表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移転生者が嫌われる世界で俺は成り上がる!  作者: ヨッシー
第1章 純潔の戦姫
1/105

第1話 翠眼のエルフ

 ―――ペルソナ・ノン・グラータ。 

 外交用語としてよく使われる言葉。

 意味はラテン語で「(いと)わしい人物」「好ましからざる人物」を意味する。



 俺はいつもの平凡な生活を送っていたのに、どうして俺は今、両手を空高く挙げて、エルフの女の子に銃口を向けられているんだ!?


「………貴方達異世界人なんて存在しなければ良かったのよ。ニホンジンの貴方はここで死んでもらうわ!!」

 

 本当にどうしてこうなったんだああああああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!



 時間は少しだけ戻る。

 俺の名前は炬紫一翔こむらさきかずと、どこにでも居る、何の変哲もない只の高校生だ。

 そんな俺は、先程まで平凡な学生生活を送っていたはず………。

 それなのに俺の目の前には今までの日常とは思えない光景が目の前にあった。


 周りは煙や霧かよく見えなくて分からないが、血肉や火薬の臭いがして、道の至る所には腸が飛び出た人、顔や手、足が吹っ飛んで「死にたくない」や「殺してくれ」などの多くのうめき声が響き、怪我人や(しかばね)がそこらじゅうに横たわっている。


 そして、その光景を作り出している人達も普通の人では無く、全身黒ずくめの軍服を着ていて、持っている武器は銃や剣など様々で、中には魔法を使っている人も居た。


「……え?なんだよこれ?」


 この光景を見た瞬間、俺は一瞬思考が停止した。


(おいおい嘘だろ?一体どうなってるんだ?)


 こんなの普通じゃないし有り得ない事だが、この状況を見る限りそうとしか思えない。


 それにさっきまでは学校の帰りだったのにいつの間にか真っ暗になって夜になっているし、周りの建物は燃えていたり倒壊している建物もあった。


「なんなんだこれは……?」


 もう訳が分からなかった。

だってそうだろ?学校からの帰り道を歩いていたらいきなり銃撃戦が始まるんだぜ?

 しかもその銃撃戦は俺が知っているような物じゃなく、映画とかでしか見たことの無い様なものだった。


 そして、銃撃戦が始まってから数秒後、俺に向かって1人の男の声が聞こえてきた。


「Ei、 tu! Cosa fai!」

「うおっ!?」


 俺は突然声を掛けられた事に驚き、慌てて振り返るとそこには、20代前半くらいの身長が高く細身の男が立っていた。

 男は迷彩柄の戦闘服に身を包み、腰には拳銃を装備していて、右手にはライフルを持っていた。

 俺は殺されると思い、その場から離れた瞬間、その兵士はこちらに向かってる銃口を向け発砲し始めた。

 だが、上手く走れなかったのかその銃弾を避ける事は出来ず、腹に命中した。


「ぐふぅっ!!」


 痛い……めっちゃ痛い……。

 俺は撃たれた腹部を抑えながらその場に倒れ込んだ。


「あ……あぁ……あああああっ!!!」


 痛みに耐えきれず叫び声を上げてしまう。

 するとその兵士はゆっくりと近づこうとする。

 もう駄目だ、トドメを刺されると思い覚悟した。


 すると突然どこからか叫び声がして、一斉に銃撃が起きる。

 どこからともなく撃たれた弾は流れ弾なのか。

 俺を殺そうとした兵士も胸を撃たれ、その場に倒れる。

 俺は怖くなり、その場で口を押さえながら痛みに耐え、銃弾が頭上をビュンビュン飛ぶような場所でうずくまっていた。


 


 ーーー日が落ち始め、至る所からホイッスルの音が響き渡る。

 その瞬間、銃撃戦の音が順々と収まり、街に静寂が広がる。

 俺は痛みで気絶をしていたのか目を覚まし、ゆっくりと身体を起こし、辺りを見渡す。


 そこはまるで地獄のような景色が広がっており、爆撃で崩れた沢山の瓦礫と死体の山が出来ていた。

 廃墟とかした街に電灯などの明かりも一切無く、真っ暗な街は月の明かりで薄暗いが白く照らされている。


「本当に何なんだココは……」


 そう言った矢先に腹に痛みを感じる。

 そうだった、さっき撃たれたんだった。

 だが、撃たれた時より痛みは少ない。

 俺は恐る恐る、傷口を見てみると既に穴が塞がっており、痕は残っているが血は流れていなかった。


「………本当に何なんだよ」


 とりあえず何かここでの手がかりを探せるのではないか、そう思い走り始める。


 とりあえず携帯が手元にあったので、真っ先に家族に電話しようとするが、全然繋がらない。

 どうやら電波が届いていない、圏外のようだ。

 俺は携帯をポケットに仕舞い込んだとほとんど同じ頃に辺りの煙も段々と晴れてきた。


 しかし、自分の目に映ったのは見慣れた日本のアスファルトの道と電線、そして同じような家々が並ぶ閑静な住宅街ではなく、石畳の道とレンガや石で出来た家が並ぶ遠い異国の町の風景だった。


 俺は足を止め、「俺は悪夢を見ているのか?」と口から言葉が漏れた。


 しかし、そこらに転がっている物にも触れるし、もちろん定番のほっぺを強く(つね)った。

 頬が痛くなるまで(つね)ってみたが、じわじわと痛くなるだけだ。

 俺はここで今居る場所が夢ではないことがわかった。


 そこで俺はここが現実だと認識し、その場でじっくりと考えていると、俺は二つの仮説に辿り着いた。

 ひとつは有り得ないが時間旅行(タイムスリープ)だ。

 景色を見て、日本ではなく異国、特にヨーロッパの景色にそっくりである。

 特に昔観た第一次世界大戦を舞台にした戦争映画で見た様な景色が広がっている。 

 古めかしい自動車に馬車、電灯もモダンなものでは無くレトロな黒い棒立ちの電灯など。

 まるで映画の世界に入ったかのような景色だ。


 そしてもうひとつの仮説は異世界に召喚されたかもしれない。

 ただし異世界と言っても俺は小説や漫画などの情報しか無いが、その作品とかを見比べて確認したいと思う。

 まず第一に景色では判別はできない。

 何故なら先程考えた通り、まるで古いヨーロッパの街並みのような景色である。


 なので今できる確認方法は周りに横たわっている死体とかを見ながら人間とは違う種族を見つけるか、天体や空の景色が普通とは違うかを細かく調べる。


 だが生憎(あいにく)、空は煙の所為か真っ黒に曇っているため太陽、もしくは月などの天体をを見ることはできない。

 なので、人種を調べるため死体を見ることから始める。


 というか冷静に考えたら俺、何で死体を探ろうとしているんだろうか………。

 普通なら気持ちが悪くて、吐いて、小便漏らしてもおかしくない状況なのに………。

 まるで今の俺が今までの俺じゃないようだ。

 だけどこんな頭がおかしくなっている状況がチャンスだろう。

 とりあえず探ろう、探るしかない。

 


 まず最初に緑色のような迷彩服を着ている人たちを見たが、彼らはみな俺と同じ変哲もない只の人間だった。


 やっぱり俺は時間旅行(タイムスリープ)しているのか………。

 つまり一つ目の仮説が正しければ、俺は何かの衝撃で過去の世界に来たのか。

 異世界だったらこの後どう生活すればいいかも検討付かないし、魔法もそういった物も感じないし、見つからない。


 なら、この過去の世界で予言者とかにでもなって金持ちになるか、もしくは今後起きる災厄から助けるヒーローとかになるのも悪くないな!

 だが、次に調べた軍人によって時間旅行タイムスリープの考えが揺らぐ。


 次は自分と見た目が同じ軍服を着ているが、軍服は紺青(こんじょう)色や鼠色で、頭頂部に鉄で出来た角のような鉄兜(てつかぶと)をつけている人を見つけた。

 瞳孔は青色や緑色が多く、鉄兜を外すと黄金色(こがねいろ)に輝く金髪のロングヘアーが多い。

 というより、全員だ。

 しかも、耳の先は尖がっている。

 

 あ、エルフだ。

 

 と思ったが、その事実が分かった瞬間落胆した。

 ははは、冗談だと言ってくれよ………。

 異世界なら何で近代的な武器とか持ってるんだよ、杖を持てよ、剣を持てよ、弓を持てよ。

 何で鎧じゃなくて軍服なんだよ、おかしいだろ!

 体力も強くなったように感じないし、変わったのは死体も弄れる様な頭のおかしい精神じゃん。


 ええええ、じゃあ俺は知識豊富で近代化された世界で一体どう無双するんだよ!


 パキッ


 すると後ろから小枝が折れる音がした。

 振り向くとそこに銃を構えた一人の兵士が立っていた。

 

 「Beweg dich nicht! Wenn du einen Schritt machst, bringe ich dich um!!」


 その兵士は異国の言葉を叫びながら銃口をこちらに向ける。


 えっ、いや嘘だろ!?

 俺はここに来てそんなに経ってないのにもう殺されるのか?


 って、そんな事を考えている場合じゃない!

 ヤバい……体が震えてる………。

 俺は恐怖で怖がっているのか。

 クソッ、冗談じゃない!早く逃げなきゃ。

 ………いや待てよ、銃から逃げれるわけないじゃん。

 逃げても追い込まれて殺されるだけだ!


 なら、ここで戦うか?

 俺はそう思って、近くに落ちている泥だらけの拳銃を拾い上げる。

 その俺の行動を見た兵士が、俺に銃口を向け、引き金に指を乗せる。


 そして沈黙が数秒続いた………。

 

「………って、無理だあああああああああああああ!!」

 

 俺は拳銃を投げ捨て、銃口を構える兵士に向かって走り出す。 

 というか、銃なんかそもそも撃った事が無いのに当てれるか!!

 クソッ、これならどっかの高校生探偵の様にハワイで親父に教われば良かったんだ!!


 人を殺すと考えるだけでも手が震えるから、銃が扱えても無理な気がする。


 だが、一か八かだ。

 どっかの番組で銃口の先と引き金をよく見れば弾は避けれるって見たような気がする。

 それを行って、弾を避けて、あいつにタックルをすればイケる!!


 って、バカか俺は!

 そんな事普通の人間が出来る訳が無いじゃないかァ!!


 厨二病だった頃に弾を避ければなんかかっこいいとか考えてた時に、確か約毎秒900メートルのスピードってどこかのサイトで読んだはず。

 約毎秒約900メートルのスピードで飛んでくる弾をどうやって避けるんだよ!!

 冷静さ失ってるし、もう疲れてきたよ。


 嗚呼、神様!

 今度生まれ変わったら、収入は普通より上の家庭で、幼馴染と義理の姉と妹と、それに許嫁(いいなずけ)が居る世界に転生させてくださいっ!!


 すると兵士は俺の行動に驚いたのか、急いで引き金を引き、銃を発砲する。

 俺は死ぬと思い、目を瞑るが、近距離で発砲した弾は顔の右側を掠める。

 そして、ボルトアクション式のライフルだからか、装填に時間を要している。


 多分新兵なんだろうか?

 なら今がチャンスだ!

 タックルをして、どんな手段でも気絶させよう。 

 俺はそう考えながら、その兵士の目の前に来る。兵士は驚いた表情で銃を装填しようとするがもう遅い。

 俺はその兵士に抱きつき、一緒に地面に倒れる。

 

「キャッ!?」

「よ、よし捕まえた、あとはこいつをどうしようか………って、あれ?」


 その兵士は俺がタックルで押し倒した衝撃で気絶していた。

 俺はそれに気づくと、疲れが肩にどっと来て、溜め息を吐きながら俺は言う。


「よ、よかったぁ………!!!」

 

 ………いや、まだ安心するのは早い。

 俺はその兵士が気絶では無く死んだのかを確認するためにそっとひっくり返し、鉄兜を外す。

 

 ―――――寝ているだけで、まだ息はある。

 死んでいるのではなく、気絶しているだけか………。

 俺はすぐに殺すべきか考えたが、やはり怖いものは怖い。

 俺にはそんな度胸がない。


 とりあえず逃げるべきか。

 そう思った俺はこの兵士の近くで顔などをよく見てみるとただの女性の兵士だと思っていた兵士が女エルフだったことに俺は気づいた。

 俺はそれに対して、空に拳を天高く挙げ、ガッツポーズをしながら心の中で叫ぶ。

 

(き、金髪翠眼きんぱつすいがん美少女エルフだあああぁぁぁ!!!!!!!!)

 

 実際に大声で口から叫びそうになったが、死体や怪我人が多数転がっていたり、横たわっていたりしている場所だ。


 この状況を見ると未だにこの町では戦争が続いている場所かもしれない。

 だから、こんな所では大声は出せない、ホントは声を出したいけど………。


 だが、よく見ると本当に綺麗な女の子のエルフだ。

 髪の毛も腰まで届くほど長く、そして繊細だ。

 顔もモデルやアイドルのように奇麗に整っている。


 これがモデルや俳優、女優で見られる顔の黄金比か、って言う位に完璧だ。

 そういえば銃を向けられた時のあの目はエメラルド色に輝いていて、

 背の高さは俺より少し低めだが、見た目は俺と同じ高校生とも変わらない高さだ。


 しかし、見惚れている場合ではない。

 彼女の左腕から血が少しだけ流れて、服が血で染まっている。

 倒れた衝撃で出血したのかと思ったが、後頭部とか背中には目立つような大きな傷はない。


 俺を殺そうとした奴だし、このまま放置しようとしたが、見殺しにはできない自分がいる。

 それに助けたら何か恩返しをしてくれるかもしれないし、助けるのも悪くないかもしれない。



 そう思った俺は近くの兵士の死体から傷口を洗うための水筒と、偶然衛生兵の死体も近くにあったので包帯もゲットした。


 いやー、ここで元保健委員の技術が試されるとは、まあこんな大きな怪我をした人を助けたことが無いから出来るか分からないけど………。

 よし、まずは服を脱がさないとな。

 決してエルフの裸が見たいとか………思ってないし。




 ―――――とりあえず左腕を洗って、包帯で巻いた応急処置は終わった。


 女性の体を触るとか前の世界でそんな事が殆どなかったからな。

 役得、役得………いやいや違う違う。

 本当に助かってよかった、うん、良かった。


 すると突然、その怪我をしていた女エルフは目を覚ます。

 彼女は辺りを見渡し、俺を見つけた瞬間、怯えた顔で呼吸が荒々しくなり、すぐにまた辺りを見渡す。

 その女エルフは近くに落ちている拳銃を見つけると、その銃を手に取って銃口を俺に向ける。


「両手を上げなさい、ヒューマン!」


 彼女の顔は怒りと恐怖で満ちていた。

 俺は言われた通りにすぐに両手を挙げ、この世界が違う世界だから言葉が通じるわけないと思ったが、一応日本語で言う。


 ………あれ? そういえば俺、ちょっと前からもそうだが彼女の言葉を理解してなかったか?


「俺はお前を助けようとしただけだ。た、だから他は何もしていない。信じてくれ」


 すると、彼女は驚いた表情で話し始める。


「あ、あなた、ヒューマンの言葉じゃなくてエルフ語を喋れるの?」

 

 そう言った彼女だが、次の瞬間痛みに襲われたのか、突然声を出す。


「ッッ!?」

 

 彼女は右手で自分の左腕を押さえ、持っていた銃を地面に落とす。

 俺は痛む彼女に心配して近づく。


「あ、動かない方が良いよ?だって怪我してるから……」


 そう言うと、彼女はまた銃を拾い銃口を向けるが、数秒で溜め息を吐いて銃口を下に向ける。 


「あ、貴方が私を処置をしたのね。一応感謝はしておくわ。でも、私は貴方の敵よ。な、なぜ私を助けたの?」

 

 彼女はそう言うが、俺は思っていたことを口に出す。


「そ、それは、人として当たり前のことだから、かな?」

 

 そう言うと、彼女は呆れた顔をする。


「はっ、ヒューマンなんて、貴方達なんか野蛮なオーグと同じよ! 下衆(げす)で残酷で下品なのよ!!」


 俺はエルフのその態度にムッと胸糞悪く感じ、彼女に反論する。


「オイオイ言いすぎじゃないか?あと知らねぇよ、ンな事。だって俺はこの世界の人間じゃない、俺は『日本人』だからな? この世界の事なんか全然ミジンコほど知らないからな、フン!!」

「あなたそれ本気? 私達のエルフの国とあなた達ヒューマンの国はもう長く戦争をしているのに知らないなんて………って、そういえばさっき貴方ニホンジンって、まさか貴方!?」


 そう言うと、突如彼女はまた銃口を俺に向けた。

 俺は彼女の行動に驚き、銃を下すように説得する。

 

「ま、待て!!落ち着けって、取りあえず銃を下せ」

「落ち着けって?その無駄口を叩くのは止めなさい!!」


彼女は大声を出し、睨んでくる。

俺は理由を聞こうと彼女に質問をする。


「無駄口って、俺が一体何をしたって言うんだよ」

「ニホンジンの分際でしらばっくれないで!」


 そして彼女が吐いた次の言葉を俺は信じることができなかった。


「あなた達ニホンジンのせいで私達の世界はとても長い戦争期に入ったのよ!!」 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ