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第零話 《退屈な深谷龍馬の最期》

《退屈な深谷龍馬の最期》


毎日、同じことの繰り返しだった。

朝起きて、朝食を摂り、支度をする。

家を出て、職場に着き、仕事をする。

仕事が終わり、自宅へと着くと、夜食を作り、ただ黙々と食べる。

そして寝て、また次の朝がやってくる。

そんな退屈なループに、俺は飽き飽きとしていた。

しかしどうすることもなく、ただひたすら時間を浪費していく。

俺、深谷龍馬は退屈な人間だった。


二千二十一年、十二月二十四日。

街は明るい光に包まれ、どこもかしこも楽しげな雰囲気に包まれている。

「はぁ……」

そんな中、孤独に駅のホームに立つ、一人のサラリーマン。

溜息は白く映り、やつれた目は、周りのカップルに向けられる。

「ったく……楽しそうにしやがって」

今日はクリスマスイヴ。

それも雪が降っていて、なんともロマンチックなクリスマスだ。

『もしもし?』

「……なんだよ秋穗」

『今何してる?』

「ぼっちで電車待ってる」

『あらら』

「お前は……ああ、職場の飲み会だったな」

『うん』

少々の沈黙。

『で、でもね。もう少しで一次会が終わるから……』

『秋穗ちゃん!もっと飲もうよ!』

『ちょっ!今電話してるから黙ってて!』

電話から聞こえる陽気な声。

「……楽しそうだな」

『えっ?何?』

「いや、なんでもない」

『それでね、もしよければこの後一緒にご飯でも……』

「……いいや、今日は帰って寝る」

『そ、そっか……』

「じゃあな、秋穗」

電話を切ると、また溜息が出てくる。

しかしまあ、なぜこうなったんだろうか。

確か就職する前は、こんなつまらなくなかった。

高校を卒業して、社会人になって。

「はあ……戻りてえな」

電車が近づき、ホームにベルが鳴り響く。


「「サヨウナラ」」


何か聞こえた。

こんなに大きな音が鳴っているのに、そのか細い声はまるでイヤホンをしたようにはっきりと聞こえていた。


ドン。


背中に何かぶつかったような衝撃と共に、俺の身体は前へと傾く。

振り向き様に見えた、その顔は。


嗤っていた。


二千二十一年、十二月二十四日。二十二時四十二分。

深谷龍馬は、電車に轢き飛ばされ即死。


「……あ?」

桜が舞い散る風景に、大きな校舎。

見たことのない制服に、若い男女の群れ。



目覚めると俺は、一人の高校生に戻っていた。



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