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第弐拾漆話 《人生の終幕》

《終幕》



「じゃあ、もっかい死んでくれる?深谷龍馬君」


痛い。

横腹に刺さったままのナイフ。

ジンジンと何かが溢れ出て、暖かい。熱い。


「て……てめぇ……!」

「あれ?よく立ってられるね君」

「今にも気を失いそうだわクソが……」


苦しい。

呼吸が出来ない。


「……ねえ、一つ聞いてもいいかい?」

「うるせえっ……!」

俺は奴に近づき、拳を振りかざす。

しかしヒラリとかわされてしまう。

「なんで君は一回殺したはずなのに、また別の……いや、新しい人間としてこの世界にいるんだい?」

「はぁ……はぁ……そんなの知るかよっ……!」

俺はまた奴に近づき、また拳を打ち出す。

「……だから無駄だって」

しかし、その拳は易々と掴まれた。

「っ……!」

「まあいいや……どうせもう一回殺せばいいし」

軽々と床に叩きつけられ、ナイフがまた深く刺さる。

「がっ……!」

「ねえ?ねえ?今さ?どんな気持ち?」

奴は恍惚な表情で見下ろしている。

「ふざけ……んな……」

「全く、君は可哀想だよねぇ。悪鬼の僕を殺す唯一の手段……なんて重い使命を託されちゃってさ」

「……悪鬼……だと……?」

「ああ、それも知らないんだ!てかもしかして何も知らない感じ?」

「……クッソ……がぁ……!」

俺はまた立ち上がり、奴の胴に掴みかかった。

「……はぁ、だから無駄だってば」

「……なあ……一つ……聞いていいか……」

「ん?何?」

俺は奴の胴を掴んだまま、奴の目を見る。

「なんでお前は……世界を終わらせようとしてるんだ……」


「……そんなの、この世界が憎いからに決まってんじゃん」


電車のチャイムが鳴り響く。


「……それが聞けて良かったよ」


俺は横腹に刺さったナイフを勢いよく引き抜き、奴の首元に突き刺す。


「……へ?」


「じゃ……あな……」


引き抜く時の激痛で、意識が飛びそうになる。


しかし最後に力を振り絞って、思い切り線路へと奴を押し出した。


「りっ……リョウマァァァァァアアァァ!!!!!」


そして、電車は通り過ぎた。



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