第参話 《疑問だらけの深谷龍馬》
《疑問だらけの深谷龍馬》
二千二十二年、四月十三日。
「じゃあな龍太!」
アホなクイズも授業も終わり、夕陽が校舎を照らす。
今日一日、とても長く感じた。
高梨龍太としての日常を演じて、しかしただ平凡に過ごしていた。
すごく、楽しく感じた。
俺は、深谷龍馬は去年のクリスマスイヴに死んだ。
駅のホームで、背後から誰かに押されて。
そして、高梨龍太になった。
俺が、なぜ高梨龍太になったのか。
高梨龍太は、少し根暗で人見知りだったらしい。
龍太は死にたいと願ったのだろうか?
それで死んだ俺と入れ替わって……いや、きっと違う。
何か、何か理由があるはずなんだ。
病室で目が覚めた時、隣にいた彼女は、佐藤月羽という名前らしい。
聡に聞いても、分からないという言葉しか返ってこなかった。
母親や、先生に聞いても。
なぜ泣いていたのだろうか、なぜ俺の隣にいたのだろうか。
それだけが、ただ疑問で仕方がない。
そして、俺を殺した犯人。
突き飛ばされた瞬間に見えたのは、フードの下に隠れた笑顔だけ。
深谷龍馬を殺す時、奴は嘲笑うようにして俺を……。
考えるだけで悪寒が走る。
結局、今は分からないことばかりだな。
でも、せっかく高校生になったんだ。
灰色の人生には、もう戻れない。
戻りたくない。




