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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第40話 市中引き回し

 俺はアオイだと確認するとゆっくりと彼女に近づこうとするが、服を後ろから引っ張られる感覚がある。


「ねぇカズト様、誰なんですかあの女………」


 ヴァイスが俺の服が破れるかもしれないと思うほど、手で強く引っ張り、同時に彼女の顔から笑顔が消えていた。

 俺は必死に彼女について分かりやすく説明した。


「え、ああ、昨日のパーティーで出会った瑞穂という国の軍人さんだよ」

「私をオリヴィアさんと一緒にさせて、カズト様は他の女性と遊んでいたのですか………へぇー……………」

「え?いやいや違うから!遊んでないから、というか離してくれよ」

「絶っ対に離さないのです!私が離したらあの女とイチャイチャするんでしょう!!」

「そんな事しないよ!?」


 おいおい、初めてじゃないかこんなに執拗なヴァイス。

 ほら見ろ、アオイさんどころかオリヴィアもカールも動揺してるじゃないか。

 するとアオイはゆっくりと近づき、俺に尋ねる。

 同時にヴァイスは俺の後ろにすぐに隠れる。


「あの?そこで何してたんですか?」

「あ、それが馬車が壊れて使えなくなったので、歩いて街に戻ろうとしてたんですよ」

「え!?そうだったんですか?それは大変ですね………それなら、私の馬車でエスターシュタットに向かいますか?」

「えっ!良いんですか!是非―――」

「待てカズト!コイツはオーガだぞ、私は絶対に信用できないわ」


 オリヴィアが猛烈に反対し、俺の肩を掴む。


「そうです!私も反対なのです!」


 ヴァイスもオリヴィアと一緒に反対する。

 すると碧さんはヴァイスに気づいたのか目をキラキラと輝かせる。


「わああああ!か、可愛いですね!!名前は何て言うんですか?」

「わ、私はヴァイスという名前で、よ、よく分からないですけど魔族の角人族だそうです……。」

「へぇー、魔族って初めて見ましたけど、こんなに可愛いんですね、髪がフワフワでまるで綿みたい………」


 アオイはヴァイスに近づくと、ヴァイスは俺の後ろに隠れ、睨みながら威嚇する。


「あら、そこまで怖がらなくても良いのに………そうだ!私、ケーキを買ってたんだわ、ヴァイスちゃんケーキ食べる?」

「はい!食べるのです!!」


 ヴァイスはアオイのケーキで簡単に釣られた。

 おいおい、そんなんじゃ簡単に犯罪者に拐われるぞ。


「そ、そんな簡単に釣られて大丈夫なの?」


 するとオリヴィアはヴァイスに心配するが、ヴァイスはニッコリと微笑む。


「大丈夫だ、問題ない……です。なんかフレイヤとは違う変態さの無い感じがするので大丈夫だと思うのです。」

「あ、うん、そうね………。」


 オリヴィアは何か納得したような顔をしていた。

 フレイヤ、お前のロリコンはめっちゃ有名なんだな。


「じゃあ彼女も一緒に行きましょう」

「あ、他にも連れが居るから、待ってくれ」

「ん?待ちませんよ」


 アオイは笑顔で答える。

 俺は聞き間違いか、置いていくような振る舞いをしているからもう一度確認した。


「………え?今、何て?」

「待ちませんと言いました」

「ほーら、だから私はオーガなんて信用できないんだよ!」


 オリヴィアはアオイに指して責める。

 アオイはそれを聞いて、冷笑する。


「フフフ、これだからエルフどもは……私はオーガではなく鬼です、そんな事も分からないなんて」

「な、なんですって!?」

「まあまあ落ち着けオリヴィア………アオイさん、俺はオリヴィアとカールを連れて行きたいんです。それは出来ないですかね?」


 俺がそう言うとアオイは嫌そうな顔をする。

 アオイさんってどこまでエルフが嫌いなんだ。

 すると馬車の御者が顔を見せる。

 御者は男性で髪はまるでワックスで固めたかの様に整えられている感じだけど、髪質はフワフワとした様な感じで、髪色は山吹色、頭からは丸い形をした可愛らしい耳があり、口から牙が見え、尻尾の先は焦げ茶色の毛が生えていた。

 まるで動物に例えると彼はライオンのような見た目をしていた。

 すると彼はとても低い声で話始める。


「アオイ殿、申し訳無いが我々も早く発車しないと………」

「……はあ、仕方ないですね、そのエルフ達も乗せてあげますよ」

「「やった!!」」


 俺とヴァイスは喜んだが、オリヴィアは嫌そうな顔をするが、特に文句を言わず馬車に乗り込もうとする。


「待って!貴方達の席はこっちです」


 そうアオイは言うと、馬車の後ろの方に誘導する。


「はい、この縄を持ってください、貴方も」


 そう言うとアオイは二本の縄を持ってきて、その馬車に縛りつけると、オリヴィアとカールに先程縛った縄を一本ずつ渡す。


「はあ?これでどうやって行くんだよ」

「簡単です、この縄でグルグルに巻かれて引き摺られてください」


 アオイは満面の笑みでこれを説明をする。

 アオイ以外の俺を含め、そこに居た人はみんな呆然と立っていた。


「いやいやアオイさん、それは冗談ですよね?まるで彼らを市中引き回しじゃあるまいし」

「いやカズト、そこじゃないでしょ、最早(もはや)座席じゃないのを指摘しなさいよ」

「いいえ、本気ですよ?」


 俺はアオイに対して寒気を感じ、鳥肌が立った。

 オリヴィアとカールは我慢の限界だった。


「じ、冗談じゃない!!何故私が引き摺られないといけないのよ!引き摺られるならカズトを殺そうとしたコイツよコイツ!」

「はあ!?ふざけるな!俺はカズト様から宰相の権利を貰ったんだ、引き摺られる権利なんて無いぞ!」

「ああ?オマエが宰相なんてまだ認められてないぞ、おいカズト、何とかそのオーガに言って、お願いよ」

「いや、ここでは言いたくはなかったけど、オリヴィア、お前も俺を殺そうとしただろ」


 すると、また沈黙が訪れる。

 オリヴィアは怒りを堪えようとしているが、隠せてはいなかった。


「…………オマエ、ここでそれを言うか?」

「うん、君主を殺害しようとした罰が彼らにはあるので、これは市中引き回し決定ですね!」


 アオイは二人を縄で縛ろうとする。


「カズト、いやカズト様、本当に申し訳なかった、だから助けて下さいお願いします!」


 オリヴィアは俺に対して物凄い勢いで懇願する。

 するとカールはオリヴィアを見て鼻で笑う。


「ハハハ、それで軍人とはお笑い草だな、そんなんだからゲルマニアはヒューマンに戦争で負けるんだ」

「何だと!?もう一度言ってみろゴラッ!」


 俺は突然始まった彼らの喧嘩を止めようとする。


「おい二人とも、落ち着いてくれ」

「落ち着けるか!このオーガに罪人みたいな対応されてるんだぞ!!」

「そうだそうだ!!」

「オマエは黙れよ、罪人だろ!」


 ………お前ら、本当は仲が良いだろ。

 まあ、引き摺られるのは可哀想なのは確かだ。


「アオイさん、俺は全然気にしてないし、別にこういう事しなくても良いんだけど……それにこういう事をしたら国際問題になりません?」


 アオイは俺の言葉を聞くと舌打ちをした。


「アオイさん?今、舌打ちを―――」

「ん?してませんよ?あと私の事は『さん』付けではなく、ただ単に『アオイ』と呼んでください、自分はそちらの方が慣れてます」

「ん?わ、分かった」


 アオイはすぐさま二人の縄をほどいた。


「それじゃあ、御者の席に一人と後ろで立つ護衛の席しか無いけどどうします?」

「じゃあ自分は後ろの護衛席に行くから、このダークエルフの罪人は前の御者席に座らせてくれ、その獣人は強そうだからな」

「誰が罪人だゴラッ!?」

「解りました、それではお乗り下さい、カズト様、ヴァイス様」


 そういえば、考えてみれば俺も様付けは慣れてないから、一応俺も言っておくか。


「アオイ、俺には様付けしなくても良いよ、そっちの方が慣れてないからな」

「そ、そうですか?でも何故ヴァイス様は貴方の事を様付けしてるんですか?」

「いや、一応ヴァイスにもそう言ったけど、その呼び方が好きだと言うから」

「それなら私も様付けさせて頂きます」

「え!何で!?」


 俺がそう言うと、突然モジモジし始める。

 まさか、アオイって俺の事が気になるのか?

 でも、俺はレナを裏切る事が出来ないし………。


「一応、格上の方ですからそう呼ばないと、心地悪いですから」

「そ、そうか、そりゃ当たり前だな」


 違ったよ、もう!

 安心したような、悲しいような、複雑な気分だよ。

 というかなんでモジモジしたんだ?

 ………まあ良いや、気にしない気にしない。


「早くお乗り下さい、もうこんな事してたら日が暮れますよ!」


 御者の方はこちらを睨みながら少しイライラしていた。

 アオイと俺とヴァイスは頭をペコッと軽く下げ、急いで馬車に乗り込んだ。

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