第44話 アレマンの酒場
オリヴィアを探すため、町の至る場所に行くと、この町の中心にある教会の前にオリヴィアが立っていた。
そこでオリヴィアは帽子を被った誰かと親しげに話しているが、一体誰なんだろう?
「カズト遅いわよ、私達ここで一時間も待ったぞ!!」
「ごめん、色々有ったから時間が掛かって、ところで横に居る方は誰なんだ?」
「誰って、あなたエリアスに会ってないのか?」
エリアス?何か聞いたことのある名前だな。
あっ!エリアスってカールが変身してたエスターシュタットのゲルマニア大使に選ばれた人か!
「会った!ヘルヴェティアの宮殿で会ってるよ。」
「ふう、良かった。私を忘れてるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ!ハハハ。」
エリアスは俺が笑いながら話す。
「自己紹介はオリヴィアの話によると、私の偽者が完璧にやったそうだから省略するよ、ま、そういう訳だからよろしくね領主様。」
そうエリアスは俺に握手を求め、右手を差し出す。
俺は彼の右手を握り、握手を交わした。
「それでは少し話をする為に、近くの酒場にでも行こう。」
「わ、分かりました。」
少しだけ町をふらふらと歩くと、大きめな酒場に着く。
小さな町の酒場にも関わらず賑わっており、室内から様々な人の声が漏れていて、店の活気さが感じ取れた。
「オリヴィア、ヴァイスってその酒場に入れるのかな?」
「うーん、大丈夫だろ?それよりもお前の方がヤバイからな。早くカツラをつけろ、ほら持ってるのを渡すから。」
「おう、ありがとう。」
俺はオリヴィアからエルフになれる魔法のカツラを受け取り、手慣れてきたかすぐに装着する。
そしてその酒場に入店した。
店に入ると、電灯で眩しい店内で料理の美味しそうな匂いが充満していた。
「いらっしゃいませ!空いている席に自由に座って下さい。」
看板娘と思われるハーフエルフの女性が挨拶をする。
すると、エリアスは帽子を脱ぎ胸に当て、軽く一礼する。
そして彼は店の奥のテーブル席を指差す。
「カズトさん、あそこが空いているからそこに行こう。」
「分かりました。」
俺とヴァイス、オリヴィアそしてエリアスは椅子に着席をする。
店員が近付き、注文を取り始める。
「ご注文をお決まりでしょうか?」
「四人にヴルストとポテトサラダ、あとライ麦パンとラガー二つと水を二つお願いします。」
「はい、かしこまりました!」
注文を終え、店員が去るとエリアスさんは話を始める。
「エスターシュタットについてだが、ノリクム連邦以外に君の国家もすでに誕生している。」
「俺が居ないのにか?まあいい、それで名前はなんて言うんだ?」
「はい、バーベンベルク王国という名前です、勿論、国王はカズトさんですけど、今はそんな事関係ありません、内戦についてですが、実はノリクムの首謀者が行方不明となったという情報があり、停戦中との事です。」
「国の被害状況は?」
「我々の防諜によると国境線での小規模な戦闘はありましたが、首都のウィンドボナや臨時首都のオエニポンでは特に争いが起きた形跡は無いようです。」
「………そんな重要な情報、俺が聞いても大丈夫なんですか?」
「当たり前だ、お前は君主だろ!まあ、本当に重要な情報は教えてはいないが、これくらいの情報は別に教えても良いものだ。」
「そうなのか………。」
俺とエリアスの話の途中に料理が運ばれる。
エリアスは話を中断させ、店員に笑顔を見せる。
「お待たせしました、どうぞ。」
美味しそうなソーセージとポテトサラダが運ばれ、オリヴィアとエリアスには木製のジョッキにビールが注がれていた。
「うん、ありがとうまるで天使のような綺麗なお嬢さん。」
「もうお世辞が上手いんですから!」
エリアスは店員に軽く一礼をし、店員が去る。
店員が去ると同時にエリアスは食事を始めながらオリヴィアが話し始める。
「それにしても首謀者が行方不明らしいけど、どんな見た目なの?」
「見た目は小柄なダークエルフで、一番の特長はオッドアイで片目が金色の目をしているそうだ。」
………ん?
なんかそんな奴を見たような?
俺がそう思っていると、オリヴィアが震え始める。
「………やっぱり、アイツか!」
「あ、アイツとは?」
「カズトと私が先程までに一緒に居たダークエルフです!捕縛してきます。」
そう言ってオリヴィアは店から急いで飛び出した。
「オリヴィアなら大丈夫でしょう、皇帝直轄の元近衛兵だし。」
「え?元??」
「ええ、まあ昨日決まったばかりですけど。」
「俺も知りたかったんですよ、そのエリートの近衛兵が何故、辺境の駐在武官になったのか?」
「おいおい、カズトさんの領地や俺の勤務地を『辺境』と言わないで下さい、私の勤務地ですし、それに昔は巨大な帝国が有った場所の中心地ですよ。」
「そ、そうでしたね。」
すると黙々とヴルストを食べていたヴァイスが口に含んでいた物を一気にゴクンと飲み、話を始める。
「私はオリヴィアさんから聞いているのです、近衛部隊の不祥事であのお姫様を危険に晒したからトップの彼女が責任を取って、近衛部隊を止めたのだそうです。」
「そうなのか。」
そういえば、そんな事を馬車の中でレナとフレイヤの会話から聞いていたような、聞いてないような………。
「まあ、オリヴィアはそういう訳で彼女はカズトさんの国、バーベンベルク王国の駐在武官になっているのだ。」
そうなんだ、オリヴィアも苦労しているんだな。
じゃあこのエリアスは一体何故、バーベンベルク王国に来たんだ?
彼もそういった変な経緯でここに居るのか?
俺はそんな事を考えながら、俺も食事を始めようとソーセージを口に入れようとすると、突然店内に電話のベルが鳴る。
店員がすぐさま取り、応対すると突然その店に居たお客さん全員に対して大声で質問をする。
「この店の中でカズト様はいらっしゃいますでしょうか!?」
「ワシがカズトじゃよ!ワハハ!!」
「肉屋のおじいさん、飲み過ぎですよ!カズト様、カズト様はいらっしゃいますでしょうか!?」
「はい、自分です。」
「どうぞ電話です。」
俺に電話?誰からだろう。
俺は店員から古めかしい受話器を渡され、恐る恐る受話器を耳に近づけ当てる。
「カズト様ですか?私はフローリアン城の衛兵ですが、フランツ様からオリヴィアと名乗る女性をご存じか確認するため城に来てほしいとの事です。」
「な、なんで場所が分かったんですか?」
「話し合いをすると仰っていたので、この街で有名な話し合いが出来る酒場はそこしかないと思いまして。」
さすが小国、酒場って言ったらすぐに分かるんだな。
「分かりました、急いでそちらに向かいます。」
「はい、よろしくお願いします。」
―――――ガチャン
俺は受話器を金属製のフックに掛け、静かに席に戻る。
「どうしたんですか、カズトさん?」
エリアスが心配そうにする。
俺はエリアスとヴァイスに今受話器越しに言われた事を説明をする。
「エリアスさん、ヴァイスを見ていてください。ちょっと城に用事がありまして。」
「オリヴィアですね、分かりました。」
「カズト様、私も連れて行くのです。」
ヴァイスは心配そうな顔をして、付いて行こうとする。
だけど、ヴァイスには苦労をさせたくない。
俺は彼女の頭を撫で、心配を和らがせる。
「安心しろ、すぐに戻ってくるから。」
「本当にすぐに戻って下さいなのです、約束なのです。」
「ああ、勿論だ。」
俺はそう言って、店から飛び出す。
そして急いで丘の上にあるフローリアン城に向かった。
フローリアン城に着くと、オリヴィアが大声で叫びながら城門で暴れていた。
「早く入らせろ!嘘つきやがって、あの野郎絶対ぶっ殺してやる!!!」
オリヴィアが物騒な言動をして、衛兵を困らせていた。
「す、すみません、先程電話を頂いた一翔です。」
「カズト、やっと来たか!」
「カズト様、ほ、本当にこの野蛮な彼が知り合いなのですか?」
「いや、知らない。」
俺がそう言うと、ブチッと血管の切れた音がした。
オリヴィアはゆっくりと俺の方に近づく。
「おいカズト、まずはお前からぶっ殺―――」
「冗談です!知ってます知ってます、知ってますとも!彼女の名前はオリヴィアです!!」
俺がそう言うと、笑顔でこちらを見て声を出さずに口でパクパク開きながら、何かを伝える。
俺はオリヴィアの口の形をじっくりと見る。
(イ・ノ・チ・ビ・ロ・イ・シ・タ・ナ☆)
そうオリヴィアは俺に向けて口を動かすと、オリヴィアはその後、衛兵に顔を向けた。
俺は寒気を感じ、鳥肌が立つ。
「カ、カズト様の友人だという事が解りましたので、入城を許可します。」
一人の衛兵が近づき、俺達の案内を始める。
すると門を開けた瞬間、目の前にエンジンを切っていた自動車が止まっていた。
門が完全に開くと、エンジンが起動し、ランプがつくと、自動車が突然急発進し、俺やオリヴィアに向かって走ってくる。
すると運転席から誰かが手を伸ばし、俺の服の襟を掴み取り、後部座席の方に投げ飛ばす。
「ゴホッ、イテェな!何するんだ!!」
俺がそう言うと、突然俺の顔に向けて銃を突きつける。
「ごめんなカズト様、殺しはしないから今は黙ってくれ。」
そこに居たのはオッドアイのカールがハンドルを片手に持ちながら、銃を突きつけた。
オリヴィアはすぐに自動車を追い、続いてアオイ、フランツが自動車を追う。
だが、この自動車は改良されているのか、ものすごい加速で自動車はスピードを上げ、彼女等は追い付く事が出来ず、足を止めてしまう。
「ふう、逃げ切れたか。」
「おい、俺を誘拐してどうする気なんだ!」
「実は我がノリクムではエトルリアのニホンジン強制搾取でニホンジンが居なくなって困ってたんだよ、それならカズト様を連れていけば良いじゃないか!と俺は思ったんだよね。」
「じ、冗談じゃない!ふざけるな!!それに俺は殺されるんじゃないか?」
「それについては安心しろ。あと申し訳ない、運転が集中できないから、静かにしてもらうよ。」
そうカールは言って、銃を仕舞い、人差し指を俺のおでこに付ける。
そして人差し指が白く輝くと、カールは短い呪文を唱える。
「睡眠………。」
カールがそう言った途端、俺の瞼がとても重くなり、頭がボーッとし始め、そして俺は眠ってしまった。
クソッ、すぐ戻るってヴァイスと約束したのになぁ……ごめん………な………………。
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