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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第2章 ダークエルフの国
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第37話 早朝の宮殿

 宮殿の玄関に向かうと、そこでは多くの人で溢れていた。

 彼らの身に付けてる荷物の量を見ると、多分観光客だろう。

 すると、遠くで誰かが俺に気が付いて、右手を挙げて腕を振っている。


 「カズト様ですね、お待ちしておりました!」


 よく見てみると、一人のハーフエルフの男性がそう言いながらトコトコと小走りでこちらに向かって来た。


 「おはようございます、カズト様。気分はどうですか?」

 「あ、おはようございます、気分は問題ないです。それにしてもここは人が多いっすね、この国の宮殿はいつもこんな感じなのですか?」


 突然の状況に挨拶が雑になったが、気になった事があったので俺がそう言うと、ハーフエルフの彼が説明を始める。


 「はい、いや正確には昨日までは戦時中で観光客は少なかったのですが、戦争が終わったからヒューマンや鳥獣族などの観光客が来てるんですよ。この宮殿は観光客向けに開放した建物で、ヘルヴェティア様が居住している場所はここよりもっと小さいですよ。」


 逆にそんな所に要人を泊めさせて大丈夫なのか?


 「へぇー、ところで、何故ここで俺の名前を呼んだんだ?」

 「それはエリアス様が貴方様を見つけたら連れてくるように言われまして。」


 エリアス………ああ!エリアスか!!

 さっき、ぶつかった人か!

 それにしたって用意が早いな、エルフってそうなのか?


 「ああ、なるほどね、そうでしたか、それじゃエリアスさんの所まで案内お願いします。」

 「(かしこ)まりました、こちらになります。」


 オリヴィアの部屋にカツラを置いて行ったからか、風景や宮殿などを見ていた観光客などの人々は俺を見つけると、皆が俺しか見ないようになる。

 物珍しいそうな目で見る人や軽蔑な目で見る人、少数だが深々と一礼する人も居た。

 俺が通る先は人混みで通れない程だったのが、段々と道が出来ていく。

 宮殿を出るとレッドカーペットで上ってきた道がまっすぐ通っていて、町の真ん中には少し大きめな湖があり、それを囲むように、まるで絵本か、それともジ○リの映画に出ても違和感無い様な街並みがそこに広がっていた。

 更にその町を囲むように雪が積もった山々が聳え広がっている。


 「あ、あちらです、あちらにエリアス御一行が待っております。」


 そのハーフエルフが腕を伸ばした方向の先には外交官と思わしきスーツを着たエルフの集団に混じってエリアスとオリヴィアが立っていた。

 彼らは黒鼠色に赤い線が所々入っている、厨二病が着たがりそうなカッコいいコートを着ていた。

 ただ、オリヴィアだけ違うオーラを醸し出していた。

 オリヴィアは俺を見つけるとすぐさま笑顔で手を振っていた。


 「あ、カズトさん!こっちですよ!!」


 だが、オリヴィアの笑顔は笑っているというより、怒りや憎しみが見て感じるような笑顔であった。

 周りのエルフ達はどんよりとして誰もオリヴィアを見ていなかった。

 勿論、エリアスも含めて。

 俺は動物的本能でとても嫌な予感がした為、その場から逃げようとした。


 「………いや、彼らじゃないです、知らない人です。」

 「え?でも貴方の名前を呼んでおりますよ?」

 「ひ、人違いでしょう?じゃあ俺はこれで。」


 俺が後ろを振り向いてその場から去ろうとすると、オリヴィアは俺が逃げる事に気づいたのか驚くスピードで俺に近づき、俺の右肩を掴んでいた。

 オリヴィアは俺の右肩を握り潰そうとする様な力で掴んでいた。


 「イタタタタタタイイイイイッ!!」

 「えー、人違いじゃないですよねー?それにどこ行くんですかカズトさんー?」

 「ちょっとお手洗いに、ね?」

 「ふふふ、駄目です。」


 オリヴィアは俺の右肩を掴んだまま、エリアスの所に引き摺って運んでいく。

 オリヴィアは俺をここまで案内してくれたハーフエルフに感謝を述べ、運んでいく。


 「エリアスさん、カズトさんを連れて来ましたよ、では行きましょうか。」

 「ああ、うん。」


 エリアスは怯えながら軽く返事をする。

 というより他のエルフ、オリヴィアに怯えすぎだろ。

 まあ俺も文句は言えないが……。

 取り敢えず俺を合わせて八人で、馬車には四人ずつ二台の馬車に乗り込む。

 俺が乗り込む馬車には俺に、エリアス、オリヴィアそしてヴァイスが乗り込んだ。

 俺の横にヴァイスが俺の腕に掴まって座り、正面にはオリヴィアが俺を睨みながら座る。

 残った座席にエリアスが座る。

 こんな重苦しい空気の乗り物に乗ったのは初めてだぞ。


 「あ、カズト様。」

 「はい、なんですか?」


 エリアスが俺に対して話し始める。

 

 「何か自己紹介は後ですると仰っていたので………。」

 「ああ、そうですね!自分の名前は………」

 「ええ、カズト様とこちらの魔族はヴァイスですね?」

 「ま、魔族と呼ぶのは止めてください!」


 ヴァイスは彼に対して激しく怒る。

 エリアスはヴァイスの反応を見てすぐに申し訳無さそうに謝る。


 「ああ、そうでしたか、すみません。それでは私の自己紹介をさせていただきます。私の名前は長いのでエリアスとだけ伝えておきます。元陸軍中佐で1年前に外交官になりまして宰相から直々にエスターシュタットの大使になりました。」

 「よろしくお願いします、それにしても名前、長いんですか?」

 「ええ、上流階級の方々は名前が長くて、私はエリアス・フォン・ミヒャエルとこれでも短い方なんですけど。」

 「名前が長い人ってどんな人がいるんですか?」

 「例えば陸軍大臣のフレイヤさんの本名はものすごく長くて……」


 バン!


 オリヴィアは車窓が割れない位だが打撃音が鳴る位に強く叩く。

 先程宮殿の時に見せた笑顔はどこに言ったのかと思うくらい彼女の表情は『無』そのものだった。


 「……も、もう自己紹介は良いでしょう、エリアスさん?」

 「えっ、あ、そうですね………。」


 フランツはオリヴィアによって強制的に止められた。

 すると、フランツが俺に対して手を招いて顔を近づかせる様にしている。

 俺が顔を近づかせると、小声で話し始める。


 「何でオリヴィアさんあんなに怒ってるんですか!?」

 「多分、事故なんですけどスカートをずらしたり、レナに抱きついたりしたからじゃないですかね……?」


 俺がそう言うとフランツは溜め息を吐く。


 「ハァ……そりゃ怒りますよ、オリヴィアさん男が嫌いなんですから。」

 「そ、そうだったんですか、覚えておきます。」

 「お二人さん?小声でコソコソ話されても車内は狭いので丸聞こえですよ?」


 俺がエリアスがコソコソ話をしているとオリヴィアが話に入ってくる。


 「「あ、はい……。」」


 俺とフランツはオリヴィアに返事をして、少しの間だけ無言になる。

 俺は車窓を覗くと、ロツェルンの街が段々と離れていく。


 「あれ?ロツェルンの市場で朝食を食べるんじゃないんですか?」


 俺がそう言うと、エリアスは厳しい表情を見せる。


 「実は東部エスターシュタットがノリクム連邦として独立し、内戦状態に突入してるのです。」

 「な、何だって!?」


 エスターシュタットで内戦?

 もう戦争が終わったのにまた争いを起こすのか!


 「ですから、我々は急いで首都のウィンドボナではなく、臨時首都のオエポンに向かいます。」

 「………内戦の原因は?」

 「内戦の原因は、領主にニホンジンになるから、大国の傀儡になるのは嫌だからなど理由は様々です。」


 俺は理解した、こんな厄介事を押し付けるのはこの世界で俺が嫌われている『日本人』だからだ。

 そうだよな、内戦中の国に誰が好き好んで領主になる、か……。

 あーもうクソッ!クソクソクソクソーッ!!!

 いや待てよ、それなら何故オリヴィアとエリアスが俺と一緒に付いてくる理由は何だ?

 普通なら避難とかするだろう?

 危ない地域に行くことに抵抗は無いのか?

 それとも何か狙いがあるのか?

 いや、そんな事は後で考えれば良い!

 今は自分が支配する市民を心配しないといけない。

 双方の意見を聞いて解決してやる。


 「分かった、着いたらすぐ内戦を解決する事にしよう。」

 「ほう、それは良い心構えです、カズト様。」


 エリアスは俺に対して笑顔を見せる。

 話が終わり、窓を覗くと森の中に入っていく。

 するといきなり馬車が急停止する。

 俺とヴァイスは馬車の後ろ側の席に座っていた為、俺はオリヴィア、ヴァイスはエリアスの方に飛んでいく。

 俺はオリヴィアの胸の所に顔面がぶつかる。

 意外にも彼女の胸は柔らかく、女の子である事に安心……出来ない!!

 オリヴィアに殺されると思い、すぐさま身体から離れる。


 「す、すまん、オリヴィア!だから殺さないでく………れ?」


 俺はすぐさまオリヴィアに謝るが、何故なのかオリヴィアは怒らず無言だったが、彼女はそれでも俺に対して睨んではいた。


 「どうした御者!何かあったのか?」


 車内からエリアスが叫んだが、御者は反応しなかった。

 全員はすぐさま馬車から降りる。

 すると御者は胸を撃たれていた。

 だけど、銃声はしなかった。

 まさかサイレンサー付きの銃とかで御者を撃ったのか?

 オリヴィアは死体を確認すると、何を思い込んだのか少し考え込んだが、その後は脈を測り、首を横に振る。


 「敵が近くに居るのかもしれません、静かにここから逃げましょう。」

 「お、おう、分かった。」


 エリアスは馬車から離れていき、俺は彼とヴァイスは付いて行こうとすると、オリヴィアは突然エリアスに声を掛ける。


 「おい、エリアス!」

 「なんですか?オリヴィアさん。」

 「敵なら私が見つけたよ。」

 「ほう、それは誰なんですか?森にいる盗賊とかですか?」


 するとオリヴィアは肩からぶら下げた木製のホルスターから拳銃を取り出し、その拳銃をエリアスに向ける。


 「お前だよ、エリアス………。いや、お前は誰だ?」

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