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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第49話 黒檀の杖の男

 俺はノック音がした玄関の方に向かう。

 俺はその謎の訪問が怪しかった。

 何故なら、こんな廃屋に訪問客が居るのだろうかと。

 俺は玄関に向かって声を上げる。


 「はーい、どちら様でしょうか?」


 そう言ってゆっくりと俺は玄関の扉を開ける。

 するとそこにエルフの男性がまっすぐ姿勢を保ちながら立っていた。

 彼はシルクハットを被り、スーツの上から黒いコートを来ていて、両手には手袋を着け、右手には黒檀の棒に純銀の犬を型どった物が握りに付いていた杖を持っている。

 彼は驚いた表情をしながら呟く。


 「へぇー、こんなボロッボロの廃屋にエルフが居たんですか………」


 出会ってすぐに馬鹿にするこのエルフ、俺の家じゃないけど、何か腹立つな。

 そりゃ俺の家では無いし、廃屋みたいだけど、それを知らない人に対して言う言葉か!?


 「………あの、何の用ですか?」 

 「おっと申し訳ありません、(わたくし)、この近くの製鉄所の社員なんですが、この辺で我が社の労働者が勤務中にここに逃亡したという話を聞きまして、小さい獣人の子供なのですが………見ませんでしたか?」


 小さい獣人の子って、シルヴィとマルクスの事か………。

 あいつらの事は黙った方が良さそうだな。


 「いいえ、見てません」

 「………そうですか、わかりました。もし見つけたり、捕まえたりしたらこちらに連絡下さい、それでは………」


 彼は住所と電話などの連絡先が書いている紙切れを俺に渡し、その場を去った。

 俺は扉を閉めると、その紙切れを地面に細かく破り捨て、マルクスとシルヴィが居る寝室に向かう。

 寝室に入ると、シルヴィは帽子を取っていた。

 シルヴィは身体を震わせながら尻尾を隠し、彼女の頭にピタッとつけるように獣耳を後ろ側に伏せていた。


 「カズト、さ、さっきの男の人はどこか行ったの?」


 シルヴィは酷く怯えている。

 だが、同時にマルクスを彼女の背中側に寝かせて、もしもの際に守ろうとしている。

 嗚呼、なんてお兄さん想いの良い子なんだ!

 しかし、まずはシルヴィを落ち着かせないと。

 俺はそう思い、彼女の頭を撫でながら言う。

 だって可愛いもんね!


 「ああ行ったよ、だから安心して」

 「あ、あの頭を撫でるのは恥ずかしいので止めて………ほしい」

 「え、ああ、済まない!」


 彼女の顔は赤くなり、尻尾が左右に大きく振っているし、これは喜んでいるんだったっけ? 

 それにしても参ったな、どうすれば良いのだろうか。

 このままじゃ、絶対にあのエルフに彼らが隠れているのがバレてしまうのは時間の問題だ。

 ………そうだ!あのエルフが居ない間に王宮に向かえば良いじゃないか。

 まずは武器になるような物を探すため、家の中を探索だな。


 「なあシルヴィ、この家に大きな布とかそういったものとかあるのか?」

 「あ、あるよ、ワタシが持ってくる!」


 シルヴィが違う部屋に行っている間に何か探しておこう。

 俺はそう思い、屋根裏や棚、小さな箱から大きな箱まで調べた。

 調べた結果、この家にあった武器はリボルバー式拳銃でしかも弾は全て装填されている。

 銃も全然錆びてないし、保管していた場所も乾燥した場所だから火薬も多分問題ないだろう、多分。

 じゃあこれは貰っていこうかな。

 あと小さい人が一人入りそうな大きな箱も見つけたし、これを使えば―――


 「カズト、どこにいるの?」

 「今向かうから待ってて!!」


 俺はズボンと腰の間に拳銃を入れ、箱を両手で運ぶ。

 シルヴィの所まで箱を運び、その場に置く。


  「これにマルクスを入れて、大きな布で包んで、そこから通気用の穴を無数開ける、そしてこの箱を俺が運ぶ。もし何か怪しまれたら『露店の商品を運んでいる』とか言っておこう」

 「わかりました、マルクスをこの箱に入れますけど、どこに向かうの?」

 「大通りでタクシーを拾って、俺の部屋に向かおう。勿論、カールと話し合ってからだけど」

 「………わかった、カズトにしたがう」


 こんなに小さいのに即決力があるなんて凄いな。

 まあ、今はそんな事は関係ない。

 急いでこの地区を脱出しないといけない。

 俺とシルヴィは玄関に向かい、そして扉を開ける。

 扉の隙間から顔を出し、辺りを見渡す。

 よし、あのエルフは居ないな。


 「シルヴィ、帽子は被ったか?」 

 「はい、かぶりました!」

 「よし!それじゃあダッシュだ!」


 シルヴィは軽く頷くと、俺とシルヴィは扉を開けて飛び出し、大通りへと向かう。

 すると突然、先程のスーツを着たエルフの男性が追ってくる。

 そのエルフの男が俺たちに声を掛ける。


 「待て、お前ら!」

 「な、何ですか?」

 「その荷物をどうするんだ?」

 「お、俺達、市場で露店商をやってるんですよ」

 「そ、そうですよ?」


 俺とシルヴィがそのエルフの男にそう言うが、男は何か感付いたか、不気味な笑顔を見せる。


 「へぇー、じゃあどんな品物か見せてくれよ」


 そう言って男がシルヴィと俺が持つ箱に手袋を着けた右手で触れようとする。

 その瞬間、シルヴィは男性の腕に噛みつく。

 同時に彼女の帽子が脱げ、獣耳が見えてしまった。

 男性はそれを見てニヤリと見て、杖を取り出す。


 「こういう噛み付かれる時の為に腕を魔法で強化していたんだ………やはりな、見つけたぞ!犬畜生がっ!」


 取り出した杖を振り上げ、シルヴィの頬にに強く叩く。

 

 「キャン!!」


 シルヴィは顔を杖でぶたれた衝撃で噛んでいた男の腕から離れ、シルヴィは頭を壁にぶつける。

 俺は驚きのあまり大声を上げる。


 「シルヴィ!………てめぇ!!」


 俺はマルクスが入った箱を急いで降ろし、男に向かって拳で頬を殴る。

 彼は突然だったからか、防御体勢を取ることが出来ず、殴られるとその場で倒れ、右の口角から血が垂れる。

 多分、殴った瞬間に口の中を切ったんだろう。

 先程の廃屋で手に入れた拳銃の銃口を向ける。


 「お前、か弱い女の子の顔を殴るなんて、どうかしてるぞ!」


 俺がそう言うと、男は口角から垂れた血を手で拭く。

 そして何故かとぼけて、周囲を見回しながら言った。


 「女の子?どこにそんな女の子が居るんだ?まさか、この塵芥(ちりあくた)のような獣人の事を言ってるんじゃないよな?」

 「ああ、そのまさかだよ!」


 すると男は俺の発言に対して嘲笑う。


 「ハハハ、冗談を言わないでくれ、エルフの同胞よ。獣人が我々エルフ民族と一緒だと?有り得ないね。そんな事はエルフの貴方も理解しているだろう?」


 こいつ、俺が変装しているのは気づいていないな。

 ………よし、やってみるか。

 俺は決断し、自分のカツラを掴む。


 「残念ながら、俺はエルフじゃない、日本人だ。」


 そう俺は言いながら、カツラを取る。

 するとエルフの男は笑顔が消える。


 「お前ニホンジンなのか?クククク……これは面白い!もうこの国には日本人は居ないと思っていたのに………またここでニホンジン狩りが出来るのか!ハハハ………それじゃあお前を殴っても、殺しても仕方ないよな?愚かなニホンジン!」


 エルフの男は持っていた杖を俺の頭で殴る。

 俺は杖を振りかぶって殴られた衝撃で地面に倒れ、右手に持っていた拳銃を落とす。

 痛い!マジで痛い!!

 頭蓋骨砕けたと思うくらいに痛い!

 というか、殴られた時、一瞬杖が見えなかった。

 は、速い、速すぎる!

 だが、それ以上にあのエルフの笑みが怖すぎるだろ!

 ニヤッと口角を上げながら殴るとかアイツ、サディストか!?

 そしてエルフの男は杖の握りを掴み、時計回りに回転させる。

 すると、カチッと音が鳴り、黒檀の杖が鞘のように取れ、刀身が姿を現す。

 待て待て待て!その杖、ケインソードかよ!?


 「ニホンジンはエスターシュタットでは公共の場以外は生死を問わずだからな、ニホンジンに対しては特に恨みは無いが、邪魔だからここで死んでもらうよ?クククク………」


 また襲ってくると俺は感じ、俺は拳銃を急いで拾い、拳銃の引き金を引いた。


 ダァン!!


 俺は一発、発砲した。

 路地で撃ったからか、銃声が建物の壁に大きな音でゴワンゴワンと反響し、響き渡る。

 エルフの男は発砲した瞬間、彼は避けようとしたが、狭い路地だったため銃弾は男の左肩に当たると、彼はバランスを崩し、地面に膝を付く。

 その間に俺はすぐに立ち上がり、シルヴィの腕を掴んで無理矢理立たせて、そしてマルクスが入った箱を急いで担ぎ、その場から離れた。


 「オイ待て!労働奴隷ね獣人の分際で逃げるんじゃねぇ!」


 そうエルフは怒鳴るが、俺達はその言葉を無視する。


 「早く、捕まる前に大通りに向かって馬車か何か乗れる物を探すぞ」

 「は、はい!」


 俺は拳銃を簡単に取り出せるように胸ポケットに隠す。

 俺は走りながらシルヴィに話す。


 「シルヴィ、お前に大通りへの案内を任せる。俺はこの辺の場所が分からないからな、そして俺は後ろを監視する、理解したか?」

 「うん、理解した!」


 まあ、ホントは方向音痴だから案内を任せるんだけど、それと慎重に周りを見なければいけないしな、もしアイツが、あの男エルフがまた襲ってきた場合、この拳銃で脅して、シルヴィとマルクスを逃がさないといけないからな。

 俺はそんな事考えながら辺りを見回していたが、あの男がまた襲ってきたりする事も無く、俺たちは大通りに出ることができた。

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