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第拾伍話 《絶望の色は、赤く染まる》

《絶望の色は、赤く染まる》


「はぁ……はぁ……」

駅のホーム。

彼は電話をしながら、どこか遠くを見ている。

悲しそうな顔、光の無い曇った瞳。

「……彼が……この世界を救う……方法……」

声をかけよう。

例え信じてもらえなくても、あのディスクさえ見せれば……。

「……あれ」

動かない。

足がまるで金属の芯を入れられた様に固く、動こうとしない。

怖いのか、俺は?

ここで声を掛けないと、もしかしたらチャンスは無くなるかもしれない。

いや、でも。

別に明日でもいいんじゃないか。

ここで話しかけなくても、ここで助けを求めなくても。


『間もなく、電車が参ります』


突然のアラームに、身体が痙攣する。

「っ……!」

誰だ、あいつは。

彼の後ろに立つ、怪しい影。

黒いフードで顔が見えない……まるで……何か……。


「「サヨウナラ」」


一瞬だった。

怪しい影は彼の背中を勢いよく押し、線路へと突き出す。

そして、電車が走り去った。

そこに、深谷龍馬の姿はなく、ただ一瞬聞こえた鈍い音が耳に残っていた。

赤い、赤い赤い色。

影は静かに、姿を消した。


二千二十二年、一月一日。

僕は、部屋に閉じこもっていた。


「龍太……大丈夫?ご飯も食べていないみたいだし……」

母の声も。

「おい龍太!何してんだよ!」

聡の声も。

「高梨君、先生は心配です」

先生の声も。


誰の声も、何も感じなくなってしまった。

最後の希望すら、もう存在しない。

なぜなら、死んでしまったのだから。


僕の目の前で。


翌日。


「……龍太、何かあなたに届いているわよ」

母の声。

「ここに置いておくわね」


届いたのは、一枚の封筒だった。

今になって自分に何が届くのだろうか。

死の手紙かな、それともラブレターだろうか。



『深谷龍馬を、生き返らせる方法』



一つの希望。


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