ボロアパート
男に連れて行かれたアパートを見てプードルは目が点になりました
絵に書いたような2階建てのボロアパート
隣の家のブロック塀との境にある駐輪場には粗大ゴミのような自転車が三台置いてあります
三台が三台とも粗大ゴミです
外壁のトタンはこれ以上汚らしいサビ方はないだろうと言うくらいまだらにおどろおどろしく錆びています
それに反して階段やその手すりは均一に錆びて深いエビ茶色になっていました
錆びた踏板が拔けることを心配して、二階の住人はいつもこの階段をぞ〜っと上ります
その階段を上って男は二階の部屋に入りました
「ここが俺の部屋」
「俺が浮浪者じゃなくて良かったな」
「お陰で雨がしのげる」
…何このボロアパートに住んでるのを自慢してんの?
この犬さらい
「あ、姫プーここ動物禁止だから吠えんなよ?」
…何、姫プーって
説明しなさいよ
「きゃんきゃん」
「わっ、だから吠えんなって」
「俺、花沢草太、よろしくな」
「で、お前はお姫様みたいなプードルだから姫プーね」
…由来は気にいったわ
だけど略して呼ぶのはやめて
まるでお姫様がおならしたみたいじゃないの
「きゃんきゃん」
「ん、なんだ腹が減ったのか?」
「しようがないな、ちょっと角の駄菓子屋のおばちゃんちに行ってドックフード譲ってもらってくる」
「待ってな」
いやいや、そうじゃなくて…
ああ、出てっちゃったわ、客に座布団も出さないで
姫プーは連れてこられた六畳の部屋を見渡しました
はあ、それにしてもこのアパート部屋の中もボロいわね…
人間ってこんなところでも暮らしていけるのね
家財道具もテーブルとパソコンしかないわ
洗濯物は隅にまとめて山になってる
取り込んだのをたたまず置いてあるのね
タンスすらないものねこの部屋
どんだけ貧乏なの?
うぅ…
この畳不潔っぽい
なんか湿っとしてる
きのこが生えててもおかしくない感じ
ここに座っても大丈夫かしら
皮膚病とかにならないかな…
どこかふかふかしたところないの?
あ、あるじゃない
洗濯物の山
トコトコと姫プーは洗濯物の山の頂上に向かいました
そしてそこで一休みしょうと腰を落としかけたのですが、山の頂上には…
きゃっ、パンツ
いやぁっー