Ⅲ
三回目の更新です
それではどうぞ。
天才とは何者なのだろうか。天才の定義とは何だ。天才には二種類存在するとメデアは思う。時代が求めて作り出した英雄タイプと自然に発生してします変人タイプ。メデアの師匠と呼べる存在は正しく変人タイプの天才だ。科学という魔法に変わる新しい考え方や概念、知識を生み出した。世界に新しい考え方をもたらした。
その考え方に不満や批判を持つ者は多かった。その中心的な人々がテルト教やカルスト教などの神を絶対的な存在と考えた宗教の過激な信者たちだ。彼らが崇めている宗教は神が絶対であるから神から与えられた魔法以外の力を作り出すことに強い抵抗感を抱いているのだ。だから、科学という新たな概念に困惑して否定しているのだ。科学を異端な考え方という者たちもいる。科学者たちを異端者と呼ぶ。
メデアはこの世界がこれ程までに魔法という力の呪縛に人々が縛られていることに疑問視している。何故、自分たちで新しい力を求めないのか。それがメデアには分からなかった。
「師匠、入りますよ。」
メデアは一般的な家庭に生まれた平民だ。何時ものように適当に毎日を過ごしていた。そして、彼らは表れた。一人の老人が助手らしき人と共に歩いていた。老人はメデアを見るとこう言った。
「お主、科学に興味はないか?」
聴いたことのない言葉にメデアは困惑する。何を言っているのだこの老人はと思った。だが、彼の中で気付いたことがあった。老人の目は真剣だった。真剣な眼差しでメデアを直視している。
メデアは取り合えず、科学というものが何なのかを聴いた。そして、当時のメデアは老人の発することに魅了され、弟子となった。
―何故、こんな記憶を思い出したのかな。人生の選択を間違えたことによるショックからなのだろうか。それとも、違う理由があるのだろうか。
メデアは思考をリセットして、会議が行われている部屋に入る。中は地獄だった。老人と5人の青年が本を読み漁って、こういう風になったのは明白だった。メデアは溜め息を吐きながら、師匠に声を掛ける。
「師匠、最後の忠告文がテルト教から来ました。」
「内容を読んでくれ。」
「クルス・アリフィート殿、これが最後の忠告だ。君がいう科学と呼ばれるものの考えを捨てれば、今までのことは水に流そうと言っておりますが、如何致しましょう。」
「そう来たか。お前たちはどう思う?いや、この問い掛けはやめよう。儂はモルトメ共和国に亡命する。ビル、ベル、メデアは儂に着いてこい。」
「「「はい。」」」
クルスの顔は平然としていて何時もと何も変わらない表情で答える。これは決心の現れだろう。
「トルトとレオは帝国に残れ。そして、モルトメ共和国との戦争で負けないほどにこの国を変えてくれ。」
「「はい。」」
「会議は終わりじゃ。」
5人の青年とメデアは会議室を出ていく。残っているのはクルスは5人のことについて分析している。
「ビルとベルは儂の助手として頑張って貰わなければ。2人は科学を受け継ぐ後継者なのだから。メデアはまだ助手見習いだが、将来性はある。これからを期待したい。レオは知略で科学を使う。そしてトルトは…」
クルスは少し押し黙り考え込む。最後の一人の存在について。
「トルト・テレストは科学を独自の哲学に変え、儂の教えたことをそのまま覚えるのではなく、独自の哲学で昇華した。彼奴は天才だ。儂が今まで見たことも無いほどに…」
クルスはボロい家の窓から外を見ている。帝国の腐敗はまだ、国民全体を苦しめるところまでは行っていない。だが、この国は何時滅びてもおかしくない状況なのだ。
そんな帝国に愛弟子を置いていくことに後悔を感じなから、クルスたちは亡命した。
帝国608年。世界初の科学者 クルス・アリフィードとその助手3名はカシリア帝国より脱出。以後はモルトメ共和国で研究を行う
如何でしたでしょうか?
それではまた。