第拾壱話 《そして、混乱は巻き起こる》
《そして、混乱は巻き起こる》
二千二十二年、七月一二日。
俺は今、無人島にいる。
「あ……あちぃ……」
溢れるように出てくる汗。
目の前には真っ青な海と、雲一つない空。
そして、太陽によって熱された砂浜は、俺の尻を焼いていた。
「今は……一四時……もうあれから一時間も経ってるし……」
携帯はつながる。
それで一時間前に聡とは連絡を取ったが……。
「落ち着け龍太……なぜこうなった……」
確か海の家で、聡と一緒に昼飯を買いに行ったのは覚えている。
あの時、俺は急に便意が来て……トイレに……。
そこから覚えていない。
「はあ……はあ……」
先ほどからこの島周辺を歩き回っているが、脱出できる手段は見つからない。
さすがに森林の中へ入るわけにもいかないしな……。
ボートを手作りして……なんてこと俺には出来ない。
「やばいな……」
このままだと、脱水で倒れそうだ。
どうすればいいんだ……。
「「スコシネムレ、リョウマ」」
「はっ……!」
いつの間にか、時間は夜になっていた。
相変わらず、海辺の景色は変わっていないが。
「気を失っていたのか……」
何か、聞こえた気がする。
聞いたことのある、声が……。
「「ヤア、リョウマ」」
「っ……!」
その声が聞こえた瞬間、危険だと身体が察したのだろう。
身体が、足が、口が震える。
恐怖で、冷たい汗が噴き出す。
「ハジメマシテ、リョウマ」
そして、奴は俺の前に姿を現した。




