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第拾弐話 《俺は、ボクハ。》

《俺は、ボクハ。》


奴は、俺の前に姿を現した。


「ハジメマシテ、リョウマ」

誰だ。

知っている声なのに、姿はまるで黒い影に包まれていて見えない。

ただ一つ、そこに何かがいる。

「どこにいる!お前は!お前もここに迷い込んだのか!」

「ハハ、ワカラナイノ?」

「なっ……」

奴は。

「ボクハ、君だ」

「……お……俺……なのか……?」

深谷龍馬の姿、形、身体。

あれは、死んだはずの……俺だ。

「あ……ああ……ああああああああ!」

恐怖。

頭の中が真っ赤に染まり、何もかもが恐怖に感じる。

胃から何かが上がってくる。

「うぶっ……!」

嘔吐。

「うわ、汚いなぁ」

「…………なんで……俺が……ここに……」


「さあ、話を始めようか」


その頃。

「どこ行ったんだー!龍馬ー!」

「高梨君!」

「……連絡しても出ないわ」

三人は、龍馬を探していた。

「まさか帰ったとかじゃねえよな」

「それはないわ」

「そうだよ!高梨君はそんなことしないもん!」

「じゃあなんでいねえんだよ!」

「そっ……それは……」

聡の怒鳴り声に、つい雪音は委縮する。

「二人とも落ち着いて」

「立花……悪い」

「……ごめんなさい」

冷静な夏芽も、少しだけ焦りの表情を見せていた。


「まずは、僕の自己紹介をしないとね」

奴はゆっくりとこちらに近づいてくる。


「僕の名前は、高梨龍太」


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