第捌話 《告白された高梨龍太》
《告白された高梨龍太》
二千二十二年、六月二日。
季節は梅雨。
「起立、礼」
「「ありがとうございました」」
雨雲が太陽を包むように隠し、少しだけ教室の雰囲気も暗く感じる。
この身体になって、二ヶ月が経った。
きっと、慣れたのだろう。
「ねえ高梨君、今日の体育祭委員会議の事なんだけど……」
「ん?どうしたの桜木さん?」
「まだ体育祭のリレー順が決まってなくて……」
「ああ、いいよ。俺も手伝う」
「よ、よかった!じゃあまた放課後!」
彼女は笑顔を見せ、小さく礼をした。
「フーフー!」
「……なんだ聡」
「龍太君はモテますなぁ!」
相変わらず、こいつは能天気だ。
「あのな……」
「それで?お前はどうすんだよ?」
「は?」
「放課後だよ放課後!」
「……いやいや、桜木さんは別にそういう気が合って誘ったわけじゃないだろ」
「でもお前ら最近、よく一緒に話してるじゃん?」
聡はニヤニヤしながらこちらを見る。
「う……うぜぇ……」
「今日はありがとう、高梨君」
放課後、仕事も終わって帰り支度をする二人。
「全然いいよ、俺も暇だしさ」
「ふふっ……」
教科書や筆箱を鞄に詰め込みながら、彼女はニコッと笑う。
「……高梨君って優しいよね」
「また突然だな」
暗い教室に、二人の声が響く。
「ね、ねえ……高梨君」
「何?」
「…………高梨君って、好きな人とかいる?」
彼女は頬を紅に染めながら、潤んだ瞳でこちらを見る。
「……えっと、いないけど」
「そ、そう……」
「……か、帰ろうぜ」
「…………うん」
緊張のあまり、声が震える。
まさか、桜木さんは……。
「高梨君!」
「は、はい!」
俺の事を……。
「私……私……」
嘘だろ……。
「高梨君の事が……」
俺は固唾を飲む。
「高梨君が好きです!付き合ってください!」




