難攻不落! ラプンツェルの塔
ラプンツェルの童話パロディですが、ほとんどかすっておりません。
コメディとしてお楽しみ頂ければ幸いです。
ここは世界の片隅に位置する緑の国。
優秀な魔女や魔法使い、魔導師を輩出する国だ。その西の端に存在する魔女の森。
緑の国に魔女の森は数多くあれど、これ程までに有名な塔を有する森は存在しない。
その名は、ラプンツェルの塔。
入り口の無い白く優美な塔は、高く聳える。
そして今、ラプンツェルの塔は空前のクライミングブームを迎えていた!
「だからクライミングブームって何だっ!」
今朝フクロウが届けた新聞記事を思い出して、突っ込みを入れる。
私は塔の窓から水魔法を放ちながらも、床のモップ掛けに勤しんでいた。
モップを掛ける度に、傷んだ金の毛先がちらちらと目に付く。長く伸びた髪を三つ編みにし、頭の天辺でお団子にしても、まだ背中に届いてしまう。掃除の時には邪魔だけど、魔力の貯蔵庫の様なものだから仕方ない。
遠くで水風船が破裂したような音と、野太い悲鳴が聞こえてくる。声の遠さから、どうやら三分の一も登れていなかったらしい。この高さなら打ち身程度で済むだろう。
そちらには目を向けずに、せっせと掃除を続ける。魔法に頼ってしまいたい所だけれど、力は温存しておかなければならない。
今日も一日、チャレンジ精神に火の点いたウォールクライマーから、塔を守らなければならないのだから。
「師匠、本気で新弟子取ってくれないかな……」
ついつい独り言も多くなるというものだ。
私の師匠である白銀の魔女レマは、五大魔法使いの一人と謳われる高名な魔女だ。幼い頃親に捨てられた私を拾ってくれた恩人でもある。養い親であり命の恩人であるレマに憧れて、魔女を目指したのは九歳の時。十歳の誕生日から魔女の試練を受け始め、ちょうど十年。今日という二十歳の誕生日を無事乗り切れば、一人前の魔女の仲間入りだ。
そろそろ頃合いかと、昼食作りの合間に窓からアメーバスライム液をドロッと投下する。無効化したアメーバスライムから抽出した液体に、ルルーベル樹液を加えてみたら、口に入れても大丈夫な粘液が出来上がった。私が調合した妙薬の中でもかなりのヒット作だ。主に顧客はヌルヌルを求める大人らしい。販売はレマに委託しているので、詳細は不明だ。
窓の外から複数の男の叫び声に交じって、女性の悲鳴が聞こえた。
「うわわっ。もしかして弟子志願の子まで滑らせちゃったかな!?」
慌てて窓から顔を出し、塔の下を覗き込む。
女性は周りの住民たちによって、広げられたシーツに受け止められていた。無事な証拠に住民たちがこちらに手を振る。手を振り返しながら、私はホッと息を吐いた。このシーツでの受け止め、女性限定の救済処置である。但し有料、後から請求書が回ってくる。ちなみに男達は誰も受け止めない。
女性しか住んでいない塔の壁を勝手に登るのは、良くないと思う。攻撃魔法及び劇物注意の看板は立てているし、自業自得だ。しかも理由がクライミングブームだし。
レマは実力もあり有名な魔女なので、弟子志願者が絶えない。地上に扉があった時は、冗談ではなく魔女志願の乙女が引っ切り無しに訪ねて来ていた。対応が面倒臭くなったレマは、私の試練に合せて塔を建て替えた。入り口の無い高い塔。私にとっても有益であったけれど、乙女達に門前払いを食らわせるのが主目的だったのだろう。
目的は達成された。効果があり過ぎて、一人も弟子志願者が辿り着けていないけど。
フクロウ新聞によると、ある有名なクライマーが言ったそうだ。
「この塔ほどギミックに溢れ、難攻不落なウォールは存在しない」と。そいつ、思いっきり落ちてたけどねっ。
そして今では塔を登ってくる人々の男女比は九対一、どころか九十九対一くらいの割合で殆ど筋肉だ。彼らの言い分は、塔に囚われた乙女を助けるというふざけたものから、そこに未踏破の塔があるからという訳のわからないものまで様々だ。
皆何故か一様に、塔を落ちる時にはラプンツェルと叫びながら落ちていく。あれか、バンジージャンプの掛け声と一緒か。確かにこの地方の名産はラプンツェル(ノヂシャ)だし、この塔の通称は『ラプンツェルの塔』なのだけれど。
地上は既に観光地化していて、壁登りグッズに屋台、簡易宿泊所まである有様。近隣住民たちは副収入にホクホクだ。
そして私は気が付いた。
ドロッと攻撃にも負けず、一人塔を登り続けている少女が居ることに!
うわぁぁ! ついに、ついに私にも妹弟子が出来る時が来たのねっ。
そわそわしながらも、少女の到達を待ち望む。
他にも相変わらずクライマーたちがアタックを仕掛けてきたので、風魔法や雷魔法(これはちょっとやり過ぎで反省)を駆使したが、少女は高い魔法素養を見せ、全てを防ぎながら着実に登っていた。塔の三分の二を登る頃には妙な一体感が生まれ、住民たちもクライマーも一緒になって彼女を応援していた。
夕日ももうすぐ西の空に沈もうかという時、ついに少女が窓の縁に手をかける。
間近で観察した少女は、琥珀の髪に紫の瞳の見目麗しい美少女だった。こんな麗しい妹弟子が出来るなんて、これは一人前になっても引っ越し出来そうにないなぁ~。なんて妄想していたから、罰でも当たったのだろうか。
彼女が手を掛けたそこには、先程私のこぼしたアメーバスライム液が! 半日以上ドロッとを継続させるなんてさすが私……って、ちがーう!
つるっと手を滑らせて、真っ逆さまに落ちそうになる少女。とっさにその手を掴み、しかしつるっと滑ってしまった。ウナギかっ!? 我ながら凄すぎるよ!
仕方がないので自分の髪に強化と硬化の魔法をかけて、彼女に巻き付け引っ張り上げる。
何とか引き上げ肩で息をしていると、少女から声をかけられた。
「助けて頂きありがとうございます、ラプンツェルさん」
まじまじと少女を見つめ、そして自分の背中を嫌な汗が伝っていくのを感じた。
私の名前はベルティーユで、ラプンツェルは塔の通称だから名前じゃない。でもこの際それはどうでもいい問題だ。
「随分低いお声ね、お嬢さん?」
「はい、最近急に低くなってしまったのです」
「喉の辺りにあるその出っ張りはもしかして……?」
「最初はスカーフで隠したのですが、流石に途中で邪魔になって」
「お名前を窺ってもいいかしら…………お嬢さん」
「これは失礼しました。私は隣国の第四王子、アルドと申します」
――――ノオオオォッ!!
魔女の試練あるいは魔法使いの試練とは、自分のそれまで生きた年数と同じだけの年、自然の摂理に逆らう事が求めれる。
大地に足を付けてはいけない。魔力は大地から取り込むものだから、供給を絶っても持ちこたえられるかの試練。
異性に触れてはいけない。生物として対となる存在を拒絶し、個として完成された存在になれるかの試練。
他にもやらなきゃいけない事は沢山あるけれど、要は引き籠れってことだ。
そうして十歳から始めた引き籠り試練も、今日の真夜中と共に見事達成。私は晴れて魔女の仲間入り……のはずだったのに、そのはずだったのにぃ!
「せめてもう少し女装に手を抜こうよ、王子!」
そうすれば途中で気が付いて、落っことしてやったのに。
「ええっ!? でもこれが唯一の塔の攻略法だと教わって……」
そんな理由で女装したのか、しかも完璧ってどんなハイスペックだ。
「……教えたのは誰?」
私が妹弟子を欲しがっていたことを知っているのは、一人しかいないけど。
「勿論私さ。失敗おめでとう、ベルティーユ」
「めでたくありません! 何敵に塩送っているんですか、師匠」
いつの間に戻って来たのか、窓の枠に腰掛けながらレマは微笑む。
白銀の魔女・レマ。その名の通り銀の瞳と白銀色の艶やかな髪は、片側に寄せられ緩い三つ編みにされている。足元に付くギリギリの長さだが、ふんわり軽そうで重さは感じられない。
魔女といえば全身黒のイメージだけど、彼女は白を基調としたマントに妖精の鱗粉のおまけ付き。魔女ではなく女神の方がしっくりくる様な容姿をしている。容姿だけは。
レマが手を一振りすると、部屋が灯りで満たされる。すっかり日が沈み、月が輝いていたことに気が付いた。
「私は敵ではありません! 貴女の未来の夫ですっ」
そう言って、何故か新聞記事を目の前に差し出す美少女、改め美少年王子。
それは魔女の読むフクロウ新聞ではなく、人間の新聞。
「――花婿募集。名前はラプンツェル、金の髪に青の瞳、得意なのは掃除と妙薬作り。魔女に閉じ込められた高い塔から、今日も貴方を待っています…………」
新聞を持つ、自分の手が震える。
「本名は伏せておいてやったぞ?」
「優しさの方向性が間違ってるから! じゃあ、じゃあまさか今までのクライマーも私の求婚相手……?」
「最初の奴らはな。だが途中から難攻不落の塔として、ガチのクライマーが集まってなあ。まあおかげで『今日のラプンツェル』は人気連載になった訳だが」
最初は私のお見合い広告の形で出した記事が、思わぬ方向に転がって、毎日どんな手段で私がクライマー達を沈めていくのかが、人気になってしまったらしい。新聞の日付は一年前だ。そう言えばこの頃から塔の周りが騒がしくなり始めた。
だからみんなラプンツェルって叫んでいたのか!
「あのね、アルド王子? 私は魔女見習いだから結婚の意思はないし、そもそもこの記事は出鱈目なの。魔女に騙されたと思って、国に帰ってお嫁さんを探してね」
「でも、でも、ずっと記事を読んでいて、貴女のクライマーに対する容赦の無さや、次々と敵を追い詰める妙薬の発想力と情熱、時折見せる女性への情けに、心を奪われたのです! この気持ちは本物なんです」
それは連載に対する感想って言わない?
「来年の誕生日まで試練は受けられないのだし、折角だから隣国で見合いをしておいで」
「……師匠命令ですか?」
「もちろん師匠命令だ」
結局レマに強制的に塔を追い出され、行く所も無いので王子と共に隣国に向かった。
一年かけて塔をリニューアルさせるらしい。既に新聞社がスポンサーに付いている。
――レマはどこを目指しているのだろうか。
・・・・・・・・・・
隣国への移動中、アルド王子が新聞の中の私と、現実の私のギャップに気付いて目を覚ましてくれる事を期待していたが、中々王子はしぶとかった。
あの塔を登りきるくらいだしね!
隣国に着いて早々見合いは断ったが、王子をはじめ宮中の人々に引き留められて、客人として滞在することになった。一年近く経ち、気が付いたら宮廷魔導師とか呼ばれてた。
ハリセン片手に日々王子の魔法を磨いていたらこうなった。何故だ……。
魔女の試練を失敗した私だというのに、ここでは弟子を抱えている。
「見習い魔女の私に宮廷魔導師なんて、荷が重すぎるんだけど」
「そんなことありませんよ。ベルティーユ師匠の政敵に対する容赦の無さや、次々と敵を追い詰める発想力と情熱、時折見せる弱者への情けに、皆心酔しています。この地位は貴女の実力なのです」
グンと背が伸び、あどけなさの消えかけたアルド王子が笑む。きっと今女装しても私は一発で男だと見破る自信がある。もっともあれ以来、一度も女装してくれたことは無いが。
言われたことは初めて会った時とそう変わらないのに、意味合いがだいぶ違う。
それにこの王子様が意外に腹黒だと、私はもう気付いている。
「第一王子が政治を、第二王子が治水を担当、第三王子は武を纏める。これで貴方が魔法を収めれば、この国の将来は安泰だもんね」
アルド王子は優秀な弟子だった。元々の魔法素養もさる事ながら、紡ぎだす力は正確で緻密。その上努力を怠らない。魔導師として私に教えられることは、もうそんなに残っていない。私の得意分野である魔女の妙薬作製は、魔導師には畑違いだ。
そろそろお役御免だろうと思って口にしたのに、アルド王子は眉間にしわを寄せる。
「私が塔を訪れたのを、未だに策の一つだったと誤解しているのですか?」
腕を引かれて彼の胸に密着する。上質なマントの肌触りに、私と同じ魔法薬の匂いを微かに嗅ぎ取る。突き放せば彼は離れるだろう。それなのに、私の腕は動かない。
私が彼の気持ちを信じないと、いつもこうして触れてくる。最初のうちは抵抗していたのに、今ではされるがまま。その感触に安堵さえ覚えてしまう。
「貴女に心を奪われた、この気持ちは本物なんです」
常より早いであろう鼓動を感じて、そっと耳を澄ましてみる。
私は何も反論しなかった。
・・・・・・・・・・
誕生日まであと二週間。
塔へ帰るのならば、そろそろ城を辞去しなければならないが、私はその話をアルド王子に切り出せずにいた。
もうすぐ居なくなるのだと思えばこそ、弟子達の指導に熱が入り過ぎて、今日は大幅に就業時間を過ぎてしまった。自室へと引き上げた頃には、とっぷりと日が暮れていた。
扉を閉めて息を吐き出すと、部屋の奥から懐かしい声がする。
「随分お疲れだな、ベルティーユ」
バルコニーの手摺に腰掛けて、白銀の魔女は微笑む。
揺れるカーテン越しに、降ろしたままの彼女の白銀が舞う様が窺える。一年前と何も変わらない美しい姿だ。
「師匠……酷いです。伝書フクロウだけで、一年も顔を見せてくれないなんて」
「ふふ、お前だって塔に帰って来なかったじゃないか」
「そ、れは、色々忙しくって……」
ついつい視線を逸らして俯いてしまう。
彼女の言うとおりだ。直に帰るつもりだったのに、役目を与えられて人に頼りにされて、私は嬉しくて帰るのを先延ばしにしていた。
九歳で魔女になると決心した。信じられるのはレマだけ。自分は人間なんか嫌いだし、魔女として生きていくのだと、そう思っていた。
なのに人の輪に入ってみたら、楽しい事知らない事がいっぱいあった。嫌な事もあったけど、ここを離れたいなんて一度も思わなかった。
「なあ、私の愛しい娘よ。お前には人の時間が合っているよ」
幼い頃の様に娘と呼ばれて、私は必死に首を振る。
「っ! そんな事ない! また試練を受けて、母さんみたいな魔女になるからっ」
魔女と人の時間の流れは違う。試練を終えた魔女は、人の数倍は生きるという。レマは初めて出会った頃から、何も変わらず若々しいままだ。
子供の頃、彼女はいつも添い寝をしてくれた。私は人肌の温かさを初めて知り、彼女もまた満たされた様にいつも私を抱き締めた。お互いに欠けたものを埋めているのだと、幼いながらに感じていた。
「ずっと決心がつかなかったのだ。幼いお前が私と共に生きてくれるのが嬉しくて、試練を止めもしなかった。だが年々娘らしく育つお前を見て、こんな閉ざされた世界に閉じ込めてしまったことを後悔したよ。私がかつて焦がれて手に出来なかったものを、お前は手にするどころか、存在自体を知らないままだった」
今はもう分かるだろう? そう優しく問いかけられて、ぐっと喉が詰まる。
やっと出てきた声は掠れていた。
「母さんをひとりにしたくないの。……一緒に手に入れた温もりを、手離したくないの」
「手を離すことは、失うことではないんだよ。ベルティーユ、素直になって人を愛してごらん。お前が笑い、お前の愛する者が笑うなら、たとえ同じ時を歩めなくても私はひとりではない。私の愛する娘が、人から愛される。これ程満たされることはないさ」
二人だけの完結した世界。それは痛みも無くて満たされている様に思える。
でも本当の世界は、星の瞬きのように広がり、無限に繋がっていくものなのかもしれない。
その瞬きの中で、レマにも笑っていて欲しい。同じ時を歩めなくても、私達はひとりじゃない。
「素直になるのは何だか怖い……」
「そう思うのは、もう落ちている証拠だぞ?」
ウィンクをして見せたレマの目尻に、光る粒を見つけたけれど、気づかない振りをした。
「母さんも経験があるの?」
「ああ。――ずっとずっと昔にな」
それから二人で色々な話をした。
レマにとって広告は賭けだったこと、どちらに転んでも寄り添うと決めていたこと。どちらも選びがたく、彼女はずっとジレンマに苦しんでいた。
同じベッドで眠るのは久しぶりで、嬉しいのに涙が滲んで、シーツに顔を押し付けてそっと涙を隠した。
翌朝、すっきりした気分で窓からレマを送り出した。
自室の扉を開けようとノブを回すと、外側に物が立て掛けてあったのか、重みで内開きのドアが押され、ゴロンと何かが転がってきた。
「アルド王子っ!?」
何かじゃなくて、胡坐をかいたアルド王子が転がってきた。
扉の外を覗けば、王子付きの護衛騎士や侍従が、少し離れた位置でおろおろしている。どうやら一晩中扉の前に陣取って、彼らに迷惑を掛けていたらしい。
「……はっ! ベルティーユ、私を捨てて行かないでくださいっ!」
座りながら舟を漕いでいたらしい王子は、目を覚まして開口一番乙女の様なことを言う。
「そもそも貰ってないんだけど」
素早く私の両手を掴んだアルド王子は、そのままきょろきょろと私の部屋を見回す。
「てっきり白銀の魔女が迎えに来たのかと」
「さっき窓から帰ったよ。……もう暫くここで魔導師を続けるのもいいかなって」
照れ臭くて、弟子の指導を途中で放って行けないし、宮廷魔導師のお給料は良いしねっ! などと言い訳を並べ立てる私に、彼は心からの笑顔を向けた。
魔導師として伸ばし始めた琥珀の髪に寝癖が付いている事と、紫の瞳の下に薄っすらクマが出来ている事が吹き飛んでしまうくらいに、魅力的な笑顔だった。
「理由は何でもいいんです。貴女が触れられる距離にいて、笑ってくれているだけで」
「……ひとりじゃないって思える?」
「そう! どうしてでしょう、家族も臣下も民も居るのに、満たされているはずなのに。惜しみなく注ぎたくなって、ほんの少しでも見てもらえれば舞い上がりそうになるのは、ベルティーユに対してだけなんです」
一晩かかって私が認めた感情に、貴方は最初から気付いてた。
「私も貴方となら、ひとりじゃないって思えるの」
取られた両手に指を絡めて、唇にちょんと触れるだけのキスをする。
「タイミングを逃すでないぞ?」そんな昨夜のレマのアドバイスを思い出して。
真っ赤な顔のアルド王子に、力いっぱい抱きしめられた。
それから二年。
第四王子の成人の儀と共に、結婚式が執り行われた。
新婦のドレスは白銀色、妖精の鱗粉のおまけ付き。金の髪は美しく結い上げられ、瞳と同じ青の宝石をあしらったティアラが輝いていた。その美しさもさることながら、二人寄り添い笑いあうその姿に、白銀の魔女はそっと微笑む。
披露宴の夜空には白銀の花火が上がり、前代未聞の魔女の祝福に人々は大いに沸いた。
彼らの子孫の側には、常に白銀の魔女の姿があったという。
そんな子孫の一人が、アトラクション化した塔で、白銀の魔女と共に最強のラスボスを務めるのも、ラプンツェルと呼ばれるのも、別のお話。
おしまい
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
遅ればせながら、童話パロ企画に参加させて頂きました。
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