第拾陸話 《禁忌の儀式》
《禁忌の儀式》
『深谷龍馬を生き返らせる方法』
僕はその時、身体に何か熱が走っていくのを感じた。
アドレナリンが噴き出し、涙が溢れてくる。
「まだ……希望はあったんだ」
泣いている暇じゃない。
今はとにかく、この方法をやるしかないんだ。
絶対、彼を生き返らせないと……。
『深谷龍馬を生き返らせる方法』
1、この儀式は、一度のみしか出来ない。
2、死者を呼び戻すには、生者の肉体が必要。
3、生者の肉体に死者の魂を入れる。
「……それだけ?へ?」
ああ、まだ最後に一行残って……。
4、生者の魂は、死者と魂と入れ替わってしまうため、二度と生き返れない。
「……そういうこと」
これは、禁忌の儀式だ。
死んだ人間はもう生き返らない、なら生きた人間の身体にその魂を入れてしまえば。
その代わり、生きていた人間の魂は……。
死と生を入れ替える儀式。
どうやって生きた人間の身体を手に入れる……。
犯罪でも何でもいい、誰かの身体を……。
人身売買は……駄目だ、時間がかかりすぎるし、そのルートが見つかるかもわからない。
なら誘拐……そんなことをして、この世界を救っても……。
どうすれば……。
「……ああ、そっか」
手っ取り早く、生きた人間の身体を手に入れる方法は。
翌日。
俺にまた一つの荷物が届いた。
「これは……」
小さな封筒ではなく、大きな段ボールに入っていたキャリーケースの中身には。
儀式に使われるような道具が入っていた。
少し珍しい色をしたチョーク。
星の陣が書かれた紙。
これは……角笛だろうか。
そして、小さなナイフ。
「……よし」
まずは、星陣に死者の器となる生者の血を一滴垂らす。
「指を切るのって、案外怖いな……」
俺はゆっくりとナイフの先に人差し指を触れさせ、そのまま擦らせる。
「いっ……!」
次はチョークで、星陣の右下に呼び戻す死者の名前を書く。
「深谷龍馬……これ漢字あってるかな」
次はまたチョークで、左下に器となる生者の名前を書く。
「……高梨龍太っと」
最後に角笛を吹き、目を閉じる。
二千二十二年、四月十一日。
深谷龍馬は、高梨龍太として生き返った。




