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少々困りましたね
「これは少々まずい状況ですね」
深く生い茂る森の中、草木の合間から射し込む光がまるで光のカーテンのような幻想的な場所に、白い色の生地をベースに縁には水色の草模様が描かれているローブに身を包んだ、白い髪の青年がひとり、ぽつんと呟いた。
──と言うのも、これは単純に、“彼”は“迷った”のだ。
「事前にアイテム欄を確認していたつもりだったのですが、うっかり“帰還石”を使い切ってしまっていたことに気が付きませんでしたね……」
ハッキリ言ってしまえば、自己の不注意である。
「うーん、ここで悩んでいてもどうにもならないですし、とりあえず歩いてみましょうか」
そんなうっかりで、マイペースな“彼”────恐らく聖職者であろう青年は、再び歩み始めた。