表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第3章 エスターシュタット戦争
100/105

第100話 尋問

 するとドア自体がそのまま奥の方へと大きな音を立てながら倒れる。

 そして銃を建物内に向け、敵が居ないかを魔石が入った持ち運び用のランプを取り出す。

 魔石に魔力を注ぐと、魔石の輝きがぼんやりとした柔らかい感じの明かりになる。

 兵士はその魔石ランプを使って建物内の状況を確認する。

 俺もその建物の中を見ると、戦禍から避難の為か、書類や荷物など様々な物が床に散らかっている。

 周りの確認を行った兵士は銃をしまうと


「異常無し……どうぞ陛下、お入りくださいませ」

「ありがとう、とりあえずマルクスを寝かせなきゃ」


 俺はその兵士に軽く感謝を言うと、すぐに建物の中に入り、玄関近くのリビングと思われる部屋にあった古めかしい粗末なソファにゆっくりと音を立てない様にマルクスを寝かせる。

 マルクスは目を覚ますと彼は俺を見ると悔しそうな顔をしている。


「ご主人様申し訳無い。私がすぐにあの敵の接近に気がついていたら………」

「いや、お前は悪くない。俺が戦闘がほぼ未経験にも係わらず戦地の真ん中にやって来たんだ。そしてお前を危険な目に遭わせた、本当に済まない………」


 すると近くに居た兵士がゆっくりと俺に近づく。

 ヴァイスはその兵士に警戒し、そいつを睨みつけながら俺の前に立つ。


「安心しろ魔族。ボク……いや自分は陛下に対して何もしねえから」

「ヴァイス、俺は大丈夫だからマルクスを診てくれ」

「わ、分かったのです」


 ヴァイスはマルクスの近くに寄り添い、彼の状態を見張っている。

 俺はそれを確認して、その兵士の目を見る。


「まずは名前を名乗ってくれ、話はそれからだ」

「はっ陛下。自分の名前はヴィクトルと………いえ、ヴィクトリアと申します。階級は伍長であります」


 ん?なんでコイツは男装してるんだ?

 男装する必要なんてないじゃないか。

 怪しすぎる………。


「俺に近づくという事は何かしらの理由があって近づいたんだよな?」

「はい、仰る通りで御座います。失礼ながら自分は陛下に対して質問をしたいと思っております」


 ヴィクトリアはそう言って頭を下げ、質問をしたいと頼む。


「構わないよ、疑問があるのは」

「ありがとうございます、では陛下はもしこの戦争に勝つとして、負けたエルフに対してどうするおつもりなのか聞いておきたいです」


 俺は別に彼等エルフにも何かしらの考えがあって戦っているんなら、その考えを出来れば聞いてあげて導入を考えるが、俺にはそんな力は無いからな………。

 皇帝陛下と言っても、俺より民族の同じカールの意見をみんなは聴くだろうな……………。


「俺は極悪で残忍なエルフではない限り、キツい懲罰を与える予定はないと君に伝えておくよ。それだけか?」

「え?他に質問をしてもよろしいのでしょうか?」

「まあ、今はこんな所で篭らないといけない状況だからな。変な質問でない限り答えるよ」

「そうですね………いえ、もう質問は大丈夫です」


 ふむ、話は終わったのか………。

 とりあえず部屋は散らかっているが、俺も休みたいな。

 あと寒い!冬に近づいてるからか、寒過ぎる!

 暖炉もあるし、敵の脅威が無くなってから後で火を入れるか。

 すると扉からノックするような音が二回聞こえる。


「陛下はここでお待ち下さい、確認してきます」

「ああ、分かった」


 そう言ってヴィクトリアは独特な形をした拳銃をホルスターから取り出し、スライドを引いて弾が入ってるかを確認する。

 そしてヴィクトリアは扉の方への近づき、二回ノックする。


「誰だ!名前を言え!!」


 すると扉の外から声が聞こえる。


「私だ、アオイだ。敵は全て掃討したから問題無い」


 アオイの声だ。

 ヴィクトリアはゆっくりと扉を開け、外を確認する。

 するとアオイは完全に扉を開け、建物の中に入る。


「アオイ、大丈夫だったか?」

「はい、私は何ともありません。それよりもカズト様、マルクス君のご容態は………?」


 俺はマルクスの方を見る。

 マルクスは目を瞑って、ゆっくりとした呼吸をしながらグッスリと寝ていた。


「見たところ大丈夫だと思う。ところであのエルフは連れて来たのか?」


 するとアオイは外に出ると思いきや、すぐに建物に入り、例のエルフ兵を引っ張ってくる。

 女性の声、女だったのか………。

 彼女は両手首を縄で縛り、大声で喚き散らしながら、アオイに対して暴言を吐く。


「離せオーグ!お前ら裏切り者の蛮族風情が!!」

「何だと貴様、それに私はオーグではないぞ、鬼だ!」


 アオイは鞘から刀を引き抜こうとしたが、すぐに俺は刀の鵐目を押さえ、止めに入る。


「待て待て!少しこの兵士と話がしたいんだ。だからアオイ深呼吸しようか、な?」


 俺がそう言うと、不機嫌な顔をしながらアオイは大きく息を吸い込み、溜め息を吐く。


「落ち着きました。今のは武士(もののふ)の道を外れる事をした、申し訳無い」

「いや、別に謝るほどじゃないから………」


 すると俺はどこからか視線を感じる。

 俺はそちらの方な顔を向けると、その女エルフは俺をまじまじと見ながら、鼻で笑う。


「本当にニホンジンが君主なんだな。ダークエルフどもが認めるとかどうかしてるよ」

「そうだな、世界一の嫌われ者であるニホンジンが君主になるのは驚きだもんな」


 まあ強がってこんな事を言ってるが、ダークエルフの皆が決めたとは言いにくいからな。あと、もっと気になるのが後ろにいるヴァイスが唸りながらそのエルフを睨みつけてるんだよな………。


「とりあえずお前の名前を知りたい。名前は何て言うんだ?」

「ほう、聞きたいか。なら顔を近づけろニホンジン」

「俺の名前はカズトだ。ニホンジンって呼ぶのは止めろ」


 そう言って俺は女エルフの顔に近づくと、彼女は唾を俺の顔にめがけて飛ばす。

 目の前だった為、飛ばされた大半の唾が俺の顔面に直撃した。

 それを見たヴァイスは堪忍袋の緒が切れたのか、その女エルフ頭を鷲掴みし、地面に叩きつける。

 俺はアオイからハンカチを渡され、顔に付いた女エルフの唾を拭き取る。


「止めろヴァイス、ただ唾を飛ばされただけだ。俺は大丈夫だから手を離せ!」

「嫌なのです!カズト様に唾を飛ばしただけとはいえ、危害を加えたことは変わらないのですっ!!」

「俺は大丈夫だって言ってるんだから手を離せヴァイス!」


 俺がそう言いながらヴァイスにしがみつく、無理矢理女エルフから離れようとさせる。

 ヴァイスは抱きつかれた事に驚いたのか、「キャッ!」と甲高い声を出して後ろに倒れる。

 俺はそのヴァイスの動きに対応出来ず、地面に後頭部を強くぶつける。


「い、痛てぇ!あ、頭が割れる!!」

「ご、ごめんなさいなのですカズト様」


 アオイは俺の姿を見て、右手で顔を押さえ、女エルフは蔑んだ顔をしながら嘲笑い、こちらを見ている。


「何だろう、貴様の姿を見て私達はこんな奴に負けたのかって思ってしまったよ………」


 どうしよう、コメントに困る言葉が来たぞ。

 俺は特に今回の戦争に助言はしているが、大した事はしてないしな。

 俺は直ぐに起き上がり、咳払いをする。

 

「と、とりあえず、名前を言って貰えないだろうか。そして、何故俺を殺そうとしたのか………まあ、大体の予想はつくけどな」


 すると女エルフは俺の顔を見て話し始める。


「私の名前はローゼ。階級は少佐でトレント出身だ」

「トレント出身………」


 アオイは深刻そうな顔をしながらそう呟く。

 俺はアオイの表情に対して不思議に思ったので聞いてみた。


「アオイ、トレントってどこだ?」

「トレントですか…?トレントはオウストリ………エスターシュタットの西部に位置する地域で多くのニホンジンなどの異世界からやって来た人を先祖に持つ人々が住んでいた地域です。実は先のゲルマニアとエトルリアの戦争で講和条約により、南部トレントは現地住民への説明無しでエトルリアへの割譲が決まってます」

  「ハハハ、つまり日本人が住んでいた事で自分の故郷が失ったと言いたいのか?」


 そう俺が言うと、俺はすぐにローゼの襟元を掴み、そして持ち上げる。


「それはお門違いだよローゼさんよぉ………割譲に対して怒るのは俺ではなく、その条約を考えた奴を攻撃するんだったな!もし俺を殺したとしても変わる事は無いんだよ!!」

「変わる!摂政のオリヴィア様がそう言ってたんだ。私は彼女を信じてここまでやって来たんだ」


 オリヴィア………ああ、思い出した。

 あのヤバいメイド……ではなく元近衛兵の師団長だっけ?

 今は確かバーベンベルクのただのゲルマニアの大使?とかになっていたはず。

 そいつが何故摂政なんかに………。


「じゃあ聞いてやるよ、オリヴィアは一体何て言ってたんだ!」

「エスターシュタットをゲルマニア帝国の一諸侯領にし、再びエトルリア王国に攻め込み、そして失地を回復するのだ!!」


 なるほど、再び戦争の道を歩むというのか。

 だがエスターシュタットのみならず、ゲルマニアでは内戦が行われているし、俺が君主でない限り、エトルリアが許さないだろう。

 安定する前にエスターシュタットが占領されてしまう。

 そうなれば再びこの地は戦火に巻き込まれるだろう。


「バカバカしい、あまりにも不可能だ。ゲルマニアで内戦、ここエスターシュタットは内戦が解決したとしてもボロボロ。俺が支配しないのだとしたら、一体誰がこのエスターシュタットを統治するんだ?」


 俺がそう言うと、ローゼは不気味な笑みを浮かべながら言う。


「ふん、聞いて驚け!ウチの国家元首はな………あのアンナ女王陛下さ!!」


 アンナ………アンナだと!?

 そんな…あ、有り得る訳が無い………。

 アンナは援軍を得る為に東にあるパンノニア王国に向かったはず………それなのに西側の、しかも敵のバーベンベルクに向かう訳………。

 俺はローゼの発言に困惑していると、ヴィクトリアがローゼの襟元を掴み、そして彼女の頬を強く殴った。

 ローゼは殴り飛ばされ、壁に強く頭を打つ。

 ヴィクトリアは息を荒くしている。


「ふ、ふざけるのも大概にしろ!アンナ様が裏切るわけなかろう!!」


 ヴィクトリアは憤慨しながら、そうローゼに対して叫ぶ。

 俺はゆっくりとローゼを起こし、元の場所に座らせる。

 そうだ、確かに俺もこの話を信じる事が出来ない。

 ここでは俺は確認する事は出来ない。

 とりあえずスラなら新しい情報を持っているかもしれない。

 アオイが安全だと言っていたし、とりあえずスラを探しに行くか………。


「アオイとヴィクトリアはこのローゼを監視してくれ、俺はスラに話がある!」

「「りょ、了解!!」」

「ヴァイスはマルクスを看護していてくれ」

「畏まりましたなのです!」


 俺はそう言って建物を飛び出し、スラを探しに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ