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転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第1章 純潔の戦姫
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第31話 三種族会談

 へルマンに引っ張られ、少し小さな部屋に着くと、そこにハーフエルフと俺と同じ人間が居た。

 一人の人間は男性で俺と同じ位の身長で見た目は三十歳位の年齢で、頭は禿げているのか、剃ったのか分からないが髪の毛が殆ど無く、体つきはガタイの良い人だ。

 もう一人は長い白髪の可憐な女性で暗闇の中に照らされた小さな一本の白い花の様で、普通の人とは違う何かのオーラを漂わせている。


 「へルマンさんありがとう、連れてきてくれてありがとうね」

 「いえいえ、本当にお待たせしました」


 綺麗な女性がヘルマンを見ながら感謝を述べた後、ヘルマンは俺の紹介を始める。


 「ムッツリーニ、ヘルヴェティア様、こちらがエスターシュタットの新領主になる人でカズトという名前だ」


 ヘルマンがそう言うと、そこに居る人間とハーフエルフがじっくりと自分を見る。


 「『エスターシュタット』じゃない『オストプロヴィンチャ』だ!それに彼はニホンジンでは無いではないか!?ニホンジンや我々ヒューマンが領主なら認めていたが、エルフの領主なら我が国は易々と承認する事は出来ないな」


 人間のムッツリーニが睨みながらこっちを見て言う。


 「安心しろ、彼はカツラを被っているだけだから」


 すると、ヘルマンは俺が着けていたカツラを取るよう諭す。

 俺がカツラを取ると二人は目を丸くする。


 「ふむ、見た目からして本当にニホンジンだな、それにしてもどこに居たんだ?これ程の見た目をした純粋なニホンジンは数が少ないと言うのに」


 へぇー、この世界はニホンジンは少ないのか。

 まあ、そりゃ異世界転移転生が活発だったのが物凄く大昔だとドライブしながらレナから聞いたし、多分自分のような純粋なニホンジンは少なくて、異種間恋愛などして混血が進んでるんだろうな。

 ラノベとか読んでたら、こっちの世界の住人と結婚する作品が多く見るからなぁ………。

 俺はそんな事を考えていると、ヘルヴェティアと呼ばれる人間は笑顔で挨拶する。


 「どうも初めましてニホンジンのカズトさん、私が言うのもなんですが、私はこの国の象徴的存在のヘルヴェティアと申しますわ、どうぞよろしくお願いします」

 「よ、よろしくお願いします」


 ………ん?国の象徴?

 ヘルヴェティアって確かこの国の名前だったはずだけど、国名の由来がこの国のハーフエルフの協力と統一を約束した「誓約同盟」を書いた元女神ってレナから聞いたけど、まさかこの可憐で美人な人じゃないよね。

 そう思っていると、突然ヘルヴェティアは頬を赤らめ、恥ずかしそうにモジモジして顔を隠す。


 「可憐で美人だなんて、カズトさんったら、もう!」


 えっ、何この人、可愛い。

 って、そうじゃない!俺が思っていた事が分かるのか!?

 凄いな、まさかこれが女神の力なのか。

 いや、ここは異世界なんだ。

 そういった類の魔法使いだって居るかもしれないし………。


 「それは違いますわ、カズトさん。神はこの世界の万物の意見を聞き入れるために読心術がありますの。能力持ち以外で保持は少ないと思いますわよ」

 「え?そ、そうですか………しかし心を読まれるなんて恥ずかしいし、やめて欲しいと思っております」

 「そうですか、それは大変失礼しましたわ。でも、私の能力凄いでしょう!?」

 「え?あ、はい、そうですね」

 「むっ、なんかそこまで凄いと思われてないように感じますが………まあ良いでしょう」


 ヘルヴェティアは誇らしげに胸を張って彼女の読心術を自慢する。

 本当に自分と同い年、もしくは少し年上くらいにしか見えない見た目だな。


 「オホン!!」


 すると、もう一人居たムッツリーニという男が咳払いをする。


 「ヘルヴェティア様、申し訳ありませんが私も自己紹介をしたいので………」


 ムッツリーニはヘルヴェティアを睨むと、横に居たハーフエルフの護衛も睨み返す。

 ヘルヴェティアは申し訳なさそうに謝る。


 「ごめんなさいムッツリーニさん、悪気は無いので」

 「いえ、こちらこそありがとうございます」


 ムッツリーニは軽く頷き、俺に目を合わせる。


 「私の名前はベニータ・ムッツリーニ、エトルリアの外務大臣だ、気軽にムッツリーニと呼んでくれたまえ」

 「はいムッツリーニさん、よろしくお願いします」


 先程の表情とは違って優しそうな表情で自己紹介をする。

 ムッツリーニは手を差し伸べ、握手を求める。

 俺も握手をして、強く握った。

 すると、腕を引っ張り、お互いの頬と頬を左右どちらとも交互に合わせ、横で一回ずつ「チュッ」と口で音を出す。

 そして頬から離れてニッコリと笑顔を見せた。

 これがいわゆる海外でよく見る『チークキス』と言われるやつか。

 ホントはこういったの女性が初めてが良かったな。

 ヘルヴェティアは心を読んでいるからか、ゲラゲラと笑っている。

 おい、ヘルヴェティア笑いすぎだろ。

 いや待てよ、一度フレイヤとは一応やってる………のか?

 その時は『チュッ』と音は出さなかったけど………。


 「そういえば、何故彼はエルフに変装してたのですか?ニホンジンは魔族とかと違って差別は少ないはずですが」

 

 ヘルヴェティアはへルマンに質問する。

するとヘルマンは真剣な表情で答える。


 「勿論、ニホンジンを嫌っている民族は私達エルフも含めて格段と減ってはいますが、今回の戦いの場所になったエスター………ゲルマニア南東部ではニホンジンを含めた異世界人による虐殺が確認されており、それが理由で現在は異世界人に対するヘイトが高いです」


 へルマンがそう言うと、ムッツリーニは突然高笑いをしてヘルマンに愚弄する。


 「馬鹿か貴様?それはデマで虐殺など起きていない!それにそんな事をすればもっとニホンジンが嫌われるだろうよ」

 「何故そんな事を言う?」

 「そんな事も判らないのか?もし彼がニホンジンだとバレたりしてみろ、オストプロヴィンチャでのニホンジン嫌いは半端ないのは知っているだろうっ!それでニホンジンを送り付けたゲルマニアの責任が問われ、『エルフは嘘つき』のレッテルを貼られるリスクは責任はどう取るんだ!?我々ヒューマンは責任を取らないからなっ!!」


 ムッツリーニはそう強く否定し、そして反論する。

 ムッツリーニはエルフを下に見たりするのに、その下に見るエルフの国を心配するのはどこか違うよな。

 まるで今後の二国間の関係を重視しているようだ。

 ヘルマンはムッツリーニにそう言われると深い溜め息を吐いて答える。


 「その時は我々が何とかしますよ」

 「ほほう、つまりゲルマニアはオストプロヴィンチャに介入するという事だな。もしそんな事をしてみろ、我が国はもう一度、貴様等エルフと戦争する事になるぞ!」


 ムッツリーニは激怒して、ヘルマンに怒鳴る。

 ヘルヴェティアはムッツリーニの言葉を聞いて、戦争が再び起こる事に懸念したのか、ムッツリーニ寄りの発言をする。


 「ヘルマン、これに関しては私は彼に譲歩するべきだと思うわ。だって、もう戦争はこりごりでしょう?」


 無論、ヘルマンは俺をニホンジンの見た目で支配する事は先程のホテルでのレナと俺を含めた三人での話し合いでも決まっていたが、やはりエルフの姿で支配した方がその後のフレイヤによる支配も簡単に委譲できるから。


 「………良いでしょう、エトルリア側の意見を受け入れましょう」


 だが、ヘルマンは最終的にムッツリーニの言葉を受け入れる。


 「という事で、申し訳無いがカズトさん、その格好で行ってもらいたい。出来るかな?」


 勿論、俺はニホンジンの見た目で行くことを覚悟していたし、特には問題は無い。

 俺は胸を張りながら、手を乗せ自信満々な表情で言う。


 「任せてください!このカズトが完璧にその地域の領主をさせて頂きます!!」


 まあ、不安は物凄くあるが、任されたんだから仕方がない。

 ………まあ、無理矢理やらされたんだけどね。


 「そうですか!彼にそこまでの勇気があるというのなら今宵のパーティーを我々は楽しみましょう!我々四カ国の繁栄と新たなる国の王のカズトの成長を祈って!!」


 ヘルヴェティアは笑顔でパーティーを楽しむように諭す。

 ムッツリーニはヘルヴェティアの言葉に軽く頷き、そして笑顔になる。


 「うむ、そうですな。ところでヘルマンよ、フレイヤ陸軍大臣は来ているのかな?」


 ムッツリーニはニヤニヤと嬉しそうに笑顔にヘルマンに聞くと、ヘルマンは鼻で笑う。


 「ああ、勿論来ているよ、まあ人間(ヒューマン)の君の事など気に留めないだろう」


 ヘルマンはそう言うが、もう既にその場には居なかった。


 「カズト君、ムッツリーニはどこに行った?」

 「ムッツリーニさんならフレイヤが居ると判った瞬間、俺とヘルヴェティアに軽くお別れの挨拶してどっか行きましたよ?」


 ムッツリーニが去っていった方向を俺が指差すと、ヘルマンは呆れた顔をする。


 「……………そうか、まあ良い。ではカズト君はもう話は済んだのだから今夜のパーティーを楽しみなさい」


 ヘルマンはそう言って急いでムッツリーニを追いかける。

 するとヘルヴェティアは俺の近くに来ると、笑顔になって説明を始める。


 「カズトさん、我が国の国民食のロスティを食べると良いわ。元は農家や傭兵の簡単な朝食だった物だから、こんなパーティーには似合わないが味は保証するわよ。あと自慢のハムやケーゼフォンデュも召し上がって下さいな!」

 「は、はい!!」


 ウキウキと笑顔で自国の料理を紹介したヘルヴェティアに握手をしてから軽く一礼して、俺はその場所から立ち去る。

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