第拾肆話 《僕は、世界を知っている》
《僕は、世界を知っている》
高梨龍太、十四歳。
僕は、この世界が嫌いだった。
「龍太、朝ご飯ここに置いておくわね」
ドアの前から聞こえる、母の悲しげな声。
この声を聞くと、自分が醜くて浅ましくて、虚しくなる。
でも、もう少しでこの世界は終わる。
もう少しで、僕はこの世界から消える。
どうせなら、人生をやり直したかった。
子供の頃、誰かにあるディスクを渡された。
最初それを見た時には、まったく意味が理解できなかった。
でも意味が分かる歳になって、戦慄した。
ディスクには、これから起こる未来の事が書いてあった。
二千十四年、大きな地震が起きる。
二千十八年、アメリカの大統領が暗殺され、大規模なテロが起こる。
書かれていた全ての戯言が、その年には必ず起きていた。
そして、最後のチャプターには。
二千二十二年。世界に隕石が降り注ぎ、全ての生き物が滅びる。
それから、俺は人生が楽しめなくなった。
家も、学校も、友達も。
全てが灰色に見えた。
でも、一つだけ救う方法があった。
それはディスクのエンドロールに表示された一言。
『深谷龍馬に朔夜を殺させることによって、世界の終焉は止められる』
俺は、深谷龍馬を探した。
なぜ彼がこの世界を救えるのか、なら彼はどこにいるのだろうか。
疑問は大量にあったが、それでも探すしかなかった。
そしてクリスマスの前日、遂に彼を見つけた。
でも、僕は彼に声を掛けることが出来なかった。
二千二十二年、十二月二十四日。
深谷龍馬。
彼は人身事故で亡くなった。




