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第漆話 《哀しみに暮れる三浦秋穗》
《哀しみに暮れる三浦秋穗》
私の好きな人、深谷龍馬。
彼はクリスマスの夜、人身事故で亡くなった。
「「録音メッセージは、一件です」」
ピーという甲高い音が、頭に響く。
『えっと……秋穗ちゃん?逢坂だけど……また連絡するよ』
逢坂……さん。
私、何してるんだろう。
部屋は服やごみ袋で散らかり、カーテンの隙間から除く太陽の光が空気に舞う埃を映し出す。
「……はあ」
艶が失われた髪をかき上げ、時計の方を見つめる。
午後一三時、もうこんな時間か。
「……っ!」
身体を起き上がらせると、不意に吐き気が襲った。
嘔吐。
その後、私は職場を辞めた。
「……ママ?」
『秋穗、帰っておいで』
「……ねえママ……私……どうすればいいのかな」
『いいのよ秋穗、もう悲しまなくていいの』
母の優しい言葉が、辛くなる。
「うっ……うぅ……ママ……龍馬が……」
『……いいの。いいのよ、秋穗』
私は、その街を出た。




