青髪美少女メイドと冴えない高校生
───叫べ。小動物が肉食動物に捕食される時のように。
───叫べ。その心の痛みを誰かに知ってもらえるように。
────叫べ。自分一人になっても誰かに助けてもらえるように。
────そして進め。大切な者を守る為なら自己犠牲を恐れるな。
────目覚めろ。自分の大切な人を守る為に。
「お前はもう、守れるだろ?」
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────暑い。
まるで体に人が密着して抱きついてるような暑さである。
俺がいつも感じている布団の温かみを超えて、謎の暑さが俺に猛威を奮ってくる。
そして、何故こんなに暑いかを調べると共に、今の自分の状況を把握すべく目を開ける。
────何だこれ。
今、俺が状況を把握すべく目を開けると、負傷した右手と、見知らぬ天井、見知らぬ部屋、そして────
「......お目覚めですか。御主人。」
そして青髪ロングの美少女メイドが俺に密着していた。
その時俺はこの世界は何処なのか、と思う前にこの美少女は誰なのか。と言う疑問が脳の99%を占めた。
青髪なんて人生で1度も見たことが無かったため、じっと彼女を眺めていると、彼女は頬を赤らめた。
「......な、何ですか?そんなに見ないでください。緊張します。」
冷静に俺がじっと見ていることに指摘を入れる彼女だが、今の俺には彼女の動作一つ一つが可愛く見えてしまう。やはり青髪美少女は最高な人間の部類である。
ふと、冷静に彼女の全体像を眺めるとメイド服を着ていることが分かった。この時俺は、ふと彼女をさっきよりも凝視してしまっていた。
「.....は、恥ずかしいんですよ....御主人....」
その言葉を聞いた時、俺は咄嗟に抱きついた。謎の使命感により抱きついた。故意では.....ある。そして、俺はこの世界に来て約10分で第一声を放つ。
「......可愛いなぁ.....」
「....ほ、褒めすぎですよ...私はそんな....」
「可愛いのには変わりないよ....抱き心地もいいな....」
「ひゃっ!.....くすぐったいですよっ...」
未知の世界に来て早々青髪美少女メイドと出会うとは、この世界は案外easyなのかもしれない。
とりあえず1回落ち着き、まずはこの世界の情報を集めることを最優先事項にする。
「あのさ....突然で悪いけど....俺記憶が無くなってるみたいでさ....君の名前も分からないんだよね....」
「...そうですか。.....なら自己紹介しましょう。私はこのロズラ邸のメイドをしているユリと申します。」
意外と名前が短くて驚いた。ほら、大体こういう世界って名前が長い奴らばっかいるだろ?
「そしてこの国は魔法大国であるベルノ王国です。」
「ちょっと待ってくれよ。....この世界は全てが魔法で統一されているのか?」
「いえ。この国は魔法で統一されていますが、極東にある『日の国』と言う国では魔術で統一されています。」
なる程。要するに一つだけ分かったことがある。それは、元いた世界とは別次元にある世界に来てしまったと言う事だ。
そして日の国とは日本の事だと思うが、元の世界の日本とは違っている事は十分あり得る。やはりここは別次元の世界なのだ。そう自分に言い聞かす。
「そうか.....それで、俺の名前は分かるか?」
「当然です。このロズラ伯爵の右腕として仕えている、この国の上位魔法使いであるミヤ・マサヤ様、それが御主人ですよ。」
「やっぱ本名じゃないか ......ったくますます頭が混乱してきたぞ....」
「....大丈夫ですか?」
心配そうに見つめてくる青髪美少女メイドは元の世界の奴らからしたらさぞ羨ましかろう。元の世界の奴ら。ざまぁみろ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
「本当に心配しましたよ.....つぅ...くすぐったいです....」
「...青髪美少女メイドの頭を撫でられるなんて夢のまた夢だったからな....やっぱこの世界最高。」
青髪美少女メイドにゾッコンな雅哉と、クールな美少女メイドのユリ。これから彼らは共に助け合い、愛し合う────はず?