第拾玖話 《答えを。》
《答えを。》
「ええ、分かったわ」
質問は全部で三つある。
そしてその答え次第で、今後の展開は確実に変わる。
「龍馬先輩が亡くなる前に、何か周りで不審なことは起きませんでしたか?」
「……はい?」
この質問は、やっぱまずかったか……。
深谷龍馬は事故で死んだと、もう確定している。
でもこの質問は、まるで息子が殺されたかのような質問だ。
……どうする。
「……いいえ、特には……無かったわ」
「っ……!」
「どうしたの?」
「いえ……その……まさか答えてもらえるとは思ってなくて……」
「どうして?」
「……それは……まるで……その……」
「龍馬は事故で亡くなったはずなのに、まるで誰かに殺されたみたいな質問をしてるから?」
「……はい」
昔から、この人は勘が鋭かった。
俺がどんな隠し事をしても、母はすぐにそれに気付いて……。
「私はね、龍馬が事故で無くなったとは思ってないの」
「なっ……!」
「……その反応、高梨君は何か知っているみたいね」
どんどん、外側を剥がされていく。
このままだと、本当にばれてしまう。
……いや、ばれていいのだろうか。
「……龍馬先輩は……事故では……」
チャイム音。
「あら?誰かしら」
やはり、ばれてはいけない。
もし息子が誰かに殺された、なんて真実を突き付けられたら……。
分かってたとしても、きっと狂ってしまうだろう。
「……ら……にちは……」
何か聞こえる。
誰か来たのだろうか?
女性の声……聞いたことがある気が……。
「高梨君、ごめんなさいね」
「い、いえ。大丈夫です」
「ん?誰か来てるの?」
……嘘だろ。
彼女は……。
「……ああ、ごめんね。この子は龍馬のお友達の弟の高梨君よ」
「へえ、あいつの友達の……」
「高梨君、紹介するね。彼女は……」
こんなところで、また会うなんて……。
「秋穗……なのか……?」




