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巻き込まれ精霊戦記~知将英雄譚~  作者: 神嵜 煉
第1章 高官将校になるまで
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第1話 卒業式

お久しぶりです。


それではどうぞ。

カシリア帝国には四季と呼ばれるものがある。春、夏、秋、冬といった形で季節の変わり目が存在する。これが帝国の特徴と言える。

丁度良いバランスで季節ごとに作物を育てることが出来る。降水量も多く、作物を育てるには良い土地であることは分かる。だからこそ、有望物件と言うかのように他国からの侵攻は激しい。


今は10年前の戦争から一区切りが着き、争いは無くなっている。


だが、それだけが帝国が狙われる理由ではない。政治は腐敗し、皇帝の権限は実質的に無いのが今の帝国の現状だ。皇帝の権限を宰相が代行し、悪政を敷いて、高過ぎる税率で国民を貶めている。それを好機と思って各国が攻めてくるのだ。それは仕方がないことなのかもしれない。



今の時期は丁度、学園の卒業式シーズンである。軍人養成学校でもまた、例年と同様に卒業式が行われている。長年受け継がれてきた形式を用いている。これは伝統を重要視する帝国を象徴する一つの良い例とも言える。


それに出席しない者は殆んど居ない。居るわけがないのだ。そう教え込まれている。それは貴族であっても、平民でもあっても何ら変わることはない。帝国に住む者たちが共通の考え方である。それを被ろうとするならば、校長がこう言うだろう。


―出席しないとは何足ることだ!お前には我々が受け継いできた伝統的な宝を守っていく意思はないのか!―


この言葉が全てを語っている。伝統を重んじているということが良く分かる。伝統を宝と言っているのはそれをそういう風に教えられてきたこととそういう風に考えているから出てくる言葉だ。

だからこそ、誰も知らない。考えない。伝統は時に(しがらみ)となり、現場の行動を邪魔する呪縛でしかないことに。それを知ることが出来るのは現場だ。特に逆境に立たされた時に分かる。いや、実感してくる。伝統がどれ程邪魔な存在になるのかを。


それを知っているからなのか、ただ面倒なだけなのか、トルト・テレストは卒業式という学園の大行事の一つをサボっている。別にサボるぐらいで卒業出来なくなる訳じゃないが、教師たちに良い目はされない。まあ、トルトに関して言えば、教師に色々迷惑を掛けているため、卒業式をサボるぐらいは想定内の行動であるのだが。


学園の中庭にある大きな木に登り、そこで卒業式が終わるまで昼寝をしている。彼は堅苦しいのは苦手なのだ。卒業式はまるでそれを実現するためにあるかのようなものである。トルトの隣には相棒の2本の刀が置いてある。彼が今まで愛用してきた武器。これからも使い続けるのだろう。


卒業が始まってもうすぐ二時間。そろそろ終わったと思った彼は体を起こす。すると、木の下から声が聞こえてくる。見てみると、級友の姿だった。

茶色い髪に凛とした表情が特徴の少女。学園生活の間、共に過した。彼女の名はリディア・カルロス。


カルロスという家名を帝国の人間で知らない者は居ない。各国でも軍人であれば誰でも知っている。帝国を知る時に必ず教えられる歴史の内容にカルロスという名の付いている人物は多く出てくる。

ならば何故、カルロスという家名は有名なのか。それは簡単だ。彼らが帝国最強だからだ。帝国建国前から支え続けてた家柄であること。更には、カルロスと名が付いた者たちが挙げてきた数え切れないほどの功績があるからである。

カルロス家は最強軍人の生まれる家系であると考えられている。また、カルロス家もその期待に裏切ることなく、世代が変わっても衰えることのない剣の使い手を世代ごとに排出し続けている。


カルロス家は最強であらなければならない


これはカルロス家の考え方だ。カルロス家が続けていること。今もそれは変わることはない。カルロス家は軍人たちの心の支えであり、彼らが入れば戦況を変えられると信じているのだ。その願いは全て叶えられているが。

カルロス家の人間が戦争に加わることだけで戦況は変わる。敵は恐怖し、味方は士気を上げる。彼らの存在は戦争の勝敗を左右するのだ。


リディアもまた、将来戦争に関わることになれば、そういう存在として見られるのだ。彼女の場合は心配はない。彼女も最強なのだ。その無類の強さは次元を越えている。奇策を用いても意味がない。そういうレベルの問題なのだとか言う物思いに耽っていると彼女から溜め息が聞こえてくる。


「溜め息は良くないよ。」


「貴方が呆然と物思いに耽っていたからじゃない。それより、卒業式は終わったわ。食事会には貴方も参加するのでしょ?」


「そうだね。食事会には行きたいな。家に帰っても、飯は無いだろうしね。」


「なら、行くわよ。」


彼女は背を向いて歩き始める。トルトも木から飛び降り、後を追う。


「トルト、試験の準備はしたの?」


「したよ。今回は断れないからね。祖父の頼みだし、君との約束もあるからね。」


「そう。でも合格するのかしら?」


「高官将校養成試験は誰でも受けることが出来るからね。やはり今年も倍率は物凄く高いのは分かってるよ。それなりに勉強はしたし。受かるんじゃないかな?」


「疑問で返されても困るわ。でも、自信はあるみたいね。」


高官将校養成試験。その名の通りだ。高官将校を養成するために人材を選ぶ試験。選ばれた者たちは1年間学び、少しずつ実戦の経験を積んで、最後は少尉階級から本格的な軍人としての活動が始まる。

因みに、この試験は軍人養成学校卒業生が全員受ける。これに落ちた者たちは軍人として二等兵から始める。これが常識的だ。それに二等兵から軍人を始めると、将校になるのは難しい。

この試験にリディアが受けるのは当然である。それは将来的に軍の中核を担わなくてはならないカルロス家の人間であるからだ。


トルトは何故、この試験を受けるのかと言うとリディアと答えは変わらない。トルトの母方の祖父の家は帝国を支えてきたテレスト家は特殊な家柄である。

テレスト家は帝国建国以前から支えてきた最も古い家柄の一つである。帝国建国当時のテレスト家当主には3人の息子が居た。長男は貴族として領地を取り仕切る才能に恵まれ、次男は軍人として武人の才能に恵まれ、三男は文官として、政治を取り仕切る才能に恵まれていた。彼ら三人を帝国の人々はこう呼んだ。テレスト三兄弟。当時の当主は彼らにそれぞれの才能を活かして、長男は貴族のテレスト家として、次男は軍人家系のテレスト家として、三男は文官家系のテレスト家として、テレストという家を続けて欲しいと頼んだ。こうして、テレスト御三家の誕生である。当時の当主は三つのテレスト家があらゆる情報を共有し、御三家の当主たちが会議を開き、全ての行動を決めろと。また、テレスト家は帝国を中立派の視点から守れと言った。どれか一つのテレストが間違った方向に行くなら、二つのテレストとで止めよと。これらのことからテレストは三つに分かれるようになった。そして、後継者争いが行われないように子供は少ないした。子供が軍人家系の家柄なのに文官の才能を持っていたりした場合は養子として文官家系のテレスト入れることもした。また、その逆も行われた。


結論を言えば、トルトは軍人家系のテレスト家前当主アルヒー・テレストの孫なのだ。だから、高官将校養成試験を受けなくてはならないのだ。

如何でしたでしょうか?


今日又は明日にアルクスの更新をしたいと思います。最近止まっていたから鈍ってしまうかもしれませんがそちらもよろしくお願いします。

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