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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第53話 籠城作戦

 ラウラが部屋から去るとシルヴィは俺の部屋をなにか調べていた。

 それにしてもシルヴィってまるで人形みたいだな。

 抱きつきたくなる可愛さだけど、そんな事をすれば俺が犯罪者になっちゃうぜ。


 「どうしたのカズト?」

 「いや、なんでもないよ。そういえばシルヴィはなんで残ったんだ?」

 「エヘヘ、カズト兄と遊びたくて、あとかんし・・・です。」

 「カズト兄?」

 「いや、カズト兄って呼ぶの良いと思って、カズト兄はダメ?」

 「いや、別に問題はないが」

 「やったー!ニシシ、嬉しいな!!」


 何か『お兄さん』って呼ばれるのは嬉しいな。

 監視が役割か………まあ別に脱出なんて考えてないし。

 でも考えてみると俺は何度も逃げる機会があったのに、俺は逃げなかった………いや一回逃げたな。

 まあ俺はこの場所を嫌いだとは思わないし、牢屋じゃないし、おいしい食べ物も食べたし、首都を観光できたし、最高じゃないか!!


 「監視しなくても逃げないよ。どちらかが戦争に勝てば終わることだし、別に良いよ。」

 「………か、カズト兄ってニホンジンなんですよね?ラウラさんから聞きました。」

 「ん?カズト兄?………ああそうだけど、それがどうした?」

 「ニホンジンってよくぶかい(・・・・・)人だと聞いていたので………。」

 「いやいや、全ての日本人が欲深くは無いよ。多分転移、転生した奴もね。」

 「カズト兄、じゃあニホンってどんな国なの?」


 シルヴィは目を輝かせ、ニホンジンに興味を示す。

 子供は好奇心があるからな、必死に聞きたくなっているのは可愛いな。


 「日本は小さい国だよ、でもそこには多くの人々がいて、犯罪がほぼ無いとても平和な国だよ。」

 「まるで理想郷(アガルタ)みたいな場所ですね、行ってみたいなー、ここからどれくらい掛かるの?」


 ふっ、分からないんだよ、それが!

 今すぐ帰れるんだったら帰るさ!

 だが、こんな小さな子に怒鳴っても、意味が無い。


 「めちゃくちゃ時間が掛かるよ、どうやって帰るか分からないけど………。」

 「私も東のアナトリアという遠い国からろうどう・・・・者として来たんだよ!スッゴく強い軍隊とスッゴい金持ちの国なんだって!」

 「へぇー、そりゃ凄いな!」


 こんな小さな子供が遠い国から来て、寂しい思いをしないなんて、なんて強い子なんだろう。


 「ねぇねぇ、一緒に庭に行こうよ!」

 「えっ!まあ別に良いよ、暇だし。」

 「やった!」


 暇だし、一応シルヴィの監視下だから別に良いよね。

 俺とシルヴィは庭の方に向かった。



 一方、同時刻にノリクム連邦議会の会議室ではウィンドボナでの籠城作戦を話し合っていた。


 「ウィンドボナでの撤退した我が軍と今首都を駐在している予備軍、近衛兵、さらに市民からの義勇兵を合わせると約9万人位となります。」

 「相手にはフーサンの逐鹿連隊というヤバみざわな軍隊が居るってよ。」

 「それなら大丈夫だろ、過去の様々な列強の侵攻を防いだ要塞化されたウィンドボナの城壁だ!しかもゲルマニアでは内戦真っ只中、エトルリアは財政も内政も混乱でどちらも内戦に義勇兵を派兵をしていないそうだぜ。」

 「とりまカール様が拉致したというニホンジンを交渉の場所での材料にすればいいんじゃね?」

 「バーカ!勝つか負けるかしかないんだよ、この戦いはよ。」


 議員や軍人が協力して情報を交換し合う最中、一人の職員が会議室に入る。


 「失礼します、先程敵のバーベンベルク軍がウィンドボナから30ミレまで近づいて、行進を停止したそうです。さらに敵の総司令から電文も送られて来ました。」

 「何!?早く読まんか!」

 「はっ!えー、『ノリクム連邦皇帝を僭称せんしょうするアンナとその協力者共に告ぐ、我が軍は首都目前まで迫っている。即刻無血開城を行い、さらに連邦の消滅を宣言すれば戦争が回避され、アンナを含め、市民の命は保証しよう、期限は一週間後の23時、オルタ・ヘスティア時までとする。』だそうです。」


 会議室内は沈黙し、皆は下を向いていた。

 勿論、彼らは戦いを望んでいないし、死にたくもない。

 だが、降伏すればダークエルフ中心の政治が出来ず、エルフとヒューマン中心の政治が行われることを危惧していた。

 すると違う方向にある扉が開き、アンナが現れる。

 彼女のドレスは黒色と黄色を基調としたドレスで上品さと同時にカッコ良さを合わせた物である


 「アンナ皇帝陛下の御入室である!全員起立!!」


 議員や軍人は一斉に起立を行う。


 「「「皇帝陛下、チョリース☆!!」」」


 皇帝陛下にふざけた挨拶をしているが、断じて彼らはふざけてはいない。

 議員や軍人は真顔でアンナに挨拶をしている。

 アンナはそれに答えるように軽く手を上げ反応する。


 「うむ、お仕事ご苦労である、皆座りなさい。」

 「陛下、先程送られた電文見ましたか?」

 「ええ、勿論読んだわ、我々三民族はノリクムでエルフやヒューマンから酷い扱いを受けていた。我々はその自由を手に入れるために帝政を復活し、独立をしたのにまた手放すのか!?否ッ!私はそんな事はさせない!私は近隣諸国に行って加勢を頼む!その間、ウィンドボナを死守よ!」


 アンナは声を高らかに演説する。

 だが、不安視する議員からヤジが飛ぶ。


 「で、ですが、大戦が終わってすぐのこの緊迫きんぱくした時期に参戦をしてくれる国はあるんですかね?」

 「隣国とは対立関係があるのに大丈夫なのか!」


 するとその議員の発言に衛兵や会議に参加した軍人が議員に叱責する。


 「貴様、陛下に不遜ふそんな態度を取るとは、不敬だぞ!」

 「そうだ!そうだ!!」


 するとアンナはスッと手を挙げる。

 軍人はそれを見て沈黙する。


 「()い、議員の言う通りだ。こんな混乱期に加勢してくれる国が有るかは分からない、だが、私は一国だけ思い当たる国があるのよ。だがら信じて待ってくれ!」


 アンナは議員と軍人の前に頭を下げる。

 アンナの行動に彼らは動揺する。


 「陛下、頭を上げて下さい!我々は絶対に待ちますから。」

 「そうだよ!俺達はエルフやヒューマンに裏切ったりしねーよ。最後まで徹底抗戦だ!」


 アンナは頭をゆっくりと上げ、笑顔で話す。


 「良かった、それでこそノリクム国民だわ、絶対に早く帰国して援軍を連れて帰るから。」


 アンナは会議室を退出すると、議員は一斉に立ち上がり、『女帝万歳!』を叫んだ。


 「「「女帝万歳!女帝万歳!女帝万歳!!」」」


 すると彼女の後ろから一人のダンディーな侍従武官が付いてくる。

 その男の右目は潰されていて、それを隠すため黒い眼帯を付け、銀髪の立派な口髭を付けた年老いたヒューマンだ。


 「セバス、カールはまだ議会の部屋で仕事してる?」

 「はい陛下、ご安心くださいませ、陛下に言われた通りにさせております。」

 「それじゃあ、カールには新しい仕事として臨時の皇帝を務めさせていただくわ。」

 「つまり摂政みたいなものですかな?」

 「………まあそうね、摂政だわ。」

 「私も聞きたい事がありまして、ニホンジンと獣人の子供達はどうしますか?」

 「貴方が監視しなさい。そしてカール、カズト、シルヴィが襲われたら擁護ようごしなさい。」

 「………かしこまりました。」


 侍従武官のセバスは深々とお辞儀をする。

 だが、アンナは悲しそうな顔をする。


 「どうなさいました陛下?」

 「いや、セバスはヒューマンよね。」

 「はい、それがどうなさいました?」

 「セバスはここから逃げないのか?それとも裏切る事も無いのか?君はヒューマンなんだ―――」

 「陛下!!」


 セバスは突然怒鳴る。

 アンナはビクッと体を震わせ、驚く。


 「な、何よ。」

 「私の命は陛下によって拾われました。魔族との戦争の時に瀕死になっていたこの私を貴女は助けたのです。ダークエルフをそれ以降私は恨んだ事も、嫌った事もありません!だから私が裏切るなど―――」

 「十分に分かったわセバス、貴方(あなた)侮辱ぶじょくするような言葉を言って本当に申し訳ない。」

 「へ、陛下!別に謝らなくて結構です。陛下が理解してくれれば良いので………。」

 「分かったわ、貴方に二度とその話をしない。」

 「ありがとうございます、それではカール様の所に向かいますので失礼します。」


 そうセバスは言って、アンナは溜め息を吐く。

 そして二人は廊下を歩いていた。

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