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第弐拾弐話 《三浦秋穗と、高梨龍太。》

《儚い、その時間を。》



「それじゃ、またねおばさま」

「お邪魔しました」


夕方。

まるで何かすっきりしたように、雲の無い空に写る夕陽の色。

俺と秋穗は、駅に向かって歩いていた。


「……えっと、高梨君だっけ?」

「ですよ」

「そっか、ありがと……」

何か気まずい。

「……あの」「えっと……」

被った。

また沈黙が流れる。

「……私からで……いいかな?」

「どうぞ」

「高梨君は、龍馬とどんな関係だったの?」

「……俺の兄が、龍馬先輩の知り合いだったんです。それでよく家に来てて……」

「へぇ……学校の友達とか?」

「そんな感じですね」

「……あれ?高梨って名字の男の子いたっけ?」

あ。

「ねえ高梨君、お兄さんって下の名前はなんていうの?」

まずい。

母親にはこの理由で騙し通せたけど、秋穗は俺が小学校の時から一緒に居たし、この理由は使えない。

どうする……。

「ん?高梨君?」

「俺の兄は……その……」

誰か……誰か代用できる名前は……。

「……聡です!高梨聡!」

「聡?うーん……」

「て、転校したんです!父が転勤で北海道に行くことになって、それについていくことに……」

「……そう……北海道……」

「はい……」

完璧に信じたわけでもないけど、まあ今はこれでいいだろ……。

「うん、分かった!じゃあ次は高梨君の番だね!」

「……あの」

「ん?」

「……龍馬先輩の事を調べるって、本当に出来るんでしょうか」

「それは……難しいかもね」

「なっ……!」

「新聞にも取り上げられてはいないし、警察も相手はしてくれないだろうし……ね?」

「じゃ、じゃあ!」

「それでも、探してみるしかないの」

「……そっすか」

「ねえ高梨君、まだ時間ある?」

「え?まあ……」

「じゃあさ、私に着いてきてくれない?」

「……分かりました」


「「まもなく、電車が発車します」」


「……どこ行くんですか?」

「まあまあ着けば分かるよ」

「はあ……」

「……なんか、なんかさ」

「はい?」


「高梨君って、なんか龍馬に似てるよね」



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