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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第51話 逐鹿連隊

 そういえば、エスターシュタットで本当に内戦が起きているのか?

 街はとても戦争している様な雰囲気もそう感じないし、不思議だな………。

 まあ、いいや!

 昼寝が先だ、もう疲れたから寝よ………。



 エスターシュタット内戦 最前線の街

 ノリクム軍 前線陣地


 数時間前、エスターシュタットはユーラ大戦が終戦して数日はつかの間の平和が訪れていた。

 バーベンベルクとノリクムとの内戦が始まったが、銃撃戦が起きても数人同士の戦いで死者どころか怪我人すら出ない状況が続いていた。

 一部では友好的な交流を行い、仲良くなっていた場所もある。

 だが、エスターシュタットでの治安部隊としてやって来た扶桑の軍人によって構成された逐鹿連隊により前線は急変、一瞬で血生臭い地獄のような戦場が起きていた。

 野砲によって、陣地は壊滅的な被害を受け、死者も怪我人も続出していた。


 「クソッ!前日まではこの街は平穏な場所だったのに!あのバーベンベルクとかいう訳分からん国の野郎が!!」

 「な、何だあの獣人!?草食動物のクセに強すぎるだろっ!!」

 「あ、悪魔だ!あの角は悪魔だ!!」

 「怯むな、よく見ろ!獣人の鹿人だ!狼狽えるな、射撃用意………撃て(フォイヤー)!!!」


 整列したノリクム軍のダークエルフは二列横隊を組み、鹿人に向かって銃を構え、斉射を行う。


 ダダダダダダーン………

 

 一斉に放たれた銃弾は逐鹿連隊に向かう。

 敵数人がその場で倒れるが、敵の突撃は弱まること無く、ノリクムの二列横隊に近づき、突進してくる。


 「だ、駄目だ!あいつら当たったとしても突撃を止めないぞ………て、撤退だ!てったーーー」

 

 すると、敵のバーベンベルク側から逐鹿連隊による斉射が始まる。


 ダダダダダダダダダダダダーン………


 隊長の声は掻き乱され、銃弾が隊長の胸と首に貫通し、馬から落馬しその場に倒れる。

 戦いが始まる前から、前線は平和な状態が続き、逐鹿部隊より少ない軍隊の数であったため、一度の斉射で多大な損害を受けた。


 「た、隊長がやられた!撤退するぞ!!走れるものは逃げるんだ!」


 ダークエルフの横隊は隊長が死んだ事に乱れ始め、彼らは敵に背を向け逃げ始める。

 後方部隊の野砲によって、ノリクムの陣地は地面がボコボコになるまで攻撃をし、隊長がやられて乱れた横隊に逐鹿連隊の兵士は突撃、銃で撃たれ、銃剣や刀、鹿人の角などでダークエルフの兵士は斬り殺され、串刺しになった。

 ノリクム軍は内戦が始まって以来初の撤退戦と同時に敗北を喫する事となった。



 同場所

 バーベンベルク軍陣地 エルフ歩兵部隊


 「すげぇー!オーガと獣人野郎どもが俺達の仲間で本当に良かったな。」

 「しーっ!馬鹿、聞こえるぞ!」

 「それにしても、フーサンの治安維持軍が参戦するとはビックリしたぜ。」

 「なあ、知ってるか?ユーラの貴族軍人が観戦武官が驚いた話。陸軍の覇者、ノヴゴロド帝国がフーサンと戦った戦争で機関砲の銃弾が飛び交う中、突撃して勝利したってやつ。」

 「ああ知ってる、しかもフーサンは無謀な突撃で死者が凄かったとか。」

 「そんな地獄から来た野蛮な奴等だ、俺達の出番は絶対に無いな………。」


 その場に居た兵士は彼の言葉に頷いた。

 バーベンベルクのエルフ部隊、もしくはヒューマン部隊は特に動きを見せず、塹壕から少し頭を出し、戦況を見ながら話していた。



 同場所

 大扶桑帝国エスターシュタット治安維持軍 第一逐鹿連隊


 鬼人による指揮により、走りながら逐鹿連隊は士気を高め、最後の突撃で相手の横隊の残党を蹴散らす事を彼らは決定した。


 「鹿ども!一心不乱に治安を乱す賊軍に対して突撃を敢行せよ!ダークエルフどもをウィンドボナに帰してやれ!!」

 「「「おおおお―――っ!!!」」」


 鹿人は返事をした途端、鬼はキラキラと黄色に輝く刀を鞘から引き抜き、刃先を敵に向け、声を荒げる。


 「いざ、突撃!!!」

 「「「ワアアアアアアアア!!!」」」


 鹿人は咆哮すると同時に突撃を開始した。

 戦場では銃声と鹿人の雄叫び声、鹿人の角によって刺されたり、突き飛ばされた時のダークエルフの叫び声、そして周辺の地面をも揺らすほどの雷鳴のような鹿人の足音が轟かしていた。

 両軍共に扶桑の逐鹿連隊の何も恐れない突撃に恐怖し、戦況はノリクム側が悪化していった。

 そして撤退したノリクムの陣地には多数の死体と酷く壊れた備品や兵器、そして一本の雑草すら生えていなかった。


 「この戦闘は勝ったな!やはり戦争という名の合法な人殺しは本当に最高だ!!」

 「ええ、そうですね………。」

 「………おい、元気無いぞ。どうしたんだ?アオイ。」

 「いえ………オウド様、もしカズト様がこの戦場で懲罰部隊として送られたりしてたらと思うと心配で………。」

 「カズトって前に言っていたあのニホンジンか?大丈夫だろ、ここはあまりにも平和ボケしている国だぞ?そんな懲罰部隊みたいな野蛮な事は無いだろ、なあアカネ。」

 「そうじゃな、だからそんな事は考えずに安心して戦うのじゃ、アオイ。」

 「………はい、オウド様、アカネ姉様。」


 前線の戦闘から数時間で帝都にその戦況が広まり、ウィンドボナの市民が敵に畏怖した。

 市民は議会に訴え、議会は市民が避難もしくは疎開を始める法案を即急に提出し、ノリクム連邦のアンナ皇帝陛下がその日の正午に承認、直ちに発表した。

 ただし、帝室は帝都ウィンドボナに残る事を決め、アンナとエティショ家を支持する王党派の市民と一部の軍が街に残った。

 カズトはその時にマルクスとシルヴィを必死に追っ手から助けていたため、彼らはその話を知らなかった。

 あの時の大通りの人混みは避難もしくは疎開する人々が最後にウィンドボナで娯楽を楽しむため中心街に集まっていた。



 ノリクムの女帝アンナの部屋に一人の執事が入る。

 アンナは何かしらの書類を書いている途中だった。

 それが日記なのか手紙なのか、もしくは重要機密な書類なのかは執事には分からなかった。


 「アンナ様、失礼します。」

 「ん?なんだ?」

 「報告します、国防省、外務省、内務省と財務省以外の官庁は即座に停止し、ほぼ全ての工場が停止を決定しました。」

 「疎開は?」

 「はい、未だに二割程の市民が疎開しましたが、残り八割が明日に完了すると思われます。」

 「軍を撤退させ、ウィンドボナに集める作戦は?」

 「それも明朝に完了します。」

 「うむ、そうか、話はそれだけか?」

 「あのニホンジンの処遇をどうするかを決定しなければなりませんが、どうしましょう?」


 するとここでアンナは手を休め、羽根ペンをインク瓶に先っぽを入れ、手から放した。


 「それは私に任せろと何度も言ってるわよね。」


 アンナは振り返って、執事に叱る。

 執事は深々と頭を下げる。


 「大変すみません陛下、そうでした。」

 「………そういえば、昼食の時間でしたね、料理は準備出来ているのですか?」

 「いえ、今から確かめに参る予定です。」

 「なら、早く行きなさい私は待っているのよ。」

 「かしこまりました………。」


 執事は退出し、アンナは一人部屋に残る。


 「フゥー………ったく、姉さんは何してんだよ!カズトから離れてから俺に仕事があるとか言って、正午の議会を除いて姉さんの変身が仕事ってそりゃ無いよ………。」


 アンナ、いや、もといカールは部屋でアンナの見た目に変身して彼女の仕事を受け持って働いていた。


 「くそっ、これなら戦場に行きたかったな、だから俺はカズトの暗殺の仕事を受け持ってカズトを殺さずに逃がした後、戦地に向かおうと思ったのに。あのオリヴィアという糞エルフ、マジで絶対に許さねぇ………。」


 カールがオリヴィアを恨んでいる同じ頃、カズトの部屋に昼食が運ばれていた。

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