第弐拾伍話 《嘘。》
《嘘。》
「あんたに殺されたんだ!!」
何が起きている。
俺が、俺を。
高梨龍太が、深谷龍馬を線路に押し出して。
殺していた。
「違う!俺は殺してない!」
「嘘!嘘よ!だってあんたが……あんたが!!」
おかしい。
例えばこの映像の通り、高梨龍太が俺を殺していたら。
この映像は警察にも見られたはずだ。
自殺でこの事件が終わるなんて、そんなわけがない。
「俺はこの時っ……!」
言えない。
高梨龍太は、深谷龍馬に話をするためにそこにいたんだ。
世界を救ってほしいと。
そして今、殺された深谷龍馬はここにいると。
「……俺は……何よ!言いなさいよ!」
彼女の怒り狂った目が。
彼女の恨み溜まったその口が。
……朔夜。
これは……まさか……。
部屋の一つ、ガラスの窓に映った。
さっき、このディスクを持ってきた駅員。
彼は、ゆっくりと嗤った。
「こっちを見ろ!!」
また、胸倉を掴まれる。
強く引き寄せられ、その目を向けられた。
その、哀しみの感情を。
「龍馬を返しなさいよ!龍馬を!!ねえ!!」
何も聞こえない。
何も聞きたくない。
俺は嵌められたんだ。
監視カメラの映像は書き換えられた。
高梨龍太が、まるで殺したかのように。
「……俺が……俺が……殺しました」
もういいや。




