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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第62話 瓶詰めの飴

 すると、先程の案内していた女性のダークエルフが俺に気が付いたのか近くに駆け寄る。


「お疲れ様です陛下。話し合いが思ったより早かったですね?」

「ああ、ただの報告会だからな。」

「そうでしたか。」


 まあ、俺も予想と違って遅くなると思ってたし、彼の気持ちも分かるよ。

 そういえば、ヴァイスには可哀想な事をしたな。

 

「あのー、名前を聞いてもいい?」

「ボクですか?」

「はい、カルル・リューガです。リューガとお呼びください。」


 ………何か女性らしさの無い、力強い名前だな?

 まあ良いや、他人の名前を考えるべきではないな。


「じゃあリューガ。この辺にお菓子の店とか無いかな?ホント、ケーキとかそんなんじゃなくて駄菓子屋みたいなので良いから。」


 俺がそう言うと、リューガは頭を横に振る。


「ダガシヤと言うものは知りませんが、残念ながら市民は内戦によって疎開をしたので開いている菓子店はありませんが………そうですね、少しここで待って下さい。」


 そうリューガは言って、どこかへと向かった。

 何分か経った後、リューガが戻ってきた。

 リューガは息を切らしながら、飴の入ったガラスのビンを渡す。

 ビンの中には黄土色や薄茶色の硬い飴が入っていた。


「こ、これはボクがゲルマニアのヴェルター村で買ったバタースコッチの飴です。どうぞ受け取ってください!!」

 

 バタースコッチという事はキャラメル味の硬い飴みたいなやつか。

 よくキャラメル味のパフェに乗ってるカリカリで歯に詰まるやつ。


「一つ貰って味見してもいい?」

「ええ、どうぞ?」

「私も食べたいのです!」

「はい、どうぞ。」


 俺とヴァイスはリューガからその飴を貰う。

 そしてそれを口に入れた。

 滑らかな味で少しバター味の強いキャラメルのキャンディでとても美味し………何だろう?何故か白人の老人と『特別な存在』という言葉が頭に過る、何故だ?


「ほわぁああ!とっても美味しいのですっ!!」


 ヴァイスは頬っぺたを押さえながら言う。

 ヴァイスが美味しそうにしてるなら、シルヴィも喜ぶし、この飴を貰おう。

 

「お金を払うよ、幾らなんだ?」

「いえいえ、お金は要りません。受け取って下さい。」

「でも、ゲルマニアから買ってきたものなんだろ?」

「大丈夫ですから、ありがたく受け取ってください、ねっ?」

「ホントに?………それじゃあ、ありがたく貰うよ。」


 そういえば女の子から食べ物を貰ったのは初めてだな!

 それにこれならヴァイスだって喜ぶはずだ!

 俺とヴァイスは軽くお辞儀をし、その場を去った。


「あの人、良い人だったのです。」

「そうだな、国会議事堂の案内人ならまた会えるかも知れないな。」


 リューガの話をしながら国会議事堂を出ると、何故かセバスが議事堂の前に車を停めて待っていた。

 セバスは煙草をふかしながら待っている。


「おーいセバス!何やってるんだよ、こんな所で。」


 セバスは俺の声に気付くと、すぐにセバスがふかした煙草の吸い殻を地面に捨て、足で地面に擦り付ける。

 するとセバスは俺の顔を見て、深々と一礼する。


「カズト様、先程の(わたくし)だけ宮殿に帰還する命令を背いてしまって誠に申し訳ありません。」

「いや、そんな事で怒らないよ。ところでどうしたの?」

「カール様がカズト様がニホンジンという事で命を狙われる可能性があるからカズト様の外出の際は護衛を一人付けないといけないと言われました。」

「なるほどね、じゃあ車に乗り込むよ。」


 セバスは軽くお辞儀をし、車のドアを開ける。

 すると通りから誰かが歩き、俺に近づく。


「お久しぶりです、陛下。」

 

 俺はその声が聞こえた方向に顔を向ける。

 そこに居たのはシルヴィとマルクスを捕まえようとしたスーツ姿で銀の取っ手が付いた杖を持ったエルフが居た。

 セバスは俺の前に出て、俺はヴァイスを安全の為に車の中に入れた。


「何者だ!これ以上陛下に近づくと拘束するぞ!!………カズト様は彼を知っていますか?」


 セバスは杖を持ったエルフに対して大声で牽制すると同時に、俺に対してそのエルフが何者かを微かな声で質問する。


「ああ、シルヴィとマルクスを捕まえようとしたエルフだ。あの杖を持っていたのを覚えてる。」

「そうでしたか、では彼を拘束します。」

 

 すると杖を持ったエルフは軽くお辞儀をする。


「これはこれは申し遅れました。私、この辺にある製鉄所の従業員でして、少し陛下にお話があるんです。」


 そのエルフはニコニコとこちらに話しかけてくる。

 するとセバスはエルフの言葉に鼻で笑う。


「………このウィンドボナには製鉄所が無いはずだが?」


 そうセバスが言うと、そのエルフから笑みが消える。


「だからどうしたと言うんですか?私はそのニホンジンに話があるんですよ?」

「………衛兵っ!!」


 セバスはそう叫ぶと、国会議事堂の入口に立っていた数人の衛兵を呼び出す。


「何だ?………せ、セバスさん!一体どうされたのですか?」


 セバスって衛兵とかから信頼されてるんだ、意外だな。

 まさか、実はセバスは凄く偉い奴なのか!?


「多分、こいつはバーベンベルクのスパイだ、一人を除いて彼を取り囲め!!」

「ハッ!!」


 セバスの一声で衛兵達はその杖を持ったエルフを取り囲み銃口を向ける。

 杖を持ったエルフは溜め息を吐く。

 

「別に私はバーベンベルクのスパイでは無いのだが………。」

「問答無用!貴様を連行する。」

「………そうか、分かったよ。」


 するとそのエルフは一瞬で一人の衛兵の近くに来て、即座に杖で頭を横から殴る。

 そのエルフが杖を振る時の風を切る音がとても不穏な音がした。

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