第35話 "最高"の朝
―――窓から光が覗き込む。
朝だ………もう朝なのか。
そういえば、俺は昨日レナとキスをしたんだよな………。
夢じゃなくて、本当にあった出来事なんだよなぁ………。
ああもう、ドキドキしすぎて息が苦しすぎるッ!
これが恋の息苦しさか、もしくはレナとの別れに対する胸の苦しみなのか。
俺はそんな事を考えながら、ゆっくりと毛布から出―――
「って、寒っ!?」
え!?何この寒さ!
部屋の気温、ほとんど冬やん!?
来た時、そんなに寒くなかったのに………。
早く暖炉に火を着けないと、凍え死ぬぞこの気温!
そう思いながら、急いでベットから出て、身体が寒さで小刻みに震わせながらマッチかライターを探す。
って、あれ?この暖炉に煙突口が無いから、これ飾りの暖炉じゃん!
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ寒い寒い寒い寒い寒い死ぬマジで死ぬっ!!
………ん、何だこれ?
部屋の角に普通の電球より少し大きめの電球が三つ、四つ付いた機械がある。
「ここれか!たたた多分これだな暖房器具。」
そしてスイッチらしき物を押して、電源を点ける。
すると、電球がオレンジ色に点き始める。
色的にこれは暖かいやつだ、これ。
「やややった!これで暖かくなるぅぅ!!」
その機械に向けて、手のひらを正面に出す。
……………あれ?暖かく……ない?
え、じゃあ何これ?
暖房じゃなかったらこれは一体何なんだ??
「もももういいや!適当に顔を洗ってから歯を磨いて朝食をたたた食べよううううう。」
俺はバスルームにある洗面器に向かい、顔を洗い、タオルで顔を拭き、豚毛のブラシで歯を磨く。
そういえばこの宮殿、部屋に一つずつバスルームが有るんだな、まるでホテルみたいだ。
俺はそんな事を考えながら口をうがいして、バスルームから出る。
少しずつ、部屋の気温に慣れてきた頃に、この部屋の出入口の扉からコンコンと軽く叩く音がする。
昨晩部屋を紹介したヘルヴェティア様かなと思い、俺は暖房が無い文句を言いたくなり、出入り口の方へ駆け足で向かい、俺はすぐさま返事をする。
だけど、ヘルヴェティア様じゃないかもしれない場合があるから一応確認をする。
「はーい、どちら様ですか?」
「あっ、オリヴィアです、ここを開けて下さい。」
何だよ、オリヴィアかぁ………。
………えっ?オ、オリヴィア!?
何でここに居るんだよ!?
俺は急いでカツラを頭に着け、扉を開ける。
見覚えの有るツーサイドアップに服装はタイトスカートと黒タイツで濃い鼠色の軍服を着たオリヴィアが笑顔でそこに居た。
彼女は一般的な敬礼をして挨拶をする
「おはようございますカズトさん、本日は天気の良い朝ですね。」
「ああ、ええ、そうだね?」
「………どうされました?」
「いいや、大した事ではないよ?」
………やっぱり、この子見るだけでも怖いよ!
そりゃ、あんな事をされれば俺だって怯えるよ!!
俺の足をオリヴィアに見せないようにしてるけど、めっちゃガックガクに震えてるし。
「そうですか、では入らせて下さい。」
「えっ、何で?」
「今日の予定を話そうと思いまして。」
「ここで話すのはダメかな?」
そう言うと、オリヴィアは怪しむ。
彼女は部屋を覗き込もうとする。
「………カズトさん、何か隠してますよね?」
「いや、何も?」
「じゃあ、入らせて下さいよ。」
「いや、ホントに何もないからっ!」
「じゃあ、その言葉が本当か確認する為に強行突破しますよ!」
そう言ってオリヴィアはドアを開けようとする。
俺は全体重を使って部屋のドアを押し、開けないようにするが、ヴァイスを蹴飛ばす程の蹴りを持つ軍人が、何の訓練もしていない一般人の俺が押す扉をいとも簡単に押し開ける。
俺は扉と壁の間の細い隙間に挟まれた。
「ガハッ!!」
「………怪しい物なんて何も無いじゃないですか?それに部屋が寒いし、なんで暖房は点けてないんですか?」
「だ、だから言ったろ、何も無いよ、って!!」
こいつのどこにそんな力があるんだよ!
見た目細くてか弱そうなのにゴリラみたいな馬鹿力出しやがって、クソッ!
「暖房付けないの、ねぇ?」
「……暖房器具ってこれの事か?」
俺は先程、電源を点けた機械を見せる。
オリヴィアはその機械を見て、頷く。
「それです、それはブリトン製の電気ストーブですよ。」
「電球丸出しだけど、大丈夫なのか?」
「ええ、これが電気ストーブですから、というより暖房器具と分かって電球を直接触る馬鹿は居ないでしょう?」
「………そうだな。」
いや、そりゃそうだけど、子供が居たら簡単に触れて絶対火傷するな、と思うくらい電球がデカイ。
何で網を設置しないんだろうか?
するとオリヴィアは溜め息を吐く。
「まあ、さっき電源を点けた感じですから私の部屋で話しますか、隣の部屋ですし良いですよね。」
「えっ、良いのか?」
「ただし、エスターシュタットの領主だからといって変な事をしたらぶっ殺しますよ?」
オリヴィアはニッコリと微笑みながらそう言うと、俺は寒気がして、恐怖を感じた。
俺の顔が引きつっていたのか、俺の反応を見て彼女は笑う。
「フフッ、なんて冗談ですよ、エルフじゃなかったらの場合です。」
冗談に聞こえないし、笑えないよ!
あと、絶対コイツ気づいてるだろ、俺が人間だということに。
そんな事を思いながらオリヴィアに付いて行き、彼女の部屋に着いた。
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