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第弐拾話 《動き出す、その瞬間は。》

《動き出す、その瞬間は。》



「秋穗……なのか?」


「……え?」

「あら。高梨君、秋穗ちゃんと知り合いだったのね」

やばっ……!

「えーっと……どこかで会ったことあったかな?」

「いや……その……」

ど、どうする!

何か言い訳を……!

「りょっ……龍馬先輩からよく秋穗さんの話よくされてたんです!それでですね!」

「そ、そうなんだ」

助かった……。

「す、すみません!俺今日はもう……」

「あら、まだゆっくりしていっていいのよ?」

「じゃ、じゃあ私が帰るよ」

「いや大丈夫です!俺が!」

「二人ともいればいいじゃない」

このままじゃまずい。

今彼女に会うのは……いやでも……。

「……ほら、高梨君も秋穗ちゃんも座って!おばさんとお話しましょ!」

「う、うん」

「……はい」


秋穗は、少しだけ変わっていた。

短かった髪は、長く。

少し幼げな顔は、いつの間にか大人らしくなっていた。

久しぶりに会ったせいか、目も合わせられない。


「それで高梨君、さっきの質問は……」

忘れてた。

「いや、もういいんです!すみません……」

「……そう?分かったわ」

「じゃ、じゃあ次は私の話……」

「……俺、やっぱ」

「高梨君はそこで座ってなさい」

「……はい」

なんか怖くなってね?あれ?


「……おばさま」

「何かしら?」

「あのね、私……」

彼女は少し曇った表情を見せ、俯く。

「この街に引っ越すことになったの」

「……あら、そうなの!」

「うん。それで……その……龍馬の事について話したくて……」

「ええ、いいわよ」

「……おばさまは、龍馬が事故で亡くなったって……思ってる?」

「なっ……!」

こいつも同じことを……。

「私はね……龍馬が線路に飛び込むなんて……思えないの」

「っ……!」

「ごめんなさいおばさま!その……!」

「い……いいのよ……続けて」

辛い。

そんな感情が、表情から伝わってくる。

「……うん」


「私は、龍馬の事について調べてみようと思うの」

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