第弐拾肆話 《疑惑と、何かが。》
《疑惑と、何かが。》
「これって……高梨君……じゃ……!!」
映像には、ホームの乗車場所に立つ深谷龍馬。
そして背後の柱には、見慣れた人影。
俺だ。
確かにあいつは、あの島であった高梨龍太は言った。
「「深谷龍馬を見つけて、声を掛けようとした」」
と。
「……ねえ、君はあの日……龍馬と会ったの?」
疑惑の目が、頬に突き刺さる。
口を開こうとしても、何も出てこない。
空気をただ吸い込んで吐き出して、それだけが精一杯だった。
「……高梨君!」
彼女が叫んだ瞬間、大きなベルの音が鳴り響いた。
それと同時に、鈍い衝突音。
「……巻き戻すわ」
カチ……カチ……カチ……。
耳に入る音は、また一段と俺を焦らせた。
言い訳を。
彼女を騙す言い訳を……。
「……ねえ、高梨君よね。この後ろに立ってるの」
「はい」
即答したその返事に、彼女は怒りを見せた。
「あ……あんた……見てたのね!」
胸倉を掴まれる。
彼女の、秋穗の顔は。
怒りと恨みで、真っ赤に。
しかし哀しみの、涙を。
全てを見せた。
「はっ……はっ……」
「……ごめん」
ゆっくりと手を離し、彼女はまたディスクプレーヤーの画面に視線を向けた。
「最後まで見ましょう」
映像。
携帯を右耳に当て深谷龍馬は誰かと通話している。
その後ろで、高梨龍太はただ見ていた。
そして鳴り響く、電車のベル。
高梨龍太はそのベルと同時に、深谷龍馬のもとへ歩き出す。
そして。
ドンッ。
深谷龍馬の身体は、まるで風に飛ばされたかのように。
線路へと押し出された。
「っ……!」
そして、電車は通り過ぎた。
一人の。
彼、高梨龍太を残して。
「……ねえ、高梨君」
「違うんです……これは……違うんだ……」
「やっぱり、龍馬は自殺じゃなかったんだね」
「あ……あきっ……秋」
「あんたに殺されたんだ!!!」




