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第陸話 《死んでしまった深谷龍馬》

《死んでしまった深谷龍馬》



深谷龍馬 (二十二歳)


見たことのある名前。

聞いたことのある名前。

呼んだことのある名前。


「それでね……ん?秋穗ちゃん?」

「…………すみません、ちょっとお手洗いに行ってきます」

「え?あ……分かった」

私はその場を走り去った。

「おい逢坂、お前いくらなんでもアピールしすぎだって」

「いや、俺だって抑えてますってば」

「秋穗ちゃんの顔真っ青だったぞ」

「え、マジっすか!」


『おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあるため、かかりません』

出て。

『おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあるため、かかりません』

出てよ。

『おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあるため、かかりません』

『おかけになった番号は現在電源が入っていないか、電波が届かない場所にあるため、かかりません』

『おかけになった番号は現在電源が入』


私はすぐに、彼の家へと向かった。


「ねえ龍馬!秋穗だよ!ねえ!いるなら返事して!」

扉を必死に叩き、中に誰かいないか耳を当てる。

音はしない。


次に私は、彼の職場へと向かった。


「すみません、深谷龍馬は……」

「はい?」

「いえ、あの……深谷龍馬を呼んでいただいてもよろしいですか?」

「……少々お待ちください」


「えっと……深谷君の関係者の方ですかね?」

「あ、はい」

出てきたのは、少し老けた上司っぽい男だった。

「すみません、彼は昨日から職場に来ていなくて……」

「…………そうですか、失礼しました」


そして、私は近所の警察署へと足を運んだ。

重い。重いその足を。


「すみません、一昨日人身事故にあった深谷龍馬さんと言うのは、この方でしょうか」

私は、スマホの写真フォルダから彼の写真を表示させ、警察官に見せた。

警察官は、パソコンの画面とスマホの画面を交互に見た後、静かにこう言った。


「ええ。一二月二十四日の二十一時頃、その写真の深谷龍馬さんは亡くなっています」


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