に着き、扉を開けると、ヴァイスはメイド服を脱ぎ、下着姿になっていた。
可愛らしい下着の中には少しふっくらとした胸。
どこからあの怪力が出てくるのかと思うくらいの華奢な身体に可愛らしいお尻が見えた。
って!そんな事を分析をするんじゃない俺!!
ただの変態じゃないか、俺!!
「ごごごご、ごめんヴァイス!!すぐに外に出るから!」
そう言いながら俺は部屋から出ていき、扉を閉めようとすると、ヴァイスは詰め寄って来て扉を閉めるのを防ぐ。
「ま、待って下さいなのですカズト様、この下着可愛いですよね?」
「待て!無闇に下着を見せるな!!お前は痴女なのか、ヴァイス!?」
俺がそう言うとヴァイスはムスッとした不機嫌な顔でこちらを
「失礼ですね!痴女じゃないですよ。下着を見せる事なんて………か、カズト様だけなのですよ」
「そ、そうなのか?」
「は、はいなのです、特にカズト様は公衆の面前で裸にさせた事もあるのですから………」
ヴァイスはそう言いながら顔を真っ赤にして両手で顔を隠す。
………待って、待って待って待って待って!!全然記憶にないんだけど、いつ公衆の面前で裸なんかにした………わぁああああああってあれか!
ヘルヴェティアで俺がヴァイスの身体を洗ってあげた時か!!
だが人前では裸にしてないし、隠してたはずだが事実ではある。
「あ、あの時は申し訳無かった、ヴァイス.........スマン!」
「良いのです、私はそんなに気にしてないのです………それより私の下着を見て欲しいのです」
「………仕方無い、見て欲しいんだったら………見るよ。でも俺はファッションには疎いからな!」
「ハイなのです!」
俺はそう言いながらゆっくりと部屋に入る。
ヴァイス見て欲しいって言ってるんだ、それなら仕方ないから俺が見てあげよう。
すると、ヴァイスは見てほしいと言いつつも恥ずかしそうに両手を後ろにモジモジとしていた。
そんなに恥ずかしいんだったら見せなくても良いのに………。
上下ともに色は淡いピンク色の下着でデザインもとても可愛らしイタタタタタタ、痛いッ!
誰かが俺のケツを強く歯で噛んだような痛みがあるぅううううう!
俺は咄嗟に振り向き、誰が噛んでいるのか確かめる。
するとそこに居たのはシルヴィだった。
シルヴィは俺のケツを噛みながらこちらを睨みつけながら怒っている。
「カズト兄と遊ぼうと思って、カズト兄の部屋に来たのに………カズト兄がそこまでのヘンタイだとは思わなかったよ!」
「ち、違うんだ!話を聞いてくれ!!」
「言いわけは十分だ!ガブッ!!」
そう言ってシルヴィは再び、ガブリと腕に噛み付く。
俺はその噛みつかれた痛みに耐えられず叫んでしまった。
「イテェエエエエエエエエエエエエ!!!」
広大な宮殿内で俺の痛々しい叫び声が響いている.........。
ーーー数十分程経ち、俺とヴァイスはシルヴィを話を聞いてくれるように必死に止める。
衛兵も駆けつけたが、暴れるシルヴィをどうにかして止めようとしたが、「問題ない」とか言って、衛兵はその場を去っていった。
ふざけるなよ、あいつら......絶対ぶっ殺すッ!
俺は何とかシルヴィを止め、ヴァイスがシルヴィに噛まれるのどうにかして守ったか、俺の身体中にはシルヴィの歯形がびっしりと付いていた。
その後は皇帝直属の医者に噛まれた腕見せて、治療した。
「ご主人様、うちの妹が失礼な事をして申し訳ありません!ほらシルヴィ頭を下げるんだよ」
「フン、私悪くないもん」
「シルヴィ!!.........妹はあとで怒っておきますので何卒許してやってください......お願いします!」
マルクスは必死に俺に対して頭を下げていた。
シルヴィは反省の色を示さなかったけど………。
まあ、全身噛み跡だらけだが、大した怪我でもないし、それにヴァイスの下着姿を見てこうなったんだから俺の責任もあるし。
「大した怪我じゃないから大丈夫さ、別に気にしないでくれ」
「こ、ご主人様からの寛大なお言葉、ありがとうございます!」
まあマルクスが頭を下げて、シルヴィに対するお咎め無しを懇願してたんだ、それぐらい別に問題は無い。
まあ、シルヴィは反省してないみたいだが………。
それにしても異世界に来たら身体が強化されるのは本当なんだな、痛みは変わらないが.........。
とりあえずシルヴィとマルクスの事はまあ置いておいて。
「あの現場で俺を無視した衛兵には給料カットだな。」
「ハアアアアアア!?それは横暴だ!!ニホンジンの分際で!」
一人の衛兵がそう叫ぶと、他の衛兵達が叫ぶ。
「獣人共に甘過ぎる!我々ダークエルフにも甘くしろ!」
「そうだそうだ!ニホンジンのクセに偉そうな態度を―――」
俺はその発言に対して近くにあったテーブルに右腕を振り下ろして強く叩きつける。
「今の俺は日本人ではない!君達の皇帝だ、つまりお前らと同じダークエルフだ。それなら皇帝の命を守るのが衛兵だろ?」
俺がそう怒ると衛兵達は不満そうな顔をしながら黙り込む。
すると後ろに居た女性の衛兵が手を上げる。
「意見、よろしいでしょうか?」
「良いだろう......なんだ?」
「我々はその現場を見て、ただ単にカズト様とシルヴィがじゃれあっている可能性があったと思い、判断しました。ですので我々には過失はありません」
その衛兵はまっすぐこちらを見つめる。
笑みは無く、仏頂面でジト目でこちらを見つめる。
長髪で髪の色と目の色は赤毛だし、皮膚の色も白に近い色白である。
見た目はダークエルフじゃないのに王宮で衛兵として働いてるのか。
「『判断した』というのはどういう事だ?」
「その言葉の通り、シルヴィさんに危険性が無かったという事です。本当に獣人による噛み切るような攻撃であればカズト様の腕はもうシルヴィの胃の中でしょう。」
マジかよ………なんだそりゃ怖すぎるだろ。
うーん、まあそれが事実ならそう判断されたのなら致し方ない………。
「………そうか、わかった、彼女の意見を尊重してお前らの減給は無しにする。今考えてみれば別に出血してないし大した怪我ではないからな。」
俺がそう言った途端、衛兵達が安堵した表情をして喜びあった。
「マジで!?ああ良かった!内戦で生活が大分困窮してだからなぁー」
「ありがとうよ、ココロナシ!」
「お前にも心が合ったんだな、ココロナシ」
この女の子は『ココロナシ』っていう名前なのか?
………ホントに異世界っぽくて変な名前だな。
すると他の衛兵は笑いながら笑顔で去っていく中、その『ココロナシ』だけはその場に残った。




